症例は83歳,男性.COPD急性増悪で入院.副腎皮質ステロイドの全身投与により呼吸状態は改善し退院.経過は良好であったが,悪心,腹部膨満が出現し,食事摂取不能となり再入院となった.上部消化管内視鏡検査で,十二指腸に多発性のビランを認め,糞便直接検鏡にて糞線虫の幼虫が多数認められた.腸管糞線虫症と診断され,抗寄生虫薬の投与により消化器症状の改善を認めた.糞線虫症は熱帯,亜熱帯に広く認められる腸管寄生虫感染症である.本症例は,副腎皮質ステロイド薬投与後に顕在化したと考えられた.糞線虫症は日和見感染症であり,免疫抑制薬等を使用する場合は,糞線虫症も認識して治療に当たる必要がある.
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