日本内科学会雑誌
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99 巻, 10 号
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特集●関節炎の鑑別:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
  • 竹内 勤
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2392-2400
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の診断,関節炎評価,関節破壊評価,治療戦略,治療法,はすべてにわたって著しい進歩を遂げ,数年前の知識では通用しなくなるほどに急激に変貌している.それは,メトトレキサートや炎症性サイトカインを標的とする生物学的製剤などの,治療法の進歩に負うところが大きい.2010年,懸案であった関節リウマチの1987年RA分類基準が改訂され,各国での検証作業が始まった.これは,関節破壊を防ぐためにより早期から診断を行い,MTXを中心とする薬物療法を速やかに始めようという考えに基づくものである.本稿では,これら激変するRA診療のトピックスを中心に概説する.
  • 加藤 将, 渥美 達也, 小池 隆夫
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2401-2406
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデスの治療は従来からステロイド薬による非特異的な治療が中心であったが,近年,免疫抑制薬や生物学的製剤を用い,効果的で副作用の少ない治療が試みられている.全身性エリテマトーデスの関節炎の特徴は「非破壊性関節炎」と表現され,関節リウマチの「破壊性関節炎」とは多くの点で対照的である.このような対照的な病態を理解することは関節炎全般の診療をより深いものにすると考えられる.
  • 片山 昌紀, 三森 経世
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2407-2413
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    全身性硬化症(強皮症),混合性結合組織病は,いずれも関節痛/関節炎をきたすリウマチ・膠原病性疾患である.両疾患とも関節所見以外に特徴的な自己抗体や臨床症状を呈するため,全身的な診察と血液その他の検査により関節リウマチとの鑑別が可能であるが,抗環状シトルリン化ペプチド抗体(anti-cyclic citrullinated peptide antibody:抗CCP抗体)陽性例やX線上の骨びらんの存在などの所見を認める症例では,関節リウマチの合併を疑わせる.
  • 山本 一彦
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2414-2418
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    多発性筋炎と皮膚筋炎は骨格筋の炎症と変性による筋力低下を主体とする全身性自己免疫疾患であり,肺,消化管,心臓などの障害とともに,関節炎を呈すことから,関節リウマチを含めた早期関節炎の鑑別診断において重要な疾患群である.特徴的な皮膚症状を呈する場合,皮膚筋炎という.筋症状のほとんどない皮膚筋炎で急速進行する間質性肺炎が多いなど,病態が異なる疾患の集合であり,それぞれに応じた適切な診療が重要である.
  • 尾崎 承一
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2419-2426
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    血管炎症候群は慢性・対称性の多関節炎をきたすことがあるため,関節炎を主訴とする患者においては鑑別を要する疾患群の一つである.その鑑別診断のためには,詳細な病歴聴取と,関節所見や関節外所見などの正確な身体所見の取得が重要である.補助手段として血清学的所見や画像所見が有用なこともある.血管炎症候群の標準治療法は,欧米のランダム化比較対照試験に基づいたエビデンスレベルの高いものが推奨されている.
  • 廣畑 俊成
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2427-2431
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    Behçet病の約60%に関節炎が合併する.一般に四肢の大小関節に非対称に急性ないし亜急性の単関節炎または多関節炎をきたすが,約1~2週で消失し,関節の変形・強直や骨破壊をきたすことは稀である.関節周囲の発赤や浮腫を伴うことが多く,痛風発作との鑑別が必要である.一部の患者は血清反応陰性脊椎関節症に見られるような筋腱付着部炎をきたすが,脊椎炎や仙腸関節炎の合併は稀である.関節炎発作予防にはコルヒチンの有効性が証明されている.
  • 住田 孝之
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2432-2438
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    Sjögren症候群(SS)は,ドライアイ,ドライマウス,関節炎を3主症状とする膠原病の一つである.SSに見られる関節炎は,症状が関節リウマチ(RA)と類似しているが,RAに特徴的な骨破壊による関節の変形をきたす事は無い.しかし,SSは高頻度にRAを合併するため,両疾患の鑑別は重要である.
  • 高崎 芳成
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2439-2446
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    血清反応陰性脊椎関節症にはリウマトイド因子陰性で,脊椎および仙腸関節炎を主体とする強直性脊椎炎,乾癬性関節炎,反応性関節炎,および腸炎性関節炎などが含まれている.これらの疾患はHLA-B27に相関することからHLA-B27関連脊椎関節症とも呼ばれている.その治療には生物学的製剤が有効であることが確認され,関節リウマチと同様に患者のquality of lifeを維持するための早期発見と治療が臨床医家に求められている.
  • 川合 眞一
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2447-2452
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    反応性関節炎(Reiter症候群を含む)は,一般には消化管または生殖器・尿路感染症に続いて発症する疼痛を特徴とした関節炎である.下肢関節が罹患しやすい急性非対称性関節炎だが,ときに慢性化する.約半数の患者がHLA-B27陽性であり,慢性化と重症度に関与している.リウマトイド因子陰性であり,関節外症状として粘膜皮膚病変(眼・手足・生殖器・爪)がある.治療は,関節リウマチに準じた薬物療法が行われる.
  • 西本 憲弘
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2453-2459
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis:JIA)は,小児期に発症する原因不明の慢性関節炎疾患の総称である.小児リウマチ性疾患の中では最も多い.初診で内科を受診する可能性があるばかりでなく,小児期に発症した患者が成人となり内科を受診することから,内科医にとっても重要な疾患である.近年,JIAの治療は飛躍的に進歩し,メトトレキサート少量パルス療法や生物学的製剤の導入により,予後が劇的に改善した.早期診断・早期治療により関節破壊による機能低下や著しい成長障害も防ぐことが可能である.
  • 長澤 浩平
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2460-2466
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    成人発症Still病(adult onset Still’s disease:AOSD)は,高熱,多関節痛,皮疹,高度の炎症反応,及び血清フェリチンの著増などを特徴とする全身の炎症性疾患で,病態形成にはIL-18を初めとする炎症性サイトカインが深く関わっている.治療はステロイドを中心とするが,重症例にはシクロスポリンやメトトレキサートなどの免疫抑制薬,さらには生物学的製剤の使用が必要となることがある.
  • 梅原 久範
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2467-2471
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    再発性多発性軟骨炎は,耳介,鼻,気道軟骨を破壊する慢性炎症性疾患である.機序は,軟骨組織に対する細胞性および液性免疫による自己免疫疾患と考えられている.特徴的な症状は外耳介の疼痛・発赤・腫脹で,軟骨のない耳朶は侵されない.随伴症状として,多発関節炎,気管支狭窄,鞍鼻,強膜炎・虹彩炎,大動脈閉鎖不全症などがある.患者の約30%がその他のリウマチ性疾患や血液疾患を合併している.
  • 杉山 英二
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2472-2477
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)は高齢者に好発し,体幹,四肢近位部のこわばりと耐え難い疼痛を特徴とする原因不明の炎症性疾患である.ステロイド薬が劇的に効果を示すことが特徴であり,基本的には予後良好な疾患であるが,ときに側頭動脈炎を合併する.また,診断に際しては悪性腫瘍,感染症を除外することが重要である.今後,人口の高齢化とともに増加する可能性があり,本疾患の疾患概念の普及が望まれる.
  • 谷口 敦夫, 山中 寿
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2478-2483
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    関節内,あるいは関節周囲に沈着した結晶により引き起こされる関節炎を結晶性関節炎という.一般臨床で重要なのは尿酸塩によって引き起こされる痛風関節炎とピロリン酸カルシウム(CPPD)によるCPPD結晶沈着症である.いずれも急性単関節炎を呈することが多く,化膿性関節炎,外傷,出血性関節炎,回帰性リウマチなどとの鑑別が必要になる場合がある.診断には関節液中の結晶の検出が重要である.
  • 佐々木 毅
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2484-2489
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    関節は無菌状態にある.感染性関節炎は関節の損傷あるいは血行性など関節外より病原微生物が直接的に関節部に進入して生じる.細菌性関節炎は急速に進行し関節破壊を生じるので早急な対応を必須とする.真菌,マイコプラズマ,ウイルス,スピロヘータ等いずれでも関節炎は起こしうる.特に老齢やステロイド,免疫抑制薬使用状態を含む免疫不全状態の例では本疾患に留意する必要がある.
  • 吉田 俊治
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2490-2496
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を呈する原因不明の多臓器疾患である.皮膚の遅延型過敏反応が抑制され,病変部位でのCD4/CD8比が増加する.血清ACE活性やガリウムの取り込みの増加などもみられる.関節炎で最も高頻度に見られる急性型は大関節に好発し軟部組織の腫脹がみられるが,骨変化はない.多くは自然治癒するが,潜行性発病例,特に多臓器に肺外病変のある例は慢性に進行し,副腎皮質ホルモンの治療は症状を改善させる.
  • 鈴木 康夫
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2497-2502
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    変形性関節症(osteoarthritis:OA)は関節軟骨の変性と破壊,関節辺縁や軟骨下骨の増殖性変化,関節内の限局的な炎症によって特徴付けられる疾患である.有症患者数は膝OAで800万人,腰椎OAで1,100万人と患者数は極めて多い.遺伝的要因による軟骨の脆弱性に加齢的な変化や反復する力学的な負荷が加わることで,軟骨マトリックスの破綻,軟骨細胞の形質変化,マトリックス分解酵素の産生,滑膜の炎症が起き,その結果,軟骨の変性・破壊と軟骨下骨の変化が生じるものと考えられている.OAは頻用あるいは荷重関節に好発するが,3カ所以上の関節が罹患する全身性OAは常染色体優性の遺伝形式をとり,手指の特徴的な骨腫脹による結節性変化を呈する.OAの初期軟骨変化を特殊なMRI法で評価する試みや関節マーカーの応用が始まっている.薬物療法の中心は非ステロイド性抗炎症薬による除痛とステロイドやヒアルロン酸の関節腔内注射である.
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 吉川 敏一
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2548-2557
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    消化管はストレスに弱く,ストレス性胃潰瘍やストレス性機能性胃腸障害などの病態において,自律神経・内分泌・免疫系を介した反応により,微小循環系,特に細動脈の収縮,拡張,過拡張が繰り返される.いわゆる"虚血再灌流障害"で,この主たるメディエーターとして活性酸素種が注目されることになった経緯がある.活性酸素によるストレス(酸化ストレス)に対するいくつかの応答蛋白質の存在が明らかになってきている.この巧みな細胞応答を制御する機構を解明することは,消化管疾患の新規な治療法,予防法の開発につながることを示した.
  • 和泉 徹
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2558-2570
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    わが国の心不全治療は新たな段階に入った.少子・高齢化社会を迎えて慢性心不全の治療目標を心事故予防から,それも包含した医療負担の軽減に切り替えるべき段階にきている.それには逆・抗リモデリングなど新しい観点を加えた集学的・集約的な心不全の発症・再発予防活動が欠かせない.特に,重症心不全の臨床ではこのことが強調される.さらにキュアを目指した追加療法,強化療法,先進療法ばかりでなく,ケアに徹した治療プランも呈示されるべきである.特に高齢者の重症例には段階を踏まえコンセンサスを得ながら展開する必要がある.
  • 上田 誠二, 甲斐田 裕介, 山岸 昌一, 奥田 誠也
    2010 年 99 巻 10 号 p. 2571-2578
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    慢性腎臓病(CKD)はESRDの予備群である可能性ばかりでなく,たとえ軽度の腎機能低下やアルブミン尿であっても心血管疾患(CVD)発症の強力な危険因子であることが明らかとなり,心腎連関(cardiorenal syndrome:CRS)といった概念が注目されている.血管内皮障害は,CVDの発症・進展に関与するばかりでなくアルブミン尿や腎障害進展の危険因子であること,またCKDの進行に伴い内皮障害の重症度も増すことが知られており,CRS病態で中心的な役割を果たしていると考えられている.CKDでは内因性NO合成酵素(NOS)阻害物質であるasymmetric dimethylarginine(ADMA)が生体内に蓄積し,その上昇が血管内皮機能障害を介して,CVDやCKDの進展に関与することが明らかにされ,CRSを介在する重要な因子として注目されてきている.CKD患者の診療においては,ADMAを測定することにより,将来のCVDやCKD進展のリスクを定量的に評価できる可能性,またADMAを制御することがCRSの新規治療薬になる可能性が期待される.
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