日本内科学会雑誌
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94 巻, 1 号
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  • 菅野 健太郎
    2005 年 94 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 井上 真奈美
    2005 年 94 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    わが国の胃癌は,罹患率,死亡率とも,諸外国と同様に一貫した低下傾向にあるが,低下の開始時期が欧米先進国と比較して遅く,現在なお高率である.それでも最近は,トップだった罹患や死亡順位が他癌と入れ替わるなど,様相が変貌しつつある.今後,急速な高齢化に伴いしばらく患者数自体は低下しないが,長期的にみれば,わが国の胃癌は大きく減少していくと予想される.
  • 藤岡 利生, 村上 和成
    2005 年 94 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Helicobacter pylori (H. pylori)持続感染モデルを用いた検討や多くの疫学的研究および除菌による介入試験の結果から, H. pylori感染と胃癌発症との関連性がほぼ確実視されている.わが国の多数例での長期間の前向き比較試験では, H. pylori感染例ではH. pylori非感染例と比較して胃癌の発生が高率であり,その傾向は男性において顕著であった.近年, H. pylori病原性因子CagA蛋白質が胃癌発症と深い関わりをもつことが明らかになり,胃癌が高頻度に発症する東アジアにおけるH. pyloriではチロシンリン酸化部位近傍の分子構造が異なり,東アジア型CagAはシグナル伝達系分子SHP-2結合性が欧米型に比べて強いことが明らかになった.除菌治療による胃発癌抑制効果の確認が待たれる.
  • 西倉 健, 渡辺 英伸, 味岡 洋一, 渡辺 玄
    2005 年 94 巻 1 号 p. 16-24
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    胃癌のほとんどを占める腺癌は, 1)組織学的に分化型腺癌と低分化型腺癌とに分類され,これら組織型と肉眼形態および発育進展様式との間には高い相関性がある. 2)また異型度によって低異型度癌と高異型度癌とに分類され,両者間で生物学的悪性度やp53異常などに差がみられる. 3)さらにムチンコア蛋白の同定により,大きく胃型,胃腸混合型,小腸型に形質分類される.従来,腸型形質と考えられてきた分化型腺癌の中にも少なからず胃型形質癌が存在し,腸型形質癌とは異なった組織形態や発育様式および分子生物学的背景を呈する.
  • 安井 弥, 大上 直秀, 首藤 真理子, Phyu Phyu Aung
    2005 年 94 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    serial analysis of gene expression (SAGE)法を用いた胃癌の遺伝子発現プロファイリングとその臨床応用について概説した. SAGE法は,未知遺伝子を含め遺伝子発現を網羅的に調べる方法で,定量性,再現性に優れている.プロファイリングの比較から,様々な病態に対応した新規特異的発現遣伝子を抽出することができ,これらは,診断のみならず,その機能によっては新しい治療標的にもなりうる.
  • 深山 正久, 宇於崎 宏
    2005 年 94 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    EBウイルス関連腎癌は,胃癌の10%弱を占め, EBウイルスに感染した上皮細胞がモノクローナルに増殖した腫瘍である.リンパ上皮腫類似胃癌の主体をなす他,際立った臨床病理学的,細胞生物学的特徴をもつ.最近,種々の癌関連遺伝子プロモーター領域に,高密度のメチル化が高頻度に生じていることが見出された.ウイルス感染によるメチル化促進の機構の解明とともに,ウイルス感染を利用した治療法の開発が期待される.
  • 笹島 雅彦, 大塚 隆文, 保科 玲子, 瓜田 純久, 三木 一正
    2005 年 94 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    H. pylori感染が胃癌のリスクファクターであることや,ペプシノゲン法でスクリーニングされる萎縮性胃炎が胃癌のハイリスクであることは,基礎的研究や疫学調査によって認められている.その検診応用についての有効性は今のところ認められていない.わが国ではH. pylori感染,萎縮性胃炎が多いため,一次スクリーニングとして血清診断を行うことで胃癌リスクを設定し,胃癌検診をリスクに応じた実施方法に再編することには意義がある.
  • 田尻 久雄, 貝瀬 満, 加藤 智弘
    2005 年 94 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    前方視型電子内視鏡によるルーチンの胃癌診断と生検診断の一致率はかなり高い成績が得られているが,近年の傾向をみると早期胃癌の典型例が減少し, “胃炎類似型”早期胃癌の頻度が増加してきている.病変と周囲粘膜との色調差,胃小区模様,毛細血管模様など微細変化のより的確かつ客観的な診断が重要である.そのような観点から,最近行われている画像処理・画像解析,拡大電子内視鏡による診断を概説した.また1,000倍近い画像情報で細胞異型診断をリアルタイムに可能にする超拡大内視鏡を含む機器開発の動向を述べた.
  • 外科医が内科医に求めるもの
    山口 俊晴, 大山 繁和, 瀬戸 泰之, 福永 哲, 中島 聰總
    2005 年 94 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    2001年に胃癌治療ガイドラインが公開されてから,胃癌治療は縮小手術や内視鏡治療を含めたより多彩なものが要求されるようになっている.それに伴って,従来よりもさらに精緻な診断が強く求められてきている.本稿では,胃癌治療ガイドラインで日常診療として示されている治療法を正しく行うために,内科医に求められている胃癌診断とはなにかを中心に概説した.
  • 矢作 直久, 藤城 光弘, 角嶋 直美, 小田島 慎也, 中村 仁紀, 山道 信毅, 建石 綾子, 小俣 政男
    2005 年 94 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    内視鏡的診断法や治療手技の進歩に伴い,早期胃癌の内視鏡的治療は大きな転換期を迎えている. ESDにより,様々な病変の一括切除が可能となり,内視鏡治療の適応拡大が模索されている.しかしESDは,メリットが大きい反面,クリアされなければならない問題点も残されている.この手技のさらなる普及のためには,長期予後の成績と,トレーニングシステムの確立が,必要である.現時点では,根治性に最重点を置き,術者の技量や施設の状況に基づいて,適応や治療法を選択すべきである.
  • 佐々木 常雄
    2005 年 94 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    日本胃癌学会では2001年3月に胃癌治療ガイドラインを出版し, 2004年4月改訂版が作成された.本ガイドラインにおいての主たる目的は胃癌の治療において現時点での適正な治療法を示すことと,施設間差を少なくすることである.さらに「一般用(患者用)」3)を作成し,医師と患者が共通認識の下にインフォームドコンセントが行われることにも重点が置かれた.本ガイドラインの特徴として胃癌のstage別の治療法の適応を日常診療と臨床研究に分けて記述し,臨床研究では一部の施設において行われている新しい有望な治療法も紹介することとした.日本の胃癌治療は世界をリードするものであり,特に手術,内視鏡治療等においては,世界とは大きな差がある.
  • 北川 雄光, 大谷 吉秀, 久保田 哲朗, 熊井 浩一郎, 古川 俊治, 才川 義朗, 吉田 昌, 北島 政樹
    2005 年 94 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    内視鏡下手術の導入は,早期胃癌治療に様々な段階的選択肢をもたらした.技術,器材の進歩により内視鏡下に開腹手術と同程度のリンパ節郭清,切除再建を行おうとする臨床研究が進行している.とくに腹腔鏡補助下幽門側胃切除術の普及はめざましい.一方, Sentinel node理論を胃癌にも応用し, SN basinを重点郭清部位としたリンパ節郭清の縮小・省略を内視鏡下に施行し,胃容量,胃機能を温存した低侵襲手術を行おうとする方向性もその展開が期待される.胃癌内視鏡下手術は多様化しその守備範囲は一層広がりつつある.
  • 深川 剛生, 笹子 三津留
    2005 年 94 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    胃の広範切除とD2リンパ節郭清は胃癌の標準的治療として広く定着してきた.しかし近年では診断学の著しい進歩に伴い予後良好な早期胃癌症例が増加してきた.また依然として高度進行胃癌や再発例も多いのが現状である.そういった状況に合わせていかに治療が縮小できるか,あるいは他のモダリテイをどう活用するかを考慮し,定型手術の位置づけを評価することが重要である.
  • 加藤 俊幸, 秋山 修宏, 本山 展隆, 新井 太, 稲吉 潤, 船越 和博
    2005 年 94 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    胃切除後症候群は,胃切除に伴う機能の欠損や障害によって引きおこされる.機能的障害としてはダンピング症候群,消化吸収障害,輸入脚症候群などがあり,器質的障害としては術後貧血や骨代謝障害,逆流性食道炎などがある.消化性潰瘍に対する手術例が激減した一方で,近年は胃癌切除後の長期生存例が増加するにつれて慢性的な術後障害の問題も変化している.胃切除後の障害は手技上避けられないが,患者のQOLの維持のために長期にわたる注意深い術後管理と生活指導により障害を軽くすることができるため,内科医も診療上注意が必要である.また定期的な内視鏡検査による逆流性食道炎や残胃癌,食道癌の早期発見も忘れてはならない.
  • 小泉 和三郎, 西元寺 克禮
    2005 年 94 巻 1 号 p. 85-91
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    切除不能進行胃癌に対する化学療法はBest Supportive Therapyに比し,予後の改善があることが認められている.しかしながら標準的治療法が確立していない事から多数のレジメンが少数例で検討されているのが現状である.また分子標的薬剤の開発が進み,胃癌の臨床にも登場する日もそう遠いことではないであろう.日本においては現在行われている臨床試験の中でJCOG9912 5FU vs S1 vs CPT+CDDPの比較試験およびSl vs Sl+CDDPの比較試験が今後標準的治療の確立のために最も重要な試験と考えられる.ここでは海外での報告と本邦での報告を中心に今後行われるべき方向性を検討したい.
  • 加藤 元嗣, 清水 勇一, 浅香 正博
    2005 年 94 巻 1 号 p. 92-96
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    胃癌の成因には多くの因子が複雑に関与しているが,中でもH, pylori感染は最重要な因子である.胃癌は慢性胃炎を背景とした持続炎症から発癌の過程をとることが多く, H. polori感染は胃炎を惹起して萎縮性変化をもたらす.これまて疫学的成績や動物実験からH. pyloriと胃癌との関連が示されているが,介入試験の成績は十分ではない. H. pylori除菌による胃癌予防の可能性についてはまだ明らかでない点もある.
  • 坪野 吉孝
    2005 年 94 巻 1 号 p. 97-102
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    食物および栄養素と胃癌の関連を総括的に評価した国際機関の報告書は,野菜と果物の摂取がリスクを下げ,塩分と塩蔵食品の摂取がリスクを上げる判定している.野菜と果物によるリスク低下は, 1990年代半ばまで確実視されていたが,これを否定ないし限定づける大規模コホート研究も最近報告されている.食物と栄養素による日本人の胃癌予防を発展させる上で,大規模で高精度の疫学研究が不可欠である.
  • 尾前 豪, 平井 優子, 藤井 健一郎, 池田 潔, 井林 雪郎, 飯田 三雄
    2005 年 94 巻 1 号 p. 129-131
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,女性. 40歳時より慢性糸球体腎炎による腎不全のため腹膜透析中.以前より時々ふらつき感はあるものの鎖骨下動脈盗血症候群の症状はない.血液透析導入のため左前腕に内シャントを造設.造設直後の同側椎骨動脈収縮期血流は逆流し,経過とともにその逆流が増加した.その逆流はシャント上流の圧迫によるシャント血流遮断にて消失した.本患者の椎骨動脈逆流は,内シャント造設に伴い生じたものと考えられた.
  • 高見 充, 藺牟田 直彦, 原 斉, 安部 裕子, 小黒 亮輔, 島岡 泉, 中澤 健一郎, 宮下 孟士
    2005 年 94 巻 1 号 p. 132-134
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    43歳,女性.四肢脱力で入院,低カリウム(K)血症性ミオパチーと診断された. 2年にわたり1日4~5Lの大量のコーラを摂取しており,これに含まれるカフェインが低K血症の原因と考えられた.カフェインを多く含む飲料(紅茶,ウーロン茶など)の過剰摂取による低K血症は今までも報告されている.コーラ負荷試験の結果,血清K値は低下し尿中K値の低下がみられたことからカフェインが細胞内にKをシフトさせるためと考えられた.
  • 伊藤 裕之, 宇野 裕典, 鈴木 比佐, 井上 圭右, 崔 吉永, 川村 千佳, 稲荷場 ひろみ, 岡村 幹夫
    2005 年 94 巻 1 号 p. 135-137
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    最近2年間に経験した若年女性のChlamydia trachomatis感染によるFitz-Hugh-Curtis症候群10例について検討した.平均年齢26歳で9例が上腹部痛で発症し, 9例が急性腹症として即日入院した.血清抗クラミジアIgA抗体は8例で陽性,同IgG抗体は全例陽性だった.塩酸ミノサイクリンが有効であった6例を含めて,抗生物質投与で8例が軽快した.平均入院日数は7日であった.
  • 高里 実, 西中村 隆一
    2005 年 94 巻 1 号 p. 138-144
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年,多くの研究者の興味が腎臓の発生に向かい始めているのはなぜだろうか.腎臓は,主として老廃物の排出と体内の恒常性維持という二つの機能を担う生存に不可欠な臓器であると同時に,自然には再生しない臓器として知られている.しかし現状は,その発生機構や構造の複雑さと人工透析の恩恵によって,他の臓器と比較して再生への取り組みは遅れている.そこで,腎臓発生のメカニズムを解明する過程で腎臓再生への足がかりとなる知見を得ることが期待されている.また発生学的視点から見ると,腎臓発生は,上皮の枝分かれ,分化誘導性組織相互作用,細胞極性,間葉の上皮化,といったいくつものステップで構成されている.これらはどれも発生学の基礎的な研究課題であり,腎臓の発生機構の解明を非常に難しくかつ面白くしている.本稿では,腎臓の発生機構を最新の知見を交えて解説する.
  • 相楽 裕子
    2005 年 94 巻 1 号 p. 145-151
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    5年後の見直しを待たずに改正感染症法が施行された最大の要因は,米国で発生した生物テロ,重症急性呼吸器症候群(SARS)をはじめとする海外における新たな動物由来感染症など,制定当時には予測されなかった事態が次々に発生し,感染症危機管理対策強化の必要性が高まったことである. 2003年11月5日に施行された改正感染症法の骨子は1)感染症法対象疾患および感染症類型の見直し, 2)緊急時における感染症対策の強化,特に国の役割の強化, 3)検疫対策の強化及び検疫と国内対策の連携の強化, 4)動物由来感染症対策の強化である.いずれもSARSの経験に基づいており,積極的疫学調査や蔓延防止対策等の緊急時における国と自治体の柔軟な連携体制,人権に配慮しつつも感染拡大防止に必要な検疫体制,動物由来感染症管理体制の整備が図られている.
  • 永田 真
    2005 年 94 巻 1 号 p. 152-156
    発行日: 2005/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    アレルゲン免疫療法は,日本では減感作療法とも呼ばれ,気管支喘息やアレルギー性鼻炎の自然経過を修飾しえる唯一の治療手段とされる.しかしこれらの疾患では対症療法薬の進歩が顕著であり,本療法の施行症例は日本では減少している.一方,欧米においては本療法の臨床研究の進歩は躍動的である.例えば,ダニ・アレルギー喘息においてはリポゾーム内貯留化アレルゲンの有効性が示され,またブタクサ花粉症による瑞息・鼻炎では免疫刺激性DNAシークエンス(いわゆるCpGモチーフ)を用いた免疫療法の安全性と効果が実証された.また鼻炎患者に免疫療法を行うと喘息発症の予防効果があることなどが証明され,早期介入的に用いることの有用性が示唆された.今後は,免疫刺激性DNAシークエンスのダニ・アレルギーへの応用など投与アレルゲンのさらなる改良・開発とともに,早期介入的に施行した場合の疾患自然経過の修飾能が検証されれば,本療法の喘息の根本的治療法としての役割が再評価され明確化されてゆくものと考えられる.
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