日本内科学会雑誌
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96 巻, 4 号
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特集●カルシウム・リン代謝異常症:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.高カルシウム血症
  • 竹内 靖博
    2007 年 96 巻 4 号 p. 656-661
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    高カルシウム血症は,日常臨床で頻繁に遭遇する生化学検査上の異常である.大部分の高カルシウム血症は自覚症状に乏しく,検査によって初めて気付かれることも稀ではない.一方,血中カルシウム濃度は極めて厳密に制御されており,高カルシウム血症の背景には必ず何らかの病態が潜んでいる.従って,高カルシウム血症に遭遇したら,正しい思考過程に従って適切な診断を付けることが臨床的に大切な課題であり,患者の健康にとって大きな貢献となる.
  • 杉本 利嗣
    2007 年 96 巻 4 号 p. 662-668
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    血清カルシウム(Ca)濃度測定のルーチン化に伴い,原発性副甲状腺機能亢進症の臨床病態像が大きく様変わりし,無症候性で発見される頻度が急増してきている.これとともに無症候例に対する対応が問題となってきている.副甲状腺摘出術の適応拡大が提唱されるとともに,ビスフォスフォネート製剤やCa感知受容体作働薬Calcimimeticなどによる保存的治療法も注目されている.
  • 田中 良哉, 岡田 洋右
    2007 年 96 巻 4 号 p. 669-674
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症は代表的な腫瘍随伴症候群で,進行癌の約10%に併発する.腫瘍細胞から産生された副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)は,腎でのカルシウム再吸収や骨でのカルシウム動員を介して高カルシウム血症をもたらす.ビスフォスフォネートは,骨吸収阻害を介して高カルシウム血症に奏功する.本稿では,PTHrP産生腫瘍による高カルシウム血症の発症の機序,診断,治療および今後の展望について概説する.
  • 安倍 正博
    2007 年 96 巻 4 号 p. 675-680
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    進行した多発性骨髄腫や癌の広範な骨転移では,局所因子の産生により骨破壊を来たし高カルシウム血症がもたらされる.高カルシウム血症は直接死因ともなりうるため,早期発見と迅速な対応が必要であるが,特徴的な症状がないため見逃されやすい.早期発見のためには血中カルシウム値の定期的な測定が重要である.強力な骨吸収抑制薬であるビスフォスフォネートが臨床応用され,高カルシウム血症の治療成績は飛躍的に向上した.
  • 駒場 大峰, 池田 和人, 深川 雅史
    2007 年 96 巻 4 号 p. 681-687
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    血清カルシウム(Ca)濃度は,副甲状腺や腎尿細管のCa感受性受容体(calcium sensing receptor: CaSR)に感受されることにより,狭い範囲にコントロールされている.家族性低Ca尿性高Ca血症(familial hypocalciuric hypercalcemia: FHH)は,このCaSRの不活性型変異によって惹起される疾患で,軽度の高Ca血症と比較的低Ca尿症を特徴とする.臨床的には,不要な副甲状腺手術を避けるため,原発性副甲状腺機能亢進症との鑑別が重要となる.FHHは基本的には治療の必要のない疾患と考えられているが,最近では新規治療薬calcimimeticsの効果が報告され,注目を集めている.
II.低カルシウム血症
III.低リン血症・骨軟化症
  • 福本 誠二
    2007 年 96 巻 4 号 p. 719-724
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    FGF23は,FGFファミリー最後のメンバーとして同定された.FGF23の作用過多は低リン血症性疾患を惹起するのに加え,FGF23の作用障害により高リン血症が惹起されることが明らかにされた.またklothoが,FGF23作用の発現に必要であることが示された.これらの成績は,FGF23がホルモンとして作用すること,FGFファミリーのリガントと受容体の関係が,従来知られていた以上に多様で複雑であることを示している.
  • 道上 敏美
    2007 年 96 巻 4 号 p. 725-730
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    X染色体性低リン血症性骨軟化症は,最も頻度の高い遺伝性低リン血症性くる病・骨軟化症であり,成長障害,低リン血症,尿細管におけるリン酸再吸収障害,ビタミンD代謝異常によって特徴づけられる.1995年に,本症の原因遺伝子としてPHEX(phosphate-regulating gene with homologies to endopeptidases on the X chromosome)が同定された1)PHEX遺伝子の産物はエンドペプチダーゼであると推察されるが,現在のところその基質は不明であり,本症の発症機序はいまだ明らかにはなっていない.本稿においては,PHEX遺伝子同定の経緯および本症の発症機序についてのこれまでの知見を概説するとともに,臨床症状と診断,治療の現況についても述べる.
  • 伊東 伸朗, 福本 誠二
    2007 年 96 巻 4 号 p. 731-736
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    腫瘍性低リン血症性骨軟化症(tumor-induced hypophosphatemic osteomalacia: TIO)は,腎尿細管リン再吸収障害による低リン血症,くる病/骨軟化症等を特徴とする腫瘍随伴症候群(paraneoplastic syndrome)である.近年本疾患の原因因子が,FGF(fibroblast growth factor)23であることが明らかにされた.本疾患の診断,原因腫瘍の局在診断におけるFGF23の測定,静脈サンプリングの有用性も明らかになりつつある.
  • 梶 博史
    2007 年 96 巻 4 号 p. 737-741
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    ビタミンD依存症は遺伝性のビタミンD抵抗性くる病(骨軟化症)をきたす疾患で,通常生後数カ月でくる病,低カルシウム血症性テタニーにより発症する.ビタミンD1α位水酸化酵素の不活性型変異によりビタミンD活性化が障害されるI型とビタミンD受容体の不活性型変異によりビタミンDの作用が障害されるII型があり,前者は生理量の活性型ビタミンDで治療可能だが,後者は超薬理量の活性型ビタミンDによる治療を要する.
  • 岡崎 亮
    2007 年 96 巻 4 号 p. 742-747
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    ビタミンD充足度の最良の指標は血中25(OH)D濃度である.現在,基準値は,概ね10~70ng/mlである.通常,25(OH)D濃度が基準値以下の場合を,ビタミンD欠乏症とし,くる病・骨軟化症の原因となる病態である.近年,血中25(OH)D濃度が基準値範囲内でも低値傾向を示す場合,高率に副甲状腺ホルモン分泌の亢進,骨代謝回転の増加,転倒頻度の増加などがもたらされることが明らかになった.このような状態を,ビタミンD不足と呼ぶ.我々は,少なくとも血中25(OH)D濃度が,25ng/ml以上なければ,ビタミンD充足状態とは言えないと考えている.ビタミンD不足を回避するためには,日光曝露が重要だが,それが困難な場合には,現行のビタミンD摂取基準量(200 単位/日)では不十分であり,少なくとも400 単位/日の摂取が望まれる.
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 小椋 美知則
    2007 年 96 巻 4 号 p. 787-804
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    濾胞性リンパ腫は,その85~90%がbulky II期,III期,IV期の進行期症例であり,従来の化学療法剤での併用化学療法では腫瘍の縮小効果が得られるものの,生存延長には寄与しないことが明らかとなっており,従来は,病状進展時まで化療実施を待つ,“watchful wait”の考え方が中心であった.しかし,キメラ型抗CD20モノクローナル抗体(rituximab)と化学療法の併用,およびrituximabの維持療法により,明らかな生存延長効果が検証され,こうした治療戦略が初発進行期濾胞性リンパ腫に対する新たな標準的治療法となりつつある.さらに,β線を放射するラジオアイソトープを抱合した抗体(ibritumomab tiuxetan)による放射免疫療法,低毒性で有効性が高く,外来での治療に適した,経口fludarabineや,bendamustineなどの新たな抗ガン化学療法薬などの有望な新薬開発や,造血幹細胞移植の進歩により難治性の濾胞性リンパ腫に対してもaggressive非ホジキンリンパ腫と同様に治癒を期待しての新たな治療戦略が展開されつつある.
  • 柴田 洋孝, 伊藤 裕
    2007 年 96 巻 4 号 p. 805-810
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    偽性アルドステロン症は,甘草(グリチルリチン酸)の慢性摂取により,高血圧,低カリウム血症,低レニン血症,低アルドステロン血症を呈する疾患である.腎臓の皮質集合管細胞にあるミネラルコルチコイド受容体(MR)に,アルドステロンとコルチゾールは等しい親和性で結合するが,通常,11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 2によるコルチゾールからコルチゾンへの不活化により,アルドステロンが選択的にMRに結合する.グリチルリチン酸は,この酵素活性を可逆的に阻害することにより,腎臓内で上昇した内因性コルチゾールにより,MRを活性化して,Na再吸収およびK排泄が亢進するのが病態である.治療としては,原因薬物や食物の減量または中止であるが,一部の症例ではミネラルコルチコイド過剰症状が遷延することがあり,減塩,K補充,MR拮抗薬のスピロノラクトン投与などが有効である.
  • 柏木 征三郎
    2007 年 96 巻 4 号 p. 811-816
    発行日: 2007年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    トリインフルエンザA(H5N1)の感染はアジアからヨーロッパまで拡がり,2007年1月には宮崎県にまで達している.このようなトリインフルエンザの拡がりは,ヒトからヒトへと感染するウイルスへと変化する機会が多くなると考えられる.現在のA(H5N1)のヒトに対する死亡率がパンデミックの際にも同様と考えるときわめて大きな被害となるものと考えられる.これに対しては,抗ウイルス薬の備蓄,パンデミックへの進展の阻止,ワクチン技術の開発など種々の対策が必要であろう.新型ウイルスが登場した場合は,1918年のスペインかぜの事例から学ぶことも多い.幸い,1918年のウイルスの感染実験もなされるようになり,その成績が待たれる.
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