日本内科学会雑誌
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98 巻, 8 号
選択された号の論文の38件中1~38を表示しています
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特集●腫瘍内科の現状と展開
Editorial
トピックス
I.がん薬物療法の展開
  • 佐々木 康綱
    2009 年 98 巻 8 号 p. 1841-1845
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    抗悪性腫瘍薬の臨床薬理学研究の主眼は,致死的有害事象を回避し,効果が期待できる患者に適切な薬剤を適切な用量で投与することにある.近年従来の薬物動態-薬力の関係を解析することに加えて,一部の薬剤では,遺伝子情報により薬物動態や薬力を予測することが可能となった.このような薬物投与によってもたらされる効果や有害反応を予測する方法としてのバイオマーカーの意義がますます重要になる.
  • 南 博信
    2009 年 98 巻 8 号 p. 1846-1853
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    薬物動態や薬物反応に関与する分子の遺伝的多型は薬物の効果,毒性の個体差の原因となる.治療域が狭い抗悪性腫瘍薬の場合,多型の情報に基づいた治療の個別化が有用である場合もある.イリノテカン塩酸塩による治療において重篤な毒性をさけるためには,活性代謝物であるSN-38を解毒するUGT1A1の遺伝的多型に応じた用量設定が必要である.また最近臨床に導入された抗体医薬ではADCCに関与するFcγ受容体の多型が効果を規定することが示された.今後,がん薬物療法では遺伝子多型に基づいた個別化治療が重要になる.
  • 森田 智視
    2009 年 98 巻 8 号 p. 1854-1859
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    臨床試験は,第I相,第II相,第III相の3つの相に分けて段階的に実施されてきた.最近では,細胞ターゲット薬剤など新規の治療法開発コンセプトに基づき開発がすすめられるケースが増えてきている.治療法の開発コンセプトの証明には,第I相,第II相の段階が重要であるため,本稿では,第I相,第II相に焦点を絞り,統計的観点からまず基本的な試験デザインをまとめ,最近用いられ始めた新しい試験デザインを織り交ぜながら紹介する.それら新しい試験デザインが"Bayes統計"という考え方をベースにしているため,最後にBayes統計アプローチについて簡潔に説明する.
  • 西條 康夫
    2009 年 98 巻 8 号 p. 1860-1865
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    呼吸器癌のほとんどは肺癌と悪性中皮腫である.肺癌の大部分を占める非小細胞肺癌の標準的薬物療法は,プラチナ製剤と第3世代抗がん薬との併用である.複数のプラチナベースのレジメンが開発されているが,生存期間に差はなく,個々の症例に応じたレジメンを選択すべきである.分子標的治療薬であるEGFR-TKIは,奏効率とEGFR遺伝子変異が相関するとする数多くの報告がなされており,遺伝子診断後にEGFR-TKIの適応を決める方向へとなってきている.悪性中皮腫の標準的薬物療法はシスプラチン+ペメトレキセートである.乳癌の薬物療法は(1)術前治療(2)術後治療(3)転移・再発治療に分類される.治療法には,ホルモン治療,化学療法,分子標的治療があり組織学的検索後に治療法が選択される.化学療法はアントラサイクリンとタキサン,ホルモン薬はタモキシフェン,アロマターゼ阻害薬そしてLHRHアナログ,分子標的治療としてトラスツマブが使用される.特に,トラスツマブの登場により治療成績は飛躍的に向上している.
  • 坂下 博之, 白尾 国昭
    2009 年 98 巻 8 号 p. 1866-1873
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    消化器癌の本邦における標準治療は,欧米の標準治療と必ずしも一致していないところがあるものの,近年徐々に国際レベルでの標準化がはかられつつある.切除不能・再発症例での本邦での標準治療は食道癌では5-FU+CDDP,胃癌はS-1+CDDP,大腸癌はFOLFOX+bevacizumab or FOLFIRI+bevacizumabとされている.その他食道癌では5-FU+CDDPの術前化学療法,胃癌では術後化学療法としてS-1,大腸癌の術後では5-FU/LV,UFT/LV,もしくはcapecitabinが標準治療として行われている.最近では分子標的薬が用いられるようになり,cetuximabをはじめ個別化医療への方向性も含めてその効果が期待されている.
  • 吉岡 孝志
    2009 年 98 巻 8 号 p. 1874-1879
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    肝癌も腎癌も,従来薬物療法は無効であった.しかし,近年の分子標的治療薬の導入により治療法が大きく変わろうとしている.進行肝癌でsorafenib(ソラフェニブ)により初めて生存期間の延長が見られた.腎癌ではsunitinib(スニチニブ)をはじめとする分子標的薬剤とサイトカイン療法で治療のアルゴリズムが提唱されている.肝癌・腎癌とも分子標的薬を中心に更に標準的薬物療法が探索されていくと考えられる.
  • 満間 綾子, 直江 知樹
    2009 年 98 巻 8 号 p. 1880-1886
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    血液腫瘍における薬物療法は,近年,分子標的治療をはじめとする新規抗がん薬の開発により,従来にない治療成績をもたらしたり,新たな治療手段として生存率の向上に貢献したりすることで大きな進歩を遂げている.しかしながら全身疾患である血液腫瘍では様々な合併症やPS(performance status),臓器機能の低下した高齢患者に対する対応など担当医が直面する問題は多岐にわたる.本稿では内科医が日常臨床で遭遇する可能性の高い代表的な血液腫瘍について概説する.
II.分子標的薬の開発と臨床
III.腫瘍内科医の育成と役割
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 光武 範吏, 山下 俊一
    2009 年 98 巻 8 号 p. 1999-2005
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    甲状腺癌の大半は予後良好な乳頭癌である.しかし,低分化,未分化タイプの予後不良な進行癌が存在し,新たな治療法が模索されている.最近の研究の進歩により,甲状腺癌の病因と考えられる遺伝子異常の種類とその頻度,そして各機能が明らかにされつつある.すなわち,病理組織学的分類による乳頭癌,濾胞癌,未分化癌そして髄様癌に特徴的な遺伝子異常の存在が明らかにされ,各遺伝子異常を標的とした分子標的治療の新知見が積み重ねられ,欧米では具体的な臨床応用が展開されている.また,甲状腺癌幹細胞様細胞の存在も治療戦略上重要な標的となりうる.しかし,本邦では甲状腺癌治療に関する多施設共同調査研究ネットワークの構築が遅れ,分子標的治療の臨床治験やその統計疫学的な有効性の評価体制も未整備である.本稿は,甲状腺癌に代表的な遺伝子異常とその役割を概説し,第三の内科的治療としての分子標的治療の展望とその有効性について紹介する.
  • 安東 由喜雄
    2009 年 98 巻 8 号 p. 2006-2012
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/08/02
    ジャーナル フリー
    トランスサイレチン(transthyretin:TTR)は,レチノール結合蛋白質,およびサイロキシンの担体となることからこの名が付いている.血中に約20~40mg/dl存在する半減期1.9日の血漿蛋白質のひとつで四量体として機能する.本蛋白質は髄液や眼房水にも他の蛋白質と比較して高濃度に存在し,Alzheimer病,うつ病,鉛中毒などの中枢神経系の疾患や,眼のビタミンAの代謝動態にTTR代謝が重要な役割を及ぼしていると考えられている.トリプトファンを多く含む蛋白質であることから,血中TTR濃度は栄養指標として重要で,栄養サポートチームの活動にも活用されている.本蛋白質は反急性期蛋白質で,炎症や感染により,血中濃度が低下するため,さまざまな疾患のプロテインチップの網羅的解析などで病因候補蛋白質としてピックアップされるがその評価は難しい側面もある.TTRはβシート豊富な構造をもつことから遺伝的に変異したTTRは家族性アミロイドポリニューロパチー(familial amyloidotic polyneuropathy:FAP)の原因蛋白質であることも知られているが,最近正常のTTRも老人性アミロイドーシスの原因蛋白質となることが注目されている.血中の異型TTRは主として肝臓で産生されることから,FAP患者に対して肝移植が行われ,効果を挙げている.
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診療指針と活用の実際
東海支部教育セミナー(第6回)まとめ
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