肺損傷の予後を規定する重要な因子は,肺上皮・血管内皮細胞の正常な機能の維持と,線維化の抑制と考えられる.肺損傷・線維化の際には,活性酸素,一酸化窒素,炎症性サイトカイン,ケモカイン等多くの因子が,肺上皮・血管内皮細胞のアポトーシスに関与していると考えられる.肺の線維化は,肺胞壁損傷に始まり,その修復の過程において,上皮細胞,炎症細胞,間葉細胞の均衡が破綻した結果と考えられる.すなわち,外界とのバリァである肺上皮細胞と線維芽細胞に代表される間葉系細胞における増殖とアポトーシスのバランスが,正常な修復にとって非常に重要である.従って,アポトーシスの分子機構の理解に基づく治療法を開発することが,難治性疾患である肺線維症の克服につながると考えられる.
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