日本内科学会雑誌
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95 巻, 2 号
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内科学会ニュース
会告
特集●不整脈 : 診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I. 病態と診断の進歩
II. 治療
  • 新 博次
    2006 年95 巻2 号 p. 228-233
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    不整脈の治療では, 不整脈そのものを治療すべきかの判断と, 如何なる治療法を選択すべきかが重要となる. 実際に治療すべきと判断されたならば, 薬剤治療を行うべきか, カテーテルアブレーション, 植込み型除細動器 (ICD) など非薬物治療を選択すべきかの判断が要求される. 集積されたエビデンスを参考とし, 個々の症例に至適な治療法を選択実施していく必要がある. 具体的に不整脈の治療方針を決定し, 治療を開始, 安全に継続するためには, 不整脈発生に関わる電気生理学的知識, 治療に用いる薬剤の差異に関する知識, そして忍耐が必要である. 今日までの治療学の流れをみると, 選択した治療法を施行した際に, 「少なくとも生命予後を悪化させない」という原則が存在する.
  • 大塚 崇之, 山下 武志
    2006 年95 巻2 号 p. 234-239
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    心房細動と心室性不整脈に関する治療法を大規模臨床試験の結果をもとに考察した. 現時点で心房細動に対する抗不整脈薬での洞調律維持には限界があり, エビデンス上, 抗凝固療法継続が重要である. 虚血性心疾患に伴う心室性不整脈に対し, I群薬は予後を悪化させるが, アミオダロンやβ遮断薬は死亡率を低下させうる. しかし植え込み型除細動器は薬物療法より有意に突然死を減少させ, その一次予防効果も示されている.
  • 1) 抗不整脈薬の分類と電気生理
    松田 直樹
    2006 年95 巻2 号 p. 240-245
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    抗不整脈薬の分類としてVaughan Williams分類が広く用いられてきた. I群薬はNa+チャネルを遮断し心房・心室筋の主に伝道抑制に働く. II群薬はβ受容体を抑制する. III群薬はK+チャネルを遮断し, 活動電位幅延長から不応期延長に働く. IV群薬はCa2+チャネル遮断により自動能抑制, 房室伝道抑制に働く. しかしこの分類の限界が指摘され, 新たな分類としてSicilian Gambitが提唱されている.
  • 2) Sicilian Gambitによる理論的治療選択法とガイドライン
    加藤 貴雄
    2006 年95 巻2 号 p. 246-252
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    不整脈治療方針の大幅な見直しの潮流の中で, 最も注目され臨床への導入が積極的に図られているのがSicilian Gambitの考え方である. “抗不整脈薬の薬理作用を多角的に見直し, Vaughan Williams分類から脱却すべきであること”, “病態生理学的アプローチによる理論的薬剤選択法を導入すべきこと”, “不整脈発生機序の上流にあるさまざまな事象へのアップストリームアプローチを積極的に行うこと”, の3つの新しい提言が骨子になっている. 我が国においても, このSicilian Gambitの考え方を取り入れた不整脈薬物治療に関するガイドラインが制定・公表されている.
  • 3) III群抗不整脈薬をどう使うか
    藤木 明
    2006 年95 巻2 号 p. 253-260
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    III群抗不整脈薬はもろ刃の剣としての性格が強いが, I群抗不整脈薬と異なり心機能障害例の不整脈に対する有効性が証明されている. アミオダロンとベプリジル (IV群に分類されるが作用の主体はIII群作用) はマルチチャネルブロッカー, ソタロールはβ遮断作用を併せ持つ, ニフェカラントは静注薬といった特徴がある. 投与のポイントは, 不整脈以外にもQRS幅, QT時間, 電解質, 心機能など, 日々変化する患者の病態を見落とさないことである.
  • 4) 特殊な病態における抗不整脈薬治療 (心不全, 腎不全・透析, 肝機能障害, 妊婦)
    渡邉 英一
    2006 年95 巻2 号 p. 261-270
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    不整脈治療の目的と目標は自覚症状の軽減によるQOL (quality of life) の改善と, 突然死の回避を主体とした生命予後の改善である. 健常者に比べて心不全, 腎不全・透析, 肝機能障害, 妊娠など特殊な病態下では, 抗不整脈薬の代謝・排泄能が変化しているため, 使用量や投与法などに注意が必要である. また, 交感神経・内分泌系などの活性亢進や電解質異常など不整脈発生誘因の是正や, 高血圧や虚血性心疾患などの基礎疾患の改善努力も忘れてはいけない.
  • 1) カテーテルアブレーション
    山根 禎一
    2006 年95 巻2 号 p. 271-277
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    カテーテルアブレーションは不整脈の非薬物療法の一つとして確立した方法といえる. 従来の適応は限局した起源または回路に起因する頻拍が主であったが, 近年, 不整脈発生機序の解明の進歩により心房細動や心室細動まで治療適応は広がってきている. また新しいマッピングシステムの導入により心房頻拍や心室頻拍などの治療成績も大きく向上している. 今後すべての頻脈性不整脈が治療適応となる日も遠いことではないであろう.
  • 2) ペースメーカーとICD
    石川 利之
    2006 年95 巻2 号 p. 278-284
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    ペースメーカー植込み症例にはしばしば心房細動が合併する. 心房ペーシングには心房細動予防効果が認められるが, 心房細動予防のための至適ペーシング部位やペーシング・アルゴリズムが検討されている. 重症心不全に対する両室ペースメーカー治療の有効性は確立したが, より有効な適応基準の検討が必要である. 致死的頻脈性不整脈に対する植込み型除細動器 (implantable cardiodefibrillator ; ICD) の有効性が認められているが, 予防的ICD植込みやICDと両室ペースメーカーの組み合わせの有効性が報告されている.
  • 3) 不整脈外科の現状と展望
    小坂井 嘉夫
    2006 年95 巻2 号 p. 285-291
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    1970年に岩らが日本で最初のWPW症候群の外科治療を行った. 筆者らも1979年からWPW症候群を筆頭に, 心室性期外収縮, 心室頻拍の外科治療, 房室回帰性頻拍, 心房細動, 心房頻拍などの外科治療を開始した. 不整脈は数理的に明解な疾患で, 外科による心外膜や心内膜のマッピングがさらに不整脈の機序を解明した. それがカテーテルアブレーションの開発に応用され, maze手術を除いて不整脈外科治療が激減している現状である.
  • 1) 心房細動―リズムコントロールとレートコントロール
    西村 敬史
    2006 年95 巻2 号 p. 292-298
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    心房細動は様々な原因によって発症するだけでなく, この不整脈をもつ患者の年齢・合併疾患・ライフスタイルも多彩である. さらに, 有効な治療薬やそれによる副作用発現も個々の症例によって様々である. このように多様性をもつ心房細動の治療に当たっては, リズムコントロールとレートコントロールそれぞれの特性を理解し, より適したものを選択することが重要である. また, 一度いずれかの治療方針を選択しても, 治療に対する反応や状況の変化によってはもう一方の治療方針に変更するという柔軟性も求められる.
  • 2) Regular narrow QRS tachycardiaの鑑別診断と治療
    中島 英子, 熊谷 浩一郎
    2006 年95 巻2 号 p. 299-304
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    Narrow QRS tachycardiaとは正常洞調律時と同様のQRS波形を示す頻拍であり, 頻拍中の房室伝導が生理的刺激伝導系を介していることから頻拍の起源は房室結節より上部 (上室性) と判断できる. 原因としては, 洞性頻脈, 発作性上室性頻拍, 心房頻拍, 心房粗動のいずれかが考えられる. 正確な鑑別診断には心臓電気生理学的検査が必要なことが多いが, 近年のマッピングシステムやカテーテルアブレーション技術の進歩によりこれらの多くが根治可能となっている.
  • 3) Wide QRS頻拍の鑑別診断と治療
    西崎 光弘
    2006 年95 巻2 号 p. 305-313
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    Wide QRS頻拍は心室頻拍の頻度が高いため, 機序が上室性か心室性によるものか, 早急に鑑別診断することが治療上, 極めて重要である. 心室頻拍と変行伝導を伴った上室頻拍は (1) 房室解離 (2) QRS幅 (3) QRS電気軸 (4) 頻拍中のQRS波形 (5) 洞調律時心電図 (6) 基礎心疾患を指標として鑑別され, 特に, 頻拍中のQRS波形はV1, V6誘導の波形に注目する必要がある. 治療は両者の鑑別と基礎心疾患や心機能の程度によって決定される.
  • 4) QT延長症候群を疑ったときの対応
    早野 元信
    2006 年95 巻2 号 p. 314-319
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    QT延長症候群の臨床について最近の知見と治療について述べた. 特に遺伝子解析の進歩により, 本疾患の異常が遺伝子レベルから明らかにされた. 従来からの臨床所見や治療方法について病気の本態から考えて, 合理的な説明がなされることが可能になった. 特に頻度が多いLQT1-3はT波形態から推測もされており, タイプ別の日常生活における用心すべき行動や治療の選択にも参考になる. 一般にはβ遮断薬が第一選択薬である.
  • 5) Brugada症候群を疑ったときの対応
    鎌倉 史郎
    2006 年95 巻2 号 p. 320-327
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    心電図のST変化からBrugada症候群が疑われた時には, J点の波高を計測して, それが真のBrugada型心電図であることを確認すると共に, V1~V3誘導の上位肋間で心電図を記録することが望ましい. また失神の症状と家族歴を詳細に聴取し, それらが心室細動に由来しているか否かを鑑別する. 電気生理学検査の意義は未だ明らかでないが, 症状, 家族歴とこれら心電学的指標に基づいた治療指針が報告されている.
座談会
認定内科医トレーニング問題
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 今井 浩三, 豊田 実, 佐藤 裕信, 篠村 恭久
    2006 年95 巻2 号 p. 362-367
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    遺伝子のメチル化は, シトシンとりわけCpG配列に特異的に起こるDNA修飾である. 遺伝子のメチル化は遺伝子変異, 欠失とならび, 癌抑制遺伝子不活化の第三の機構として重要である. 異常メチル化により, 細胞周期調節遺伝子やアポトーシス関連遺伝子, DNA修復酵素など様々な遺伝子が不活化を受ける. メチル化の網羅的解析から, 一部の腫瘍ではCpG island methylator phenotype (CIMP) を示し, 癌においてメチル化の制御機構が破綻していることが示唆される. メチル化の標的遺伝子が明らかになるにつれ, 異常メチル化を腫瘍マーカーや抗癌剤感受性の指標として用いる試みもなされている. また, メチル化を阻害することにより不活化されている遺伝子を再発現させ, 癌細胞に分化やアポトーシスを誘導することが可能になりつつある.
  • 中尾 俊之, 岡田 知也
    2006 年95 巻2 号 p. 368-373
    発行日: 2006/02/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    腎不全に対する低蛋白食事療法では, 尿毒症物質の産生・貯留を抑制して末期慢性腎不全での透析導入を阻止ないし遅延させることができることは古くから周知の事実である. また最近の動物実験での研究結果や臨床研究のmeta-analysisの結果では, 低蛋白食事療法が腎機能低下の進行自体を抑制する効果を有することが証明されている. このような低蛋白食事療法を臨床上で適用する場合, 蛋白質摂取量を有効量まで減少させるとともに, 炭水化物や脂質から十分にエネルギーを摂取すること, 食事全体のアミノ酸スコアを100 (perfect) とすることが, 栄養障害を防ぎつつ有効性を発揮させるポイントとなる. 低蛋白食事療法が有効かつ安全に行われるためには, 高いレベルでの患者管理を行える優秀な技術と適切なシステムを医療者側が所有していることが必要であり, そこには綿密で高度な専門的臨床力が要求される.
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