日本内科学会雑誌
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98 巻, 6 号
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特集●虚血性脳卒中:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.病態
  • 木村 和美
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1224-1230
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    脳梗塞の治療を行う上で,各々の患者の脳梗塞発症の起序と臨床病型を把握した上で治療を行うことが大切である.脳梗塞超急性期の治療のターゲットは,ペナンブラである.臨床病型は,ラクナ梗塞,アテローム血栓性梗塞,心原性脳塞栓症,その他として,奇異性塞栓症,大動脈原性塞栓症,脳動脈解離などがあげられる.脳梗塞患者は,冠動脈,腎動脈,下肢動脈などに狭窄性病変の合併が多くみられ,脳梗塞を全身血管病と考え治療することも大切である.
II.診断
  • 平野 照之
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1231-1239
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    虚血性脳卒中におけるCT・MRI検査の役割はrt-PAの認可以降,大きく変貌している.出血の除外と虚血組織障害の広がりから治療適応を判断する.CTのASPECTSで7点以上がrt-PA適応の目安となる.MRI拡散強調画像は優れた虚血の検出力を有するが,CTとの違いを理解して判読する必要がある.MR angiography,mismatch,T2*などの情報を今後どう活かすかが課題である.
  • 山上 宏
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1240-1248
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    虚血性脳血管障害の治療では,臨床病型や発症機序を迅速に判断して適切な治療法を決定する必要がある.超音波検査は,低侵襲でリアルタイムに繰り返し施行でき,多くの情報が得られる点できわめて有用な検査法である.脳血管障害における超音波検査は,主に頸動脈超音波,経頭蓋超音波,心臓超音波が用いられており,診断・治療・再発予防の全ての点で必須といえる.
  • 長尾 毅彦, 片山 泰朗, 田久保 秀樹
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1249-1254
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞とならんで,血栓症の代表的疾患である虚血性脳卒中(脳梗塞)はさまざまな病態の血栓症の集合体である.心筋梗塞に近い病態と考えられるアテローム血栓性脳梗塞と心原性脳塞栓症では背景にある血栓止血学的な異常は大きく異なっている.脳梗塞において形成される血栓は,ずり応力の高い環境で形成される白色血栓と,低い環境で形成される赤色血栓のさまざまな度合いで混合されたものであり,各種凝血学的検査にてその差異は分析可能である.また,これら凝血学的診断方法は治療効果判定や血栓症のリスク評価などにも応用可能である.
  • 城倉 健
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1255-1262
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    脳卒中によるめまいを鑑別するためには,まずめまい以外の神経症候(麻痺,感覚障害,構音障害,眼球運動障害,失調)を探す.これで脳幹と小脳上部の脳卒中がスクリーニングできてしまう.めまい以外の神経症候がない,あるいは良くわからない場合には,続いて頻度の圧倒的に多い末梢前庭障害の診断を,先に試みる.頭位・頭位変換眼振検査を行い,懸垂頭位での回旋性眼振,または右下および左下頭位で方向交代性眼振がみられれば良性発作性頭位めまい症,頭位によらない一方向性水平性眼振がみられれば前庭神経炎(末梢前庭障害)と診断できる.これでも診断がつかないときには,最後に小脳下部の脳卒中の検索として,起立・歩行障害の有無を調べる.
III.治療
  • 豊田 一則
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1263-1269
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    組織型プラスミノゲン・アクティベータ(tPA)の静注療法は,発症3時間以内の虚血性脳卒中患者に対する標準治療として普及している.国内外の成績をおおまかにまとめると,この治療後の症候性頭蓋内出血は1割未満で,3カ月後に約4割の患者が完全自立している一方,1~2割が死の転帰をとる.治療成績に影響を及ぼす要因として,初期重症度や血管閉塞部位,早期虚血性変化の広がりなどが挙げられる.病院前救護や病院内の救急診療体制の整備が,治療成績の向上のために不可欠である.
  • 今井 啓輔, 濱中 正嗣
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1270-1277
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    カテーテルを用いた脳血管内治療の一つとして,急性期脳梗塞に対する緊急脳血管内血行再建術(ENER)がある.ENERは,局所血栓溶解術,機械的血栓破砕術,経皮的脳血管形成術,機械的血栓回収術,頭蓋内・頭蓋外ステント留置術などの手技で構成される.適切な症例選択,堅実な手技,厳重な周術期管理,施行医の情熱により,ENERは,rt-PA静注療法とともに急性期脳梗塞の血行再建術の両翼を担うものとなる.
  • 細見 直永, 河野 雅和
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1278-1284
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    急性期脳梗塞の抗血栓療法は急性期の脳梗塞再発を抑制し,これにより患者の予後の改善を目的としている.しかしながら,急性期脳梗塞における抗血栓療法には日本と韓国のみで適応のとれている治療法が多く,エビデンスとして国際的に確立しているものはアスピリンのみである.急性期心原性脳塞栓の抗血栓療法には,現状で明らかなエビデンスを有する薬剤は認めない.アテローム血栓性脳梗塞には,アスピリン,アルガトロバンとオザグレルナトリウムが,ラクナ梗塞にはアスピリンとオザグレルナトリウムが,抗血栓療法として効果が示されている.
  • 矢坂 正弘
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1285-1293
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    非弁膜性心房細動を塞栓源とする心原性脳塞栓症における慢性期の再発予防にワルファリン療法を70歳未満ではPT-INR 2.0~3.0を,70歳以上では1.6~2.6を目標として行う.非心原性脳梗塞慢性期には徹底的な動脈硬化危険因子管理と抗血小板薬療法を行う.抜歯や白内障手術時には抗血栓薬を中止しないのが原則であるが,周術期に中止せざるを得ない観血的処置に対して血栓・塞栓症のリスクが高い場合は入院の上ヘパリンなどの代替療法を考慮する.
  • 井上 敬
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1294-1298
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    虚血性脳卒中に対しては急性期には内科的治療が優先される.2次予防としての外科的治療は脳主幹動脈閉塞性病変に関しては頭蓋外内バイパス術が,頸部狭窄性病変に対しては頸動脈内膜剥離術の適応が検討される.どちらも,適応症例を慎重に選択すれば,内科的治療に比べ,脳卒中再発をより低減させる可能性がある.本稿では,外科的治療に関して概説する.
  • 中馬 孝容
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1299-1304
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    脳卒中のリハビリテーション(リハ)は急性期から取り組むことが重要である.急性期リハでは,血圧・心電図のモニター管理が望ましく,Japan Coma Scale 1桁で,運動の禁忌となる心疾患や全身合併症がないことを確認した上で開始する.その後,集中的なリハによる効果が期待できる場合は回復期リハを行う.回復期リハを終了後,地域リハ,訪問リハ,必要に応じて外来リハを行う.急性期から維持期まで一貫した取り組みが重要である.
  • 卜蔵 浩和
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1305-1310
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    高血圧は脳卒中の最大の危険因子であり,再発予防においては最も重要である.糖尿病は脳梗塞の危険因子であるが,再発予防には血糖コントロールのみでなく,血圧の管理なども大切である.最近,心血管の危険因子を多く持つ患者に対して,スタチンの脳梗塞発症予防効果が多くの大規模臨床試験で示されており,再発予防薬としても注目されている.その他,脳梗塞の重要な危険因子について概説する.
IV.最近の話題
  • 後藤 淳
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1311-1318
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    脳動脈解離は,脳梗塞や解離性動脈瘤破綻によるくも膜下出血など,虚血性・出血性脳卒中のいずれの原因にもなる注意すべき脳血管障害である.画像診断の進歩や認識の高まりから診断される機会が増えている.近年,本邦では複数の多施設共同研究で,頭蓋内椎骨動脈解離が多い実態が明らかにされつつある.頭痛や頸部痛を伴う虚血性脳卒中では必ず本疾患を疑い,慎重な問診,診察とともに血管壁を経時的に評価する画像検査が重要である.
  • 佐口 隆之, 古幡 博, 石橋 敏寛, 村山 雄一, 阿部 俊昭
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1319-1324
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    超急性期脳梗塞に対する治療の新しい可能性として組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)の投与と超音波併用が注目されつつある.中大脳動脈の再開通の有無を診断用経頭蓋ドプラーでモニタリングすると再開通が早まることが報告され,経頭蓋超音波は血栓溶解効果を高めるが,一方では脳出血を助長するリスクも潜んでいる.経頭蓋超音波を安全かつ有効に適用するための研究および開発の現状と将来展望について検討した.
  • 田口 明彦
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1325-1330
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    中枢神経系においても神経幹細胞が存在し,中枢神経障害後の修復に神経幹細胞が寄与していることが明らかにされつつある.これらの知見に基づき,中枢神経系の再生能力を用いた治療法の開発が進められてきたが,本稿では我々が推進している血管系の再生を起点とした神経再生・神経機能回復促進に向けた取り組みや,国内外における脳梗塞患者に対する細胞治療について概説するとともに,その将来展望に関して概説する.
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 並木 千尋, 福山 秀直
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1378-1384
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    軽度認知機能障害は,認知症には至らないが,記憶を中心とした何らかの認知機能障害を有する一群で,健常高齢者に比較して高率に認知症を発症するとされている.今後,認知症の根治療法が開発されてくれば,この時期での介入が重要となると予想される.軽度認知機能障害におけるAlzheimer型認知症への進展の予測には,機能画像が有用であることが知られ,本邦では単光子放射線コンピューター断層撮像(SPECT)及び神経心理学的テストの有用性を検討した他施設共同追跡調査,J-COSMICが進行中である.本稿では,J-COSMICの中間解析経過の一部を紹介するとともに,軽度認知機能障害を対象とした,その他の他施設共同追跡研究についても簡単に紹介する.
  • 有賀 悦子
    2009 年 98 巻 6 号 p. 1385-1393
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    がん疼痛対策は,がん患者のquality of life(QOL)の維持には重要なケアである.国内外でもがん患者の緩和ケア(palliative care)のアプローチとして,症状緩和が適切に行われることをうたっており,社会からも医療者の基本的なスキルの一つとして求められている.ここでは,診療報酬にも繋がるWHO三段階除痛ラダーに基づいたがん疼痛への段階的な治療方法を解説する.まず,全経過で必要となる疼痛評価,非ステロイド性消炎鎮痛薬を開始後の残存する疼痛に対し,オピオイドの併用開始と副作用対策の方法を述べる.さらに,除痛するまでのタイトレーション方法,長期間安定した除痛を図るためのオピオイドローテーション,加えてオピオイドが効き辛い疼痛に対する鎮痛補助薬の投与について触れていきたい.
専門医部会
診療指針と活用の実際
近畿支部教育セミナーまとめ
シリーズ:一目瞭然! 目で見る症例
シリーズ:考えてみよう (臨床クイズ) 問題
プライマリ・ケアにおける内科診療
総合内科専門医の育成のためにII
シリーズ:指導医のために
シリーズ:世界の医療
シリーズ:考えてみよう (臨床クイズ) 解答
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