日本内科学会雑誌
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97 巻, 4 号
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特集●副腎不全:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.慢性副腎不全の分類,徴候,疫学
  • 柴田 洋孝
    2008 年 97 巻 4 号 p. 702-707
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    副腎不全のうち,原発性は副腎疾患によりコルチゾールが欠乏する疾患で,続発性はACTH低値によりコルチゾール欠乏をきたす.続発性ではレニン・アンジオテンシン系が正常なためアルドステロン産生は正常であるが,原発性ではアルドステロン産生も様々な程度で抑制される.原発性副腎不全は,自己免疫性が多く,感染症,腫瘍,浸潤性疾患,副腎出血,遺伝性疾患などによる.続発性副腎不全は,ステロイド治療に伴う視床下部-下垂体系の抑制によるものが多い.
  • 西川 哲男, 齋藤 淳, 松澤 陽子, 伊藤 浩子, 大村 昌夫
    2008 年 97 巻 4 号 p. 708-710
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    副腎不全は副腎から分泌されるステロイドの絶対的または相対的欠乏により発症する病態である.副腎不全は特異的な症状発現が少ない.非特異的な全身症状や精神症状,消化器症状のため見逃され易い.悪心,嘔吐,発熱といった症状は高頻度に副腎不全にみられるが急性腹症,感冒などと誤診され治療が遅れて,命を落とすことになるので充分な注意が必要である.プライマリ・ケアの日常診療でも本疾患を念頭において病歴,身体所見より誤診しないことが大切である.
  • 高柳 涼一
    2008 年 97 巻 4 号 p. 711-715
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    我が国では,比較的稀な副腎の内分泌疾患は厚生労働省の特定疾患研究として全国調査が施行されてきた.このうち,平成9年から10年にかけて疫学班と臨床班が協力して行われたものが,比較的精度の高い全国悉皆疫学調査となっている.この疫学調査結果を基にAddison病と先天性Addison病について,一部集計結果を追加した.全国推定患者数は5年間で先天性Addison病が103例,1年間でAddison病が660例あった.
II.原発性副腎機能低下症の診断
  • 成瀬 光栄, 立木 美香, 田辺 晶代
    2008 年 97 巻 4 号 p. 716-723
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    原発性副腎皮質機能低下症は倦怠感などの非特異的症状,色素沈着,低ナトリウム血症,高カリウム血症などに注目し,本疾患を疑った場合,コルチゾール,ACTHを測定する.典型例ではコルチゾール低値,ACTH高値から原発性と診断可能であるが,コルチゾールの低値域はキット間でばらつきがあるので評価に注意する.必ずACTHと合わせて評価すると共に,適宜,迅速ACTH試験を実施し副腎皮質機能の予備能低下を確認する.基礎疾患診断のため胸部X線,抗副腎抗体,副腎CTなどを実施する.続発性との鑑別が困難な場合にはCRH試験,下垂体MRIなど視床下部・下垂体系の評価を行う.
  • 田村 尚久, 中尾 一和
    2008 年 97 巻 4 号 p. 724-731
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    特発性Addison病は,主に自己免疫性副腎皮質炎による,後天性の慢性原発性副腎皮質機能低下症である.自己免疫性副腎皮質炎は,小児期に発症し粘膜皮膚カンジダ症か副甲状腺機能低下症を合併する多腺性自己免疫症候群(APS)1型,成人に発症し自己免疫性甲状腺疾患か1型糖尿病を合併するAPS 2型,他の臓器特異的自己免疫疾患を合併するAPS 4型,そして単独型に分類される.
  • 菅原 明, 伊藤 貞嘉
    2008 年 97 巻 4 号 p. 732-735
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    Adrenoleukodystrophy(ALD)は中枢神経系の進行性脱髄と副腎不全を呈するX連鎖劣性遺伝子疾患で,男児3万人から5万人に一人の割合で発症する.ALDは8病型に分類されるが,小児型とAdrenomyeloneuropathyで高頻度に副腎不全を併発する.神経症状に乏しい場合は特発性Addison病との鑑別が困難であり,血中極長鎖脂肪酸の測定が診断上必要となる.
  • 藤枝 憲二
    2008 年 97 巻 4 号 p. 736-742
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    先天性副腎低形成は,副腎皮質の発生・分化異常のために,副腎サイズが小さく,その機能が低下したものであり,およそ1/10,000~1/15,000出生の頻度で発症をみる先天性の比較的まれな疾患である.本症にはDAX-1遺伝子異常によるX連鎖性先天性副腎低形成と複合型グリセロールキナーゼ欠損症(副腎低形成,デシュンエヌ型筋ジストロフィー,グリセローキナーゼ欠損症)によるもの,SF-1遺伝子異常による常染色体性先天性副腎低形成,さらにはIMAGe症候群の4病型が報告されている.診断は,副腎不全症状と生化学・内分泌検査所見,画像検査さらには遺伝子検査により確定する.
III.続発性副腎機能低下症の診断
  • 蔭山 和則, 須田 俊宏
    2008 年 97 巻 4 号 p. 743-746
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    副腎機能低下症の原因には,原発性と続発性副腎機能低下症がある.続発性の原因には,視床下部性と下垂体性があり,原発性を含めた原因局在の決定のため負荷試験が有用である.一般的には,現在,corticotropin-releasing hormone(CRH)負荷試験とインスリン低血糖刺激試験(ITT)が行われることが多い.原発性副腎皮質機能低下症は,ACTH試験によって副腎皮質の予備能の低下を証明する必要がある.ストレス時の副腎皮質の予備能を評価しておくことは,副腎クリーゼ予防に重要である.それぞれの検査の意義を良く理解した上で,安全に行われるのが望ましい.
  • 岩崎 泰正, 橋本 浩三
    2008 年 97 巻 4 号 p. 747-751
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    ACTH単独欠損症は下垂体前葉ホルモン6種類のうちACTHのみの分泌障害により副腎不全を来す疾患である.近年報告例が増加しており,決して稀な疾患ではない.また不全型(潜在型)の例も存在することから,全身倦怠感などの症状に加え低血糖,低ナトリウム血症,好酸球増多傾向など副腎不全を疑わせる所見を認めた場合には負荷試験で下垂体・副腎系の予備能を評価することが望ましい.
  • 肥塚 直美
    2008 年 97 巻 4 号 p. 752-755
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    Sheehan症候群は分娩時の大出血またはショック後に下垂体の梗塞・壊死を生じ,これにより下垂体前葉機能低下症を呈する病態である.近年の産科技術の進歩によりその頻度は減少したが,分娩後かなりの期間後に低Na血症などの副腎不全を呈してはじめて診断される症例もある.本稿ではSheehan症候群について概説し,日常臨床において注意すべき点について述べる.
IV.急性副腎不全の病態と治療
  • 諏訪 哲也, 宗 友厚
    2008 年 97 巻 4 号 p. 756-760
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    副腎クリーゼは,副腎皮質ステロイドの急激な欠乏が本態であるが,脱水,電解質異常,高サイトカイン血症などの併存を考慮することが,正しい治療を行う上で必要である.また,副腎不全が原発性か2次性かによって,病態が異なることも理解されるべきである.ミネラルコルチコイド欠乏合併の有無は,重症度を左右する鍵のひとつである.
  • 寺澤 秀一
    2008 年 97 巻 4 号 p. 761-765
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    急性副腎不全は疑った場合,ACTHテストのために治療開始が遅れてはならない.低血糖の治療と生理食塩水に急速投与で循環の安定化が最優先となる.診断が確実でACTHテストが不要であれば,hydrocortisoneの投与を行うべきであり,診断が確定的でなければ,dexamethasoneを投与して,ACTHテストに備える.受診時は治療が必要な高カリウム血症を呈していることもあるが,治療開始後は身体全体のカリウムは減少しているため,急速に低カリウム血症になる傾向があるため,注意が必要である.
V.副腎ホルモン補充療法
  • 大月 道夫
    2008 年 97 巻 4 号 p. 766-771
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    副腎不全治療において欠落ホルモン(コルチゾール,アルドステロン,副腎アンドロゲン)に対して合成ステロイドホルモンの補充が行われる.グルココルチコイド補充には通常ヒドロコルチゾンが用いられるが,ストレス,手術などにおいて必要量が変化することに注意しなければならない.ミネラルコルチコイド補充にはフルドロコーチゾンが用いられる.副腎アンドロゲン補充は有用であると考えられるが,今後検討が必要である.
  • 柳瀬 敏彦
    2008 年 97 巻 4 号 p. 772-776
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    わが国の副腎皮質機能低下症患者に対する副腎ステロイド補充療法はヒドロコルチゾン15~20mgの補充量が多く,原発性(副腎性)よりも続発性(間脳-下垂体性)で少なめに補充されている現状である.血中コルチゾールのkineticsから検討した理論的必要補充量はさらに低めに見積もられており,長期的な視点からは,患者個人の副腎予備能やQOL(quality of life)に応じた至適補充量の模索努力は重要と思われる.また自験例の検討範囲では選択的なコルチゾール分泌障害に伴うヒドロコルチゾンのみの補充療法による副作用発現頻度は,複合ホルモン欠損症の病態を呈する続発性副腎皮質機能不全症の場合に較べて明らかに少なく,続発性の場合には他のホルモン欠落(GHや性腺ステロイド)に伴う副作用発現の可能性にも配慮することが重要である.
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 安部 秀斉, 土井 俊夫
    2008 年 97 巻 4 号 p. 820-826
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の増加に伴い,糖尿病性腎症による糸球体硬化から腎不全・透析へと至る患者数は増加の一途にある.血糖管理やアンジオテンシン系抑制薬による血圧管理および低蛋白食といった現行の治療法によっても,腎不全への進展を遅らせることは可能であるが,増大する腎不全患者を減少させることは不可能である.また,診断という観点からも,心血管イベントのマーカーとしてはすぐれた微量アルブミン尿が,糸球体硬化を反映しないという問題をかかえている.糖尿病性腎症では,尿中IV型コラーゲンが早期腎症のマーカーとして用いられているように,IV型コラーゲンの産生増加が腎症の発症・進展の中心的な変化である.われわれは糖尿病性腎症におけるIV型コラーゲンの産生機序として,転写因子Smad1が直接制御すること,さらには,Smad1は他の細胞外基質タンパク産生や細胞の形質変化なども制御しており,糸球体硬化症の発症・進展において中心的な役割を果たしていることを証明してきた.今後,Smad1とその関連分子による病態のさらなる解明により,腎症のバイオマーカーおよび分子標的薬に期待が持たれている.
  • 宮川 潤一郎, 難波 光義
    2008 年 97 巻 4 号 p. 827-835
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    インクレチンと総称される消化管由来のホルモンの1つ,GLP-1(glucagon-like peptide-1)は,新たな糖尿病治療薬としてその構造類似体ないし改変体(GLP-1アナログ)の開発が進められ,臨床応用の段階に達している.現在,実用化ないし最も開発が進んでいるGLP-1アナログの治験成績では,1日2回あるいは1日1回の皮下注射により,2型糖尿病患者の空腹時血糖を低下させるとともに食後の血糖上昇を抑制して血糖コントロールを改善する.GLP-1アナログには,体重減少作用の他,インスリン抵抗性改善作用も認められ,β細胞のアポトーシス抑制および増殖促進,分化・新生作用を有する可能性もある.GLP-1アナログの適応については,経口糖尿病薬でなお血糖コントロールが不十分でインスリン治療が望ましい,といった患者が対象になると考えられる.GLP-1の臨床応用実現により糖尿病治療は新時代を迎えると言っても過言ではないだろう.
  • 大石 和徳
    2008 年 97 巻 4 号 p. 836-841
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    肺炎球菌ワクチン接種の成人における市中肺炎の重症化阻止効果が明らかになり,本邦における高齢者における接種率も徐々に増加してきている.肺炎球菌ワクチンの再接種を希望する患者が増加する状況下で,本邦ではその再接種が未だ禁忌となっている事が問題視されている.現在までに,国内関連4学会から厚生労働省に対して再接種の要望書が提出されている.高齢者や慢性呼吸器疾患においては,肺炎球菌ワクチンの初回接種後の血清中特異IgG濃度は免疫原性の低い血清型によっては5年以内に接種前値以下に低下することから,再接種の承認が必要である.再接種による血清中特異IgG抗体応答は初回時のそれより低下するものの,副反応も重篤なものは無く安全である.本邦では通常65歳以上の高齢者に初回接種されることから,当面は初回接種の5年後の再接種の承認に向けて国民の意識を高めていく必要がある.
専門医部会
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シリーズ:考えてみよう (臨床クイズ) 問題
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