日本内科学会雑誌
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95 巻 , 7 号
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内科学会ニュース
会告
特集●脳炎・脳症 : 診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I. 診断と治療
  • 尾上 祐行, 黒田 康夫
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1232-1237
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    ウイルス性髄膜炎, 脳炎は内科的緊急疾患である. 稀な疾患ではないので迅速かつ適切な初期対応ができるようになることが望まれる. ウイルス性髄膜炎は予後が良好な疾患であるが, ウイルス性脳炎は死亡率が高く, 重篤な後遺症を残すことが多い. 診断に必要な検査の優先順位を知り, その結果を正しく判定できることが適切な治療法の選択につながる.
  • 亀井 聡
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1238-1243
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    単純ヘルペス脳炎の診断と治療について概説した. 最近, 日本神経感染症学会より本症の診療ガイドラインが公表された. 診断は, 急性期には髄液を用いたPCRを主体として検索し, 発症2週間以後は髄腔内抗体産生の評価も併せて検討する. 但し, 検査方法や測定法について知識を持ち, 検査結果は臨床的に判断することが必要である. 一方, ガイドラインに準拠したアシクロビルによる適切な治療にも拘らず, 本症の転帰はいまだ満足すべき状況にない. このような現況から, 新たな治療戦略が必要と考えられる. その一つとして, 急性期の副腎皮質ステロイドの併用が挙げられる.
  • 山本 悌司
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1244-1250
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    細菌性髄膜炎, 脳膿瘍, 硬膜下膿瘍は治療が遅れると致命的であり, その診断治療は緊急である. (1) 細菌性髄膜炎が強く疑われる時は経験的治療 (empiric therapy) を遅滞なく開始する. (2) 髄膜炎症状が明らかでも最近の頭部外傷既往, 免疫抑制, 悪性腫瘍, または頭蓋内腫瘍がある場合, そして欝血乳頭・意識障害などの頭蓋内圧亢進, 神経学的局所所見がある場合, 膿瘍の可能性があるので, CTあるいはMRIをルンバールの前に施行する. この際, 抗生物質治療を画像検査やLPより先に開始する. 経験的抗菌療法は細菌性髄膜炎を疑う場合, 髄液グラム染色や培養結果が判明する前に開始する. 市中感染性髄膜炎では肺炎球菌は最重要であるが, 最近はペニシリン・セファロスポリン耐性菌が存在するため, 小児, 成人とも第3世代セファロスポリン (ceftriaxone, cefotaximeなど) とvancomycinの併用を考慮する. 高齢者, 基礎疾患のある場合は上記でカバーできない細菌による可能性があるため, 薬剤選択を慎重にする. 局所脳症状を呈し, 脳膿瘍, 硬膜下膿瘍が疑われる時は画像検査を優先し, 腰椎穿刺は禁忌である. 迅速な脳外科的対応が必要である.
  • 綾部 光芳, 野田 和人, 庄司 紘史
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1251-1254
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    結核性髄膜脳炎は亜急性に発症する髄膜炎の代表であるが, 未経験の医師が多いのが現状である. 初期に特異的な症状がないため診断の遅れが懸念されている. 意識障害など症状が悪化してから治療を開始したときには良好な予後は期待できない. 1週間以上持続する頭痛・発熱を呈する患者では結核性髄膜脳炎を考慮する. 髄膜刺激徴候を認めたときは直ちに髄液検査を行い迅速に診断を進める. 疑診の段階でも抗結核薬の投与を開始する.
  • 吉良 潤一
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1255-1259
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    寄生虫感染症はわが国では著明に減少したため, 過去のものとみられがちである. しかし, 現在でも寄生虫感染症は散発しており, 近年では一部の食品媒介性寄生虫感染症はむしろ増加傾向を示している. 中枢神経系を侵す寄生虫性疾患のうち, 本稿では, そのトピックスとして, ブタ回虫性脊髄炎, イヌ回虫性脊髄炎について自験例を中心に紹介した. これらは, ブタ回虫, イヌ回虫の幼虫が諸臓器に迷入して障害を起こす (visceral larva migrans). 寄生虫性脊髄炎では, 全身症状を欠く場合や末梢血で好酸球増多を欠く場合があり, 非圧迫性ミエロパチーの鑑別診断上重要である. 血清, 髄液の抗寄生虫抗体の測定により容易に診断でき, Albendazoleなどの抗寄生虫薬投与により治癒することから, 現代日本でも忘れてはならない寄生虫性神経感染症といえる.
  • 山本 徹
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1260-1262
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    トキソプラズマ (Toxoplasma gondii) は胞子虫類に属する細胞内寄生原虫で多くは不顕性感染で経過し, 我が国の成人の感染率は1/4に達する. 医療上問題になるのは従来先天性感染や血液系悪性腫瘍に伴うものが主であったが, エイズの蔓延に伴い脳トキソプラズマ症が頻発し, 治療可能である点で特に注目を浴びている. しばしば多発性膿瘍をきたし, 画像所見の特異性が低く補助検査も有用性が限られるため, 患者背景を考慮して治療的診断が行われる.
  • 水口 雅
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1263-1267
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    急性脳症にはライ症侯群を含む種々の病型があり, さまざまなウイルス感染症がその契機となる. 中でもインフルエンザの頻度が最も高く, これによる種々の急性脳症はインフルエンザ脳症と総称される. インフルエンザ脳症は日本の乳幼児で罹病率が高い. 近年, 厚生労働省研究班を中心に疫学, 病態, 診断, 治療が研究され, 2005年には診療ガイドラインが公表された.
  • 根本 英明, 湯浅 龍彦
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1268-1273
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    辺縁系脳炎は統合失調症に似た精神症状で発症する. 著者らは辺縁系脳炎を原因別に1) 傍腫瘍性 2) ウイルス性 3) 自己免疫疾患性 4) 自己抗体介在性 5) 原因不明に分類した. 診断は, 臨床症状, 髄液検査, 画像診断から行い, 傍腫瘍性であれば抗神経抗体の測定, ウイルス性であれば各種PCRや抗体測定を, 自己免疫疾患であれば各種の抗体を測定し, 自己抗体介在性であれば抗グルタミン酸受容体抗体を測定する. 治療は, それぞれの基礎疾患の治療に加え, 自己免疫疾患性や抗体介在性であればステロイド・パルスや免疫グロブリン大量療法, 血漿交換等の抗免疫療法が有効である.
  • 村山 繁雄
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1274-1278
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    進行性多巣性白質脳症 (Progressive multifocal leukoencephalopathy, PML) は, Papova virusに属するJC virusの日和見感染による, 中枢神経系進行性脱髄性疾患である. 免疫寛容状態をもたらす主に血液疾患で報告され, 後天性免疫不全症候群の出現で激増し, 免疫抑制・賦活療法により病状が変動し, 場合によっては治癒する症例の報告もみられるようになった.
  • 日詰 正樹, 水澤 英洋
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1279-1285
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    人獣共通致死性感染症のプリオン病は, ヒトでは特発性, 感染性, 遺伝性に大別される. 中でも変異型Creutzfeldt-Jacob病 (vCJD) は他のプリオン病と異なり, 脳だけでなく末梢組織でも異常プリオン蛋白 (PrPSC) が検出され, 輸血や手術による二次感染が問題となる. 治療としてキナクリンなどの薬剤が試されているが, 十分な効果はない. Protein misfolding cyclic amplification (PMCA) の応用などによる早期診断や画期的な治療法の開発が急務である.
  • 岸田 修二
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1286-1290
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    HIV関連神経合併症はHAART導入後も必ずしも予後良好ではなく, 特にPMLやPCNSLは重篤な機能障害を残したり, 致死的となる. AIDS指標神経疾患の早期診断と治療法に関して最近の見解を述べた. HAARTはHIV/AIDS患者の生命予後を改善し, HIV感染症を慢性疾患へと変えたが, それに伴い治療薬や高齢化, 慢性HIV感染症などからくる神経合併症なども今後加わり, 益々重要な合併症となると予想される.
  • 谷口 彰, 葛原 茂樹
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1291-1296
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    癌患者に精神神経症状が出現した際には, 原疾患に関連したものだけでなく, 治療誘発性の病態も考慮する必要がある. 抗癌薬による副作用の発生頻度は高くないが, いったん発現すると重篤化し非可逆的となりやすい. 近年は抗癌薬の多剤併用療法が普及したことに加え, 放射線治療併用も多いため副作用が出現しやすい. 既知の副作用を熟知するだけでなく, 新たな症状が出現した場合にも, 抗癌薬の副作用を常に念頭におく必要がある.
  • 伊藤 泰広
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1297-1304
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    RPLSは臨床的上, 痙攣, 意識障害, 視覚異常, 高血圧などを主症候とし, 画像上, 脳浮腫が主に後部白質を中心に出現し, さらに臨床的・画像的異常所見が可逆性で治療により消退する特徴を有する臨床的・神経放射線学的症候群である. RPLSは, 高血圧性脳症, 子癇などの基礎疾患の他, 薬剤, 外科的侵襲など様々な要因で生じうる. 病態は血管原性脳浮腫が主体である. RPLSの概念は, 従来別々であった疾患群を症候や画像上の共通点から一つの症候群に包括した点で意義がある. またRPLSは救命救急疾患で, 早期から迅速に対処することが重要である.
II. 最近の話題 : スギヒラタケの関与が疑われている原因不明の脳症
  • 柳川 洋, 岡部 信彦
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1305-1309
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    2004年9月より, 秋田県から新潟県にかけての日本海沿岸を中心に急性脳症事例が多発し死亡例も発生している. 多くの症例の特徴として, 腎機能障害, スギヒラタケの摂食があげられているが, 原因は不明である. しかし, 診療, 予防上の必要性, 次年度以降の予防対策, 社会的影響を鑑みると, 原因の早急の究明は喫緊の課題である. 厚生労働省は平成16年11月に, この急性脳症対策の方向性を示す目的で特別研究事業として, 「東北北陸等での急性脳症多発事例にかかる研究班 (主任研究者 : 埼玉県立大学学長 柳川 洋)」を立ち上げて, これまでに行政, 専門家が把握している情報を共有し, これらの情報を基にした検討会を開催した. その結果, 疾病概念, 原因, スギヒラタケの毒性についての問題を整理することができた. 本稿では, 患者発生の実態を中心にして, 検討会で得られた情報を要約した.
  • 下条 文武, 成田 一衛
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1310-1315
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    平成16年9月中旬以後, 新潟県北部の血液透析患者に原因不明の急性脳症が多発し, 死亡例も発生した. 私どもは, 関連病院の透析担当主治医から, 発症者のなかにスギヒラタケ摂取後に発症した症例があるとの情報を得たので, この事実に注目し, スギヒラタケ摂取との関連性について全国の日本腎臓学会員に情報提供を呼びかけた. その結果, スギヒラタケ摂取と急性脳症の発症に強い関連がある32症例の情報を得, 致死率が約30%に及ぶ重篤な臨床経過をとる脳症であることがわかった.
  • 豊島 至, 小原 講二, 和田 千鶴, 加賀谷 肇, 平田 温, 小出 隆司, 高橋 聡, 佐藤 滋, 権守 邦夫, 柳原 清
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1316-1322
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    2004年, 秋田県では23例のスギヒラタケ関連脳症の報告があった. 21例で発症前のスギヒラタケ摂食が確認され, 16例で血液透析を受けていた. 秋田県症例では他県に比して発熱, CRP高値, 髄液細胞数増多の炎症所見と, 大脳皮質・皮質下の点状病変を示す症例が多くみられ特徴的であった. その意義については今後の検討が必要である.
  • 川並 透
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1323-1327
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    スギヒラタケの関与が疑われる脳症の神経画像は, 両側島皮質下白質がT2強調MR画像で高信号, CT画像で低吸収域を呈する特徴を示す. 同様の画像変化は大脳皮髄境界部に散在したり, 両側基底核に出現することがある. 神経病理学的報告は, 髄鞘崩壊とグリオーシスを特徴とする2例とマクロファージの出現を伴う壊死巣を認めた2例がある. 4例とも炎症性病変は否定的で, 橋-橋外髄鞘崩壊症に類似した病態が推定される.
座談会
認定内科医トレーニング問題
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 松村 到, 金倉 譲
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1375-1381
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    造血器腫瘍の分野においては分子標的療法という言葉がもてはやされる以前からATRAによるAPLの治療が行われてきた. また, 他の分野に先駆けてCMLにimatinib, B細胞悪性リンパ腫にrituximabが臨床応用されてきた. 両薬剤は, 共に際立った有効性を示し, 現在ではそれぞれの疾患の治療に欠くことのできないキードラッグである. 昨年, この2剤に引き続き, 亜砒酸, Am80, 抗CD33抗体が保険認可された. 既に悪性リンパ腫に対する90Y-ibritumomabの臨床試験は終了しており, imatinib耐性CMLに対する新規BCR-ABL阻害剤AMN107, BMS354825の臨床治験も始まっている. 更に, プロテアソーム阻害剤bortezomibも近く認可される予定である. 今後, 更に分子標的療法が進歩し, 造血器腫瘍の治療成績が更に改善されることを期待したい.
  • 八木橋 厚仁
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1382-1386
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    最近, 我々は, 抗アポトーシス分子であるsurvivinやlivinが各種癌組織で高発現し, 治療抵抗性に重要な役割を果たしていること, さらに, 両分子に対する自己抗体が, 肺癌, 乳癌, 食道癌, 胃癌, 大腸癌, 胆管癌, 膵癌, および肝癌患者の血中で高率に検出されることを見出した. 癌抗原に対する自己抗体の検出は, 組織を用いた遺伝子解析法に比べると, 検体が得やすく, 測定操作も簡便で, 安価なため, 今後の発展が期待される.
  • 名越 澄子, 藤原 研司
    2006 年 95 巻 7 号 p. 1387-1393
    発行日: 2006/07/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    消化管内視鏡検査・治療に関連する医療事故調査を基に, その原因を分析し安全対策を検討した. 60歳以上の症例が約7割を占め, それも内視鏡的粘膜切除術, 内視鏡的粘膜下層剥離術及び膵胆管系内視鏡検査・治療で起る事故例が多かった. 予防策として, 施設内で高齢者や腸管の癒着, 脆弱性及び合併症など患者側情報の収集を徹底し, 適応を慎重に検討し, 安全な検査・治療法を選択するような体制づくりが最も重要と考えられた. 技術に関連して起る事故は, 教育・指導体制の強化や事故防止に向けた手技毎の指針作成により発生頻度を減らすことが可能であるが, 術者の判断の誤りや不注意では, 経験を共有することによる自己研鑽が必要と思われた. 慎重な手技操作にも拘らず発生する医療事故も多く, 書面による十分なインフォームドコンセントと事故発生直後の患者への適切な対応が望まれる.
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