日本内科学会雑誌
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93 巻, 4 号
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
  • 荒井 秀典, 北 徹
    2004 年 93 巻 4 号 p. 633-634
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 山田 信博
    2004 年 93 巻 4 号 p. 635-641
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    高脂血症,境界型を含む糖尿病,高血圧,肥満などの危険因子はその程度が軽い場合でも,重複した場合には虚血性心疾患のリスクは飛躍的に増大することが多くの疫学調査により示されている. Metabolic syndromeはインスリン抵抗性や内臓肥満などの共通の病態基盤を背景に危険因子を重複する疾患として考えられており,偶発的な危険因子の重複とは一線を画した概念である.
  • 島本 和明
    2004 年 93 巻 4 号 p. 642-647
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    NCEP-ATPIIIの臨床基準を腹部肥満の基準を本邦のガイドラインを用いて補正,使用すると, metabolic syndromeは,本邦の疫学研究でも40歳以上の男性で25%を占めており,多くがインスリン抵抗性を有している.また,冠動脈疾患の危険因子が重積することより,動脈硬化性疾患の高リスク病態であり, 5年間の追跡調査の結果では,心血管系イベント発症は,非metabolic syndromeに比ベて2.5倍有意に多かった.このようにmetabolic syndromeの概念は本邦においても有用であり,生活習慣病の予防上,本疾患概念の応用が有用と思われる.
  • 後藤田 貴也
    2004 年 93 巻 4 号 p. 648-654
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Metabolic syndrome (MS)は遺伝的には少なくとも3~4個以上の互いに独立した構成成分からなる.その成因的基盤を成すものとして「インスリン抵抗性の亢進」と「脂肪細胞の異常」が注目され,それらに関連する転写因子やホルモン,サイトカイン,細胞内調節因子などの遺伝子は, MSの原因候補遺伝子となりうる.海外のゲノムワイド解析の結果では, 3番染色体と7番染色体に, MSの主要な原因遺伝子の存在が示唆されている.
  • アディポサイトカインの産生異常
    下村 伊一郎, 船橋 徹, 松澤 佑次
    2004 年 93 巻 4 号 p. 655-661
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肥満・脂肪蓄積が糖尿病,高脂血症,高血圧といった動脈硬化につながる疾患群の基盤病態であることが明らかとなり,診断・治療の両面より,肥満状態の評価・対応が重要となる.近年の研究により,これまで単なるエネルギーの貯蔵倉庫と考えられてきた脂肪組織が実はさまざまな生理活性分泌因子群(アディポサイトカイン)を内分泌し,生体の代謝・動脈壁の恒常性の維持に重要な役割をはたすこと,その産生バランスの異常が上記疾患群を引き起こすこと,崩れたバランスを正常化させることが疾患の治療につながることが示された.アディポネクチン,レプチン, PAI-1, TNF-αといったアディポサイトカイン制御は,今後metabolic syndrome治療の中心になってくる可能性が高い.
  • 1)脳血管障害のリスク
    松本 昌泰
    2004 年 93 巻 4 号 p. 662-669
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    生活習慣の欧米化により,本邦の脳血管障害の臨床病型構成は大きく変化してきており,高血圧が強く関与する脳出血やラクナ梗塞などの小血管病が減少し, metabolic syndromeの関与が大きいアテローム血栓性脳梗塞などの大血管病が増加しつつある.その意味で, metabolic syndromeの臨床的指標となる頸動脈超音波エコー法による動脈硬化の評価やスタチンを用いた大規模臨床試験の意義が注目されている.
  • 2)冠動脈疾患のリスク
    曽根 博仁, 山田 信博
    2004 年 93 巻 4 号 p. 670-676
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    心血管リスクファクターの一個人における重積が,冠動脈疾患の発症率を飛躍的に上昇させることは以前から知られていた.このようなmetabolic syndromeを独立した疾患概念と捉えた診断基準が近年提唱され,その有病率や冠動脈疾患発症頻度の検討が始まった.さらに冠動脈疾患ハイリスク集団としてのmetabolic syndrome患者を対象とした臨床介入試験も行われつつある.
  • 寺本 民生
    2004 年 93 巻 4 号 p. 677-682
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    動脈硬化予防はLDL-Cのコントロールで急速な進歩を遂げた.さらに予防効果を上げるためには, LDL-C以外のリスク対策が必要である.その一つがmetabolic syndromeである.この問題点は,表現型が危険因子の重積であり,それぞれに対応するというのでは効率が悪すぎる点である.したがって,核となる肥満の解消というストラテジーを念頭において,少なくとも確立されている脂質異常に対する対策が求められる.
  • 久木山 清貴
    2004 年 93 巻 4 号 p. 683-689
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    動脈硬化予防はLDL-Cのコントロールで急速な進歩を遂げた.さらに予防効果を上げるためには, LDL-C以外のリスク対策が必要である.その一つがmetabolic syndromeである.本症の治療上の問題点は,表現型が危険因子の重積であり,それぞれに対応するというのでは効率が悪すぎる点である.したがって,核となる肥満の解消というストラテジーを念頭において,少なくとも確立されている脂質異常に対する対策が求められる.
  • 河盛 隆造
    2004 年 93 巻 4 号 p. 690-697
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病が激増している.過食,運動不足がその原因と捉えられがちであるが,本邦の患者の大多数は,食後血糖値上昇に対応した瞬時のインスリン分泌がみられない,という遺伝表現型を有している.インスリンの働きが低下し,肝糖取り込み率が低下すると食後血糖値の異常な上昇がおこる.高血糖に刺激され,遅延して分泌されたインスリンが肥満,脂質代謝異常,高血圧を惹起し, metabolic syndromeを成立させる,と捉えることができよう.
  • 山内 俊一
    2004 年 93 巻 4 号 p. 698-704
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    境界型から軽症糖尿病にかけて,食後過血糖と呼ばれる独特の血糖パターンが目立つ.近年の疫学調査より,食後過血糖は,特に心血管障害への独立した危険因子とされ, metabolic syndromeとの関連でも注目されつつある.臓器障害を引き起こす機序の解明も進む.血糖指標としては,変動が激しい血糖値自体よりも1, 5AGが良い.治療薬として,食後過血糖改善薬の他,体質改善的な根治薬としてのインスリン抵抗性改善薬に期待がかかる.
  • 安東 克之, 藤田 敏郎
    2004 年 93 巻 4 号 p. 705-710
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    心血管リスクの高いものほど降圧による予後改善効果が高いことから, metabolic syndromeに伴う高血圧では血圧は厳格に管理すべきである.降圧薬は2剤以上の併用が必要な場合が多く,低用量の2剤併用から開始することもありうる.レニン-アンジオテンシン系抑制薬が他の薬剤より有用である可能性があるが,降圧という観点からは利尿薬やCa拮抗薬が効果的である.
  • 伊藤 裕
    2004 年 93 巻 4 号 p. 711-718
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    生活習慣病は個人において重積し,動脈硬化症を進展させ心血管イベントを引き起こすが,これら疾患は同時に発症するわけではなく,その発症の時系列を認識するとともに,その相乗効果による病態の進展を把握する必要がある.こうした生活習慣病の重積,流れ,連鎖は“メタボリックドミノ”として捉えると理解しやすい.レニンアンジオテンシン系は,アンジオテンシンIIの標的臓器である脳,心血管,腎臓などに存在し, “組織レニンアンジオテンシン系”としてそれぞれの臓器機能の制御に関与している.組織レニンアンジオテンシン系の過剰作用は,メタボリックドミノの最上流の肥満から下流の血管合併症のすべての局面に関与しており,従って,レニンアンジオテンシン系阻害剤は高血圧症治療のみならず,メタボリックドミノの進行阻止において有効であると考えられる.
  • 高橋 和男
    2004 年 93 巻 4 号 p. 719-725
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Metabolic syndromeとして挙げられている肥満,耐糖能異常,高脂血症,高血圧は,各々発症頻度は高いものの偶発的に合併しているのではなく,内臓脂肪蓄積にインスリン抵抗性を伴った病態を基盤として集積している.その病態の形成には蓄積された内臓脂肪でのTNF-αの発現が重要である.さらに,減量治療は軽度の体重減少でも他の危険因子を著明に改善させるが,それは内臓脂肪の蓄積量の減少によって規定される.
  • 押田 芳治, 佐藤 祐造
    2004 年 93 巻 4 号 p. 726-732
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ・Metabolic syndromeに対する運動療法の目的は,根幹をなすインスリン抵抗性の改善をはかることにある.
    ・運動療法は,食事療法,禁煙,節酒などの生活習慣の是正の一環であり,これらの併用により,有効性が一層発揮される.
    ・運動療法指導前には,メディカルチェックを行い,潜在する疾患の存在を把握する.
    ・1回10~30分, 1日15分~30分,週3日以上の歩行で代表される軽度の有酸素運動の継続が中心である.
    ・有酸素運動のみで効果が得られない時, Valsalva呼吸(力み)を伴わないレジスタンス週動の併用が効果的である.
  • 宮下 洋, 白井 厚治
    2004 年 93 巻 4 号 p. 733-739
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Metabolic syndromeの多くは内臓脂肪型肥満を伴っており,低エネルギー食や超低エネルギー食による減量が治療の根幹をなす.しかしながら,減量食の適正糖脂質配分比にはまだ結論は出ていない.またリバウンドという問題もある.今後の医療側の課題は,食事療法の適正エネルギー配分比のエビデンス確立とリバウンド予防のための創意工夫であり,自己管理能力をたかめる医療技術を開発し患者へ提供することである.
  • 横山 俊宏, 久保田 晃, 岡村 精一, 河野 美穂子, 金谷 誠司, 小林 良三, 竹下 盛重
    2004 年 93 巻 4 号 p. 761-764
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.肺炎にて紹介入院.血小板減少を認めたが,骨髄は著明な過形成像を呈した.その後突然心筋症を発症, CT検査にて胸・腹腔内リンパ節の腫大を認め,リンパ節生検でAngioimmunoblastic lymphadenopathy with dysproteinemia (AILD) type T cell lymphomaと診断された. Methylprednisolone (mPSL)パルス療法を行い,リンパ腫,心筋症,血小板減少ともに改善を認めた.多彩な臨床症状を呈し, mPSLパルス療法が奏功した興味深い症例を経験したので報告する.
  • 伏見 宣俊, 森 昭裕, 奥村 昇司, 坂野 敦子, 中村 博充, 井上 洋
    2004 年 93 巻 4 号 p. 765-767
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は27歳,男性.伝染性単核球症様症候群で通院,約25日で症状軽快.発症31日目より下腿浮腫出現.精査の結果蛋白漏出性胃症と診断, CMV-IgM抗体陽性,胃粘膜に核封入体を認めた.以上よりCMVが蛋白漏出性胃症を引き起こしたと推測した. CMV単核球症の存在は, CMV感染後の蛋白漏出性胃症発症の予測となりうる可能性がありここに報告した.
  • 鈴木 洋行, 穂積 宏尚, 戸川 証, 安田 日出夫, 深澤 洋敬, 後藤 哲男, 藤垣 嘉秀, 山本 龍夫, 菱田 明, 米村 克彦
    2004 年 93 巻 4 号 p. 768-770
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性. ANCA関連腎炎の治療中に脳膿瘍をきたし,低ナトリウム血症が出現した.ナトリウム利尿とともに体液量減少があり, cerebral salt wastingと診断した.中枢神経系疾患に伴う低Na血症の鑑別としてSIADHとともに重要であり,脳圧との関連が示唆された.
  • 松崎 晋平, 脇田 喜弘, 南川 光三, 上村 泰弘, 中島 啓吾, 山口 哲郎
    2004 年 93 巻 4 号 p. 771-773
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者2名(症例1, 72歳女性,症例2, 46歳男性)に対し尿素呼気試験にてHelicobacter pylori (HP)陽性を確認し, HP除菌療法を施行した.除菌療法は成功し,直後より血小板数の上昇を認めた.ステロイド治療中止後も血小板数は減少することなく, HP除菌療法がITP治療に奏効した.文献的考察を加え報告する.
  • 呉 建, 魚住 公治, 菊池 晃, 大渡 五月, 辻 隆宏, 原口 浩一, 徳永 雅仁, 徳永 真弓, 鈴木 紳介, 有馬 暉勝
    2004 年 93 巻 4 号 p. 774-776
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男性.突然の背部痛を主訴に受診.胸部X線写真で多発性の腫瘤陰影を指摘され,胸腔鏡下肺生検でlymphomatoid granulomatosis (LYG)と診断された. Cyclophosphamide (CPA) 50mg (隔日)とPrednisolone (PSL) 10mg (連日)の内服で治療を開始, 3カ月で腫瘤は著明に縮小し,その後CHOP療法を3コース追加して病変は消失した.丸二年を経過し無再発生存中である. LYGは希な疾患で,治療法が確立しておらず,治療方針を考える上で有意義な症例と思われた.
  • 小川 孔幸, 前川 出, 松島 孝文, 滝沢 牧子, 内海 英貴, 河村 俊英, 植木 嘉衛, 半田 寛, 塚本 憲史, 野島 美久
    2004 年 93 巻 4 号 p. 777-779
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は26歳,女性.全身倦怠感,息切れと汎血球減少のため当科に入院した.網状赤血球と間接ビリルビンの上昇,ハプトグロビン低下,赤血球の大小不同と奇形赤血球を認めた.骨髄は過形成で赤芽球比率の上昇と軽度の形態異常を呈しており溶血性貧血の存在が示唆された.また発汗,体重減少,甲状腺ホルモンの異常高値を認め,甲状腺機能亢進症の合併と診断した.一次性の血液疾患は認めず,甲状腺機能亢進症の治療により血液学的異常は軽快した.
  • 植田 真一郎
    2004 年 93 巻 4 号 p. 780-786
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    降圧利尿薬はプラセボとの比較試験により比較的若年の軽症高血圧患者における脳卒中リスクの軽減,高齢者高血圧における冠動脈疾患および脳卒中リスクの軽減についてのエビデンスを有する.さらにACE阻害薬やカルシウム拮抗薬など比較しても特に利尿薬の使用が不利であるというエビデンスは無い.またACE阻害薬との併用は脳卒中二次予防に有効である.このように降圧薬として心血管イベント減少に関するエビデンスは蓄積されているにも関わらず,副作用への懸念からか使用は少ない.しかし勃起障害以外の主に代謝面での副作用は用量依存性であり,低用量では軽微であることが示唆されている.降圧利尿薬の適正使用は日本人高血圧患者の心血管リスク減少に貢献すると考えられるが,残念ながら欧米でのエビデンスしかなく,今後安全性や効果に関する臨床試験が必要である.
  • 新 博次
    2004 年 93 巻 4 号 p. 787-793
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Brugada症候群は,特異な心電図所見を有し,明らかな心疾患を診断し得ないにもかかわらず突然死をきたしうる疾患群として注目されている.特徴は,青年期から壮年期の働き盛りの男性(男女比=8:1)にみられる夜間発症の心室細動である.特発性心室細動の一部と考えられ,欧米と比しアジア・日本で多い.本症候群の診断は心電図所見が重要な部分を占めることから,健康診断時の心電図所見から本症候群の疑いを指摘されることも少なくない.失神や心肺蘇生などの心事故を既往に有する場合,家族歴に突然死をみる場合などは,現在のところ有効な治療法は植込み型除細動器(ICD)である.
  • 一ノ瀬 正和
    2004 年 93 巻 4 号 p. 794-799
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    気道過敏性の亢進とは,わずかな刺激物質の吸入で,気道狭窄をきたすことで,気管支喘息の重要な病態の一つである.この亢進には気道平滑筋,自律神経系,気道上皮,微小血管,炎症細胞等多彩な細胞群が関与しており,それぞれの制御が喘息治療に繁がる.慢性閉塞性肺疾患(COPD)でも気道過敏性亢進が認められるが,これは予め気道が狭窄しているという物理学的因子によるもので喘息とは機序が異なる.
  • 今井 圓裕, 伊藤 孝仁, 猪阪 善隆
    2004 年 93 巻 4 号 p. 800-807
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    腎疾患における最も重要な問題は増加する慢性腎不全患者をいかに抑制するかであり,この根本的な解決は患者にとっての福音であるばかりでなく,医療経済的にも大きなメリットとなり,今後も引き続き重点的に研究が続けられるであろう.ポストゲノム研究の中心的な課題であるゲノム創薬は国際的に熾烈な競争が行われているが,腎臓分野もその重要なターゲットである.ただし,腎疾患関連遺伝子の同定がボトルネックとなっており,遺伝子の同定および機能解析が急務である.糸球体腎炎や腎線維化に対する遺伝子治療および腎再生医療などの革新的な治療法の開発はわが国が先行する状況で行われている.腎移植は移植領域では最も進んだ治療法であり,移植腎の長期生着をめざした研究が活発に行われている.また,最近開発された急性拒絶反応を起こさないα1, 3-galactosyltransferase欠損ブタの腎臓がヒト代用腎として使用される日も遠くはないと思われる.
  • 加藤 茂明, 大竹 史明
    2004 年 93 巻 4 号 p. 808-815
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ダイオキシン受容体(AhR)に結合する低分子量の薬物毒物は,女性ホルモン(エストロゲン)の標的臓器に影響を与え,女性ホルモンの作用を撹乱することが,疫学や実験的な証拠により,示唆されてきた1).しかしながら,その撹乱の分子機構は長い間不明であった.今回筆者らのグループは女性ホルモン受容体(ER)とAhRが直接細胞核内で相互作用すること,更にこの相互作用によりERの機能が調節されることを分子レベルで証明した2).この機構により, AhRのリガンドとなる化合物質のエストロゲン作用撹乱の一部を説明するものと考えられた.
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