日本内科学会雑誌
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98 巻, 5 号
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特集●ネフローゼ症候群:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.基礎と病態
  • 御手洗 哲也
    2009 年 98 巻 5 号 p. 984-992
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    ネフローゼ症候群は高度の蛋白尿により低蛋白血症を呈する疾患群で,どの年齢にも発症し,年齢により原因疾患の頻度が異なる.高度蛋白尿の成因には,体液性因子の存在,糸球体上皮細胞のスリット膜関連分子と細胞骨格の変化,尿細管上皮細胞での蛋白処理過程の変化などが関連する.アルブミンは血漿膠質浸透圧を維持するばかりでなく,運搬蛋白としての役割もあり,アルブミン低下による様々な二次的病態に注意する必要がある.
  • 鶴田 悠木, 新田 孝作
    2009 年 98 巻 5 号 p. 993-997
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    ネフローゼ症候群の合併症には,その病態に関連したものと治療に伴うものがある.前者としては,浮腫,高脂血症,急性腎不全および凝固異常がある.後者では,免疫抑制薬の副作用が問題になる.ネフローゼ症候群の原疾患の治療が優先されるが,食事内容の変更や利尿薬による浮腫の軽減,高脂血症の持続による糸球体硬化の進行抑制のための薬物療法やアファレーシス療法が施行される.また,高度の蛋白尿に伴って急性腎不全を併発することもあり,一時的な透析療法を行う場合もある.さらに,凝固能亢進と線溶低下により血栓症の合併が多く,ヘパリンやワーファリンによる抗凝固療法が必要になる.一方,免疫抑制療法の合併症として,易感染性は重要な位置を占める.尿中喪失や産生低下による血清IgGの低下を認めることが多く,日和見感染対策が重要である.副腎皮質ステロイド薬を用いる場合は,骨粗鬆症対策が必要である.
  • 飯島 一誠
    2009 年 98 巻 5 号 p. 998-1004
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    小児のネフローゼ症候群は,成人のネフローゼ症候群とは,その組織型や治療に対する反応性が異なる.本稿では,小児期ネフローゼ症候群の臨床的特徴,日本小児腎臓病学会による薬物療法ガイドラインが推奨する標準治療とその問題点を概説し,最近,筆者らが行っている小児期発症難治性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ開発研究を紹介する.
  • 家原 典之
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1005-1009
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    高齢者は加齢による影響を受け,多くの臓器において予備力・調節力が低下している.特に腎機能は成人の50%にまで低下している場合がある.さらに多種多数の合併症が存在する.これらを評価した上で治療戦略を立てるべきである.また,高齢者には膜性腎症が多いので,原因疾患の診断・治療が大切である.治療法はエビデンスにもとづいて行われるべきである.しかし感染症等の生命に関わる問題がある場合はそちらが優先される.
II.一次性ネフローゼ症候群の病態・診断・治療
  • 西 慎一
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1010-1015
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    微小変化型ネフローゼ症候群は,原発性糸球体腎炎の一つである.好発年齢は小児と若年者であるが,高齢者においても発症が認められる.ステロイド薬に対する初期反応性は良好である.しかし,再発率が高い点が問題であり,頻回再発型,ステロイド依存性の症例もある.通常,腎機能低下はみられないが,低蛋白血症が顕著であると循環血漿量が低下しているため急性腎不全を呈する場合もある.
  • 湯澤 由紀夫
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1016-1022
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    近年,糸球体上皮細胞及びスリット膜関連蛋白の構造・機能に関する研究が飛躍的に進み,巣状糸球体硬化症の原因・発症機構に関する理解が急速に深まってきている.さらに,これらの研究をとおして,糸球体上皮細胞に対するより選択的な標的治療の開発の可能性も高まってきた.これら基礎研究の急速な発展の一方で,臨床的には特発性巣状糸球体硬化症によるネフローゼ症候群は,難治性・ステロイド抵抗性を示すことが多く,末期腎不全に至る率が非常に高い.また,現在でも巣状糸球体硬化症を含む難治性ネフローゼ症候群に対する治療法はまだ確立されていない.
    このような状況の中で,厚生労働省特定疾患「進行腎障害に関する調査研究班」は富野班から松尾班に引き継がれ,「難治性ネフローゼ症候群」分科会が日本人にあった新たな診療指針の作成に向けて精力的に活動している.特に日本腎臓学会の腎臓病総合レジストリーシステム(JRBR=Japan Renal Biopsy Registry,JKDR=Japan Kidney Disease Registry)と連携することにより,日本腎臓学会の協力のもとに調査研究が推進され,その成果が大きく期待されている.
  • 山縣 邦弘, 臼井 丈一, 平山 浩一, 小林 正貴, 鈴木 理志
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1023-1029
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    膜性腎症は中年以降に発症する一次性ネフローゼ症候群の原疾患の中では最も多い.発症は緩除であり,下腿その他の浮腫の出現を契機に診断されることが多い.一次性(特発性)膜性腎症の発症機構は未だ明確にはなっていない.我が国の膜性腎症は比較的予後が良好とされてきたが,ネフローゼが長期に持続する症例は,腎機能低下のリスクがあり,ステロイド薬を中心とした免疫抑制療法を施行することにより腎予後の改善が得られる.
  • 山辺 英彰
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1030-1035
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    膜性増殖性糸球体腎炎はメサンギウム細胞の増殖と糸球体毛細血管壁の肥厚を認め,低補体血症を呈するという特徴を有し,電顕所見によりI型とII型に分けられる.近年,原因不明とされてきた膜性増殖性腎炎I型の一部にC型肝炎ウィルスやクリオグロブリンが関与しており,インターフェロンが有効であることが明らかとなった.膜性増殖性腎炎II型は稀な疾患でC3 nephritic factorの他,先天的factor Hの欠損や自己抗体の関与が明らかとなっている.
  • 堀野 太郎, 寺田 典生
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1036-1041
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    管内増殖性糸球体腎炎,メサンギウム増殖性腎炎,および半月体形成性(壊死性糸球体)腎炎は原則的に基底膜の肥厚を伴わない増殖性糸球体腎炎とされ増殖する細胞の種類,増殖する部位により分類される.主に血尿が主訴となることが多くネフローゼ症候群を呈することは比較的少ないが,ネフローゼ症候群を認める症例は急速に進行し腎不全となるため,迅速な対応が必要である.ここではこれらの疾患の病態,診断,治療について概説する.
III.二次性ネフローゼ症候群の病態
  • 今井 裕一, 北川 渡
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1042-1047
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    ネフローゼ症候群は腎生検患者の約20%を占めている.約15%が一次性腎疾患であり,約5%が全身性疾患に伴う二次性ネフローゼ症候群である.頻度の高い疾患としてループス腎炎,紫斑病性腎炎,糖尿病性腎症があり,まれなものとしてアミロイド腎症,二次性膜性腎症,パラプロテイン腎症がある.ループス腎炎は,若年女性が主体である.病理学的にIV型(びまん性病変)V型(膜型)でネフローゼ症候群を呈しやすい.紫斑病性腎炎は,IgA免疫系が関与し約10%でネフローゼ症候群を呈する.小児に多い疾患であるが中高年でも発症することがある.その際には顕微鏡的多発性血管炎との鑑別が必要になる.二次性膜性腎症は,悪性腫瘍,自己免疫疾患,薬剤性,肝炎ウイルスに関連して生じる.薬剤性の多くは関節リウマチの治療薬としての金製剤あるいはブシラミンで生じ,投薬の中止によって軽快することが多い.その他の膜性腎症では原疾患の治療が優先される.パラプロテイン腎症として,軽鎖沈着症,重鎖沈着症があり,多発性骨髄腫に準じた治療法が有効な場合がある.
  • 安部 秀斉
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1048-1054
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者がネフローゼ症候群を呈するようになると,すでに腎機能低下が進行していることが多く,通常は,末期腎不全へ急速に進行する.したがって,microangiopathyとしての腎症だけでなく,併存するmacroangiopathyの管理が欠かせず,病態を十分に把握したのち,適切な治療が必要である.近年,集約的な治療によりネフローゼ症候群であっても,その進展を抑制する可能性が見出されつつある.
  • 高橋 直生, 木村 秀樹, 糟野 健司, 三上 大輔, 内木 宏延, 吉田 治義
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1055-1061
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    ネフローゼ症候群(Nephrotic Syndrome:NS)は,高度の蛋白尿,低蛋白血症,浮腫,高脂血症を主徴とする症候群である.様々な原発性のNS以外に,二次性のNSがあり,その代表として,全身性エリテマトーデスや糖尿病によるNSがある.さらに,その他の二次性NSとして,薬剤,アミロイドーシス,感染症,妊娠,喫煙・高血圧に伴う腎障害などによるものがある.本稿では,これらのその他の二次性NSに分類される各疾患について,その病態と組織所見について,アミロイドーシスについては我々の研究を交えて述べる.
IV.最近の話題
  • 横山 仁, 藤本 圭司, 奥山 宏
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1062-1068
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    一次性ネフローゼ症候群に対する免疫抑制療法は,副腎皮質ステロイドを中心に行われているが,ステロイド抵抗性あるいは依存例に対して免疫抑制薬が用いられる.とくに,カルシニューリン阻害薬(シクロスポリンならびにタクロリムス)が,応用されるようになり寛解導入・維持成績が向上した.さらに二次性を含めた免疫複合体あるいはクリオグロブリンによるネフローゼ症候群に対する静注免疫グロブリンあるいは抗CD20抗体の応用が進められている.
  • 武曾 恵理
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1069-1075
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    難治性ネフローゼ症候群に伴う高コレステロール血症を,脂質の腎障害性を考慮して,LDLアフェレシス療法で急速に是正することで,腎障害のみならず,ネフローゼの寛解導入も早期に得られることが,わが国から発信されている.酸化LDL除去によるマクロファージの機能回復に加え,薬剤感受性の回復などの可能性がある.エビデンスの確立を目的として,現在全国で前向きコホート調査(POLARIS)を実施中である.
  • 塚口 裕康
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1076-1083
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    ネフローゼ症候群は,大量の蛋白尿を主徴とする疾患で,腎糸球体濾過障壁の破綻が原因である.ネフローゼ症候群の大部分は家族歴のはっきりしない弧発例であるが,一部に家族性を示す例がある.近年,世界的に家族性ネフローゼ症候群の疾患遺伝子探索が盛んに行われ,分子レベルでの濾過膜の機能制御とその破綻の機序があきらかになりつつある.特に濾過障壁の中心をなすスリット膜の構築に関する知識は,飛躍的な進歩を遂げている.分子機序に基づくネフローゼ症候群の病態理解を深めることは,適切な治療や予後予測を行う上で大切である.
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 片桐 秀樹
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1127-1133
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    個体全身の代謝を調節するには,臓器間の代謝情報のやり取りが必須であり,肥満や糖尿病は,この臓器間連絡が破綻した状態とも言える.最近我々は,自律神経系,特に求心路がこの臓器間の代謝情報連絡に重要な役割を果たしていることを見出した.まず,脂肪組織からの求心性神経シグナルが,食欲を調節していること,次に,肝からの神経ネットワークが,過栄養時に基礎代謝を亢進させ,肥満を予防する機能を果たしていること,さらに,肝からの別の神経ネットワークが,膵β細胞増殖を惹起することを明らかにした.これらは食欲,エネルギー消費,インスリン分泌といった,エネルギー代謝・糖代謝の中心を制御するものであり,この機構に介入することにより,体重調節や膵β細胞再生といった肥満や糖尿病の治療につながる成果を得ている.またこのことは,末梢組織での代謝状況を,脳が随時把握し,全身の代謝を統御しているという新しい概念を示すものである.
  • 桑野 和善, 皆川 俊介, 荒屋 潤
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1134-1139
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    特発性間質性肺炎をはじめとして,膠原病に伴う間質性肺炎,過敏性肺臓炎,薬剤性肺炎,放射性肺臓炎,acute respiratory distress syndrome(ARDS)など実に多くの疾患が,広い意味での間質性肺炎である.胞隔炎が線維化に至る過程は,アポトーシスを主体とする肺上皮細胞の損傷に始まる.その後,正常な修復が達成されるか,非可逆的な線維化に至るか,その過程は,上皮細胞,線維芽細胞,血管内皮細胞,炎症細胞などの活性化と相互作用,これらの細胞から産生される多くの因子,サイトカイン,凝固線溶因子,酸化ストレスなどの複雑なネットワークの結果である.さらに疾患の表現型は,遺伝的要因や環境因子によって影響を受ける.間質性肺炎の予後を左右するのは線維化の程度である.肺線維症においては,肺上皮細胞や血管内皮細胞損傷,炎症,修復過程における細胞特異的な治療法の開発が待たれる.
  • 広畑 俊成
    2009 年 98 巻 5 号 p. 1140-1146
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    Behçet病は再発性口腔内アフタ性潰瘍,皮膚症状,外陰部潰瘍,眼病変を4主症状とする原因不明の炎症疾患である.特殊病型として,腸管の潰瘍性病変を示す腸管Behçet,大小の動静脈の病変をきたす血管Behçet,脳幹・小脳・大脳白質の病変を主体とする神経Behçetがあり,これらは患者の生命予後を左右することから,眼病変とともに極めて重要なウェートを占める.近年,新しい治療として難治性眼病変に対する抗TNF-α抗体(インフリキシマブ)の有用性が証明され,本邦で世界に先駆けて保険で承認された.インフリキシマブは,難治性である神経Behçetや腸管Behçetなどの特殊病型にも応用が期待される.
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