日本内科学会雑誌
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95 巻, 10 号
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内科学会ニュース
会告
特集●貧血と多血症 : 診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I. 赤血球造血の基礎知識
II. 診断へのアプローチ
III. 貧血の診断と治療
  • 鳥本 悦宏, 高後 裕
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2005-2009
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    鉄欠乏性貧血は最も頻度の高い貧血で, 我が国は欧米と比べてその頻度は高い. 日本人の鉄摂取量は年々減少傾向にあり, 30歳代から40歳代女性の4人に1人が貧血で3人に1人は鉄欠乏状態にある. 小球性貧血によって本症を疑い, 血清フェリチン値, 総鉄結合能により診断する. 血清鉄は本症に特異性が低い. 本症とピロリ菌の関与が注目されている. 治療の基本は経口鉄剤投与で, 非経口的鉄剤投与の場合過剰投与に気をつける.
  • 松田 晃
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2010-2015
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    巨赤芽球性貧血は巨赤芽球の出現を伴う造血異常による貧血群であり, ビタミンB12または葉酸の欠乏によるものがその代表である. 悪性貧血は胃粘膜の萎縮と内因子の分泌欠如あるいは低下により生じるビタミンB12吸収障害性の巨赤芽球性貧血である. 注意すべきビタミンB12欠乏症の原因としてHelicobacter pylori 感染, プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーの長期投与が挙げられる.
  • 小船 雅義, 加藤 淳二
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2016-2020
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    慢性炎症性疾患では, 血清鉄低値を示すのにもかかわらず, 血清フェリチン値が正常から増加するという鉄代謝異常を伴った正球性から小球性の貧血 (anemia of chronic disorders, ACD) が発症する. この鉄代謝異常の分子機構の詳細は長年の間不明であったが, 最近, 炎症性サイトカインにより肝でヘプシジンというペプチドホルモンの産生が誘導されることが見出され, これこそがACDの病態の主要なエフェクターであることが明らかとなった. 本稿では最近解明されたACD発症の分子機構と治療法について解説する.
  • 堤 久, 大田 雅嗣
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2021-2025
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    加齢に伴い赤血球諸値の低下をみるが, 高齢者では貧血の定義を男女一律にヘモグロビン濃度11g/dl以下とするのが実際的である. 高齢者では, 自覚症状に乏しかったり貧血らしからぬ症状を呈することも多い. 貧血の原因としては, 消化管出血による鉄欠乏性貧血, 慢性炎症に伴う二次性貧血, 腎性貧血などが多く骨髄異形成症候群も重要である. 貧血の治療は原因療法が基本だが, 輸血療法を行う場合は心不全の予防などの配慮を要する.
  • 秋葉 隆
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2026-2029
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    腎性貧血は腎不全の重要な合併症で, 心合併症から予後を悪化させる. 腎性貧血の診断はは除外診断により, エリスロポエチン (EPO) により治療される. EPO製剤の問題点として, 製造工程でウシ血清が用いられていること, 半減期が短いこと, 経口投与できないことなどが挙げられる. 現在, これらの点を克服した新しい製剤が治験中である. EPO投与によりヘモグロビン濃度をどこまで上昇すべきかについて良質のエビデンスは得られていない. 各国でガイドラインが作られているが, 保険給付の制限などに束縛され, 今後の検討が不可欠である. EPOは今後癌性貧血, 脳虚血などに適応を広げると期待される.
IV. 造血障害による貧血
  • 寺村 正尚
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2030-2035
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    再生不良貧血は免疫抑制療法および造血幹細胞移植の進歩により, その予後は著しく改善している. 重症例に対する免疫抑制療法については抗胸腺細胞グロブリンとシクロスポリンの併用療法が標準的治療法として確立している. 一方, 造血幹細胞移植については, 移植法の進歩によりその移植適応範囲が拡大している. 赤芽球癆に関しては, 免疫抑制療法, とくにシクロスポリンの投与により, 長期寛解維持が可能であることが明らかになりつつある.
  • 近藤 敏範, 通山 薫
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2036-2042
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    骨髄異形成症候群は難治性の血球減少と前白血病的性格を併せ持つ予後不良な疾患群である. 中高齢者の貧血の原因として近年重要性が増しており, 内科全体として診療していく必要性がある. 新WHO分類や国際予後予測スコアリングシステムを活用してMDS患者の層別化を行い, 低リスクMDS患者においては個々の患者に適した血球減少症に対する治療法を選択することが重要である.
V. 溶血性貧血
  • 新倉 春男
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2043-2047
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    自己免疫性溶血性貧血 (AIHA) は, 何らかの原因により赤血球に対する自己抗体が出現し, それにより赤血球の障害, 早期破壊が起こる病態である. 自己抗体の性状により, 温式AIHAと冷式抗体の寒冷凝集素症 (CAD) および発作性寒冷ヘモグロビン尿症 (PCH) に分類される. 溶血性貧血の所見と直接Coombs試験陽性が診断上必須であるが, 赤血球結合Ig分子が少ないCoombs陰性AIHAも存在する. 治療は副腎皮質ステロイド薬が第1選択で, 効果不十分な症例で免疫抑制薬や脾摘が選択される.
  • 中熊 秀喜, 花岡 伸佳
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2048-2055
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    発作性夜間血色素尿症 (PNH) は, 造血幹細胞変異, 赤血球膜異常による補体感受性溶血, クローン性疾患, 血栓症, 造血不全, 白血病化など多彩な特徴を持つ謎深い後天性血液疾患として一世紀以上知られてきた. 1980年代に入り分子病態の解明が進み, まず溶血の全容が判明し, 診断や治療は飛躍的に向上した. また血栓症, 造血不全の発生機序も徐々に見えてきたが, 病因, 発症過程, 白血病発生については依然不明である.
  • 石田 陽治, 小野寺 志眞, 筑紫 泰彦
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2056-2059
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    遺伝性球状赤血球症は遺伝性溶血性貧血のなかで約2/3を占める疾患である. 本症の病態は赤血球膜蛋白異常と考えられており, そのために小型球状赤血球の出現, 浸透圧抵抗脆弱性を伴っている. 臨床症状には貧血を示すものの比較的よく代償されており, 多くは軽症である. 様々な程度の黄疸, 脾腫を伴う. 末梢血には, この症例に特異的な小型球状赤血球が出現する. 有効な治療法は摘脾である. しかしながら摘脾後には動脈硬化が進んで, strokeとheart attackの危険度が増すことが報告されているので慎重な選択が必要である.
VI. 多血症の診断と治療
  • 下田 和哉
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2060-2066
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    多血症は, 循環赤血球量が増加している絶対的赤血球増加症と, 増加していないが, 循環血漿量が減少したためにヘマトクリット値の上昇を示す相対的赤血球増加症に大別される. 前者には, 慢性骨髄増殖性疾患である真性多血症と, 原疾患のために血中エリスロポエチンが上昇した結果多血症となる, 2次性の赤血球増加症がある. 真性多血症の約8割には, サイトカインシグナル伝達に必須なキナーゼであるJak2に遺伝子変異が生じている. 後者には, ストレス多血症が含まれる.
座談会
トレーニング問題
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 岩田 誠
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2099-2104
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    神経変性疾患の画像診断においては, X線CTスキャンやMRIのような構造画像検査とSPECTやPETのような機能画像検査を, 適宜組み合わせて診断するのがよい. 構造画像検査においては, 変性過程の最終結果である神経組織の萎縮像だけに目をむけるのではなく, 変性過程の画像を捉えなければならない. このためには, MRIにおける信号強度の変化や, 機能画像法による局所的な機能低下についての詳細な検討を必要とする. また, 骨格筋の構造あるいは機能画像法は, 運動ニューロン疾患の診断に極めて有用である. このような神経画像診断を行っていくに際しては, 各疾患における変性過程の病理組織変化と画像所見との対比を, 常に念頭において考察することが重要である.
  • 下瀬川 徹, 粂 潔, 正宗 淳
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2105-2111
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎の遺伝的素因の一つとしてPSTI (pancreatic secretory trypsin inhibitor) の遺伝子異常とアルコール代謝酵素の遺伝子多型について, さらに膵星細胞の制御による膵線維化治療の可能性について述べた. PSTI遺伝子変異の頻度は非アルコール性慢性膵炎で高く, その素因として重要である. 一方, アルコール性慢性膵炎では, アルコールの代謝速度を規定する代謝酵素の多型が組織障害に関連する可能性が考えられた. 膵臓には星細胞と呼ばれる特殊な細胞が存在し, アルコールを含むさまざまな刺激下での炎症の持続や線維化に直接関与しており, その制御が慢性膵炎の新たな治療戦略になる可能性が考えられる.
  • 岡 慎一
    2006 年 95 巻 10 号 p. 2112-2117
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    HIV/AIDSに対する治療は, 1996年までは単剤もしくは2剤による治療で, 長期的な延命効果は得られなかった. しかし, 97年以降可能となった3剤以上の多剤併用療法 (HAART) によりHIV患者の予後は, 飛躍的に改善した. この経過は, まさに結核治療の歴史と同じである. しかし, 結核との大きな違いは, HIV感染症は治癒しないことである. したがって, 基本的には, 生涯にわたる治療を必要とする. HAARTに用いられる薬剤は, 年々改善され, 現在は, 1日1回4錠による治療が可能となっている. これらの組み合わせは, 大規模無作為割付試験の結果により決められ治療ガイドラインに盛り込まれている. しかし, このガイドラインは年ごとに改訂が行われており, HIV/AIDSの治療法は, いまだ途上にあるといってもよい. その大きな理由の一つは, 治療が長期にわたることであり, 薬剤耐性ウイルスの出現, 治療薬の慢性毒性, さらには, 確実に長期にわたり服薬しなければならないという精神的プレッシャーなどの問題である.
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