日本内科学会雑誌
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99 巻, 2 号
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特集●大動脈疾患―大動脈解離と胸腹部大動脈瘤:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.病因と病態生理
1.疫学
  • 足達 寿
    2010 年 99 巻 2 号 p. 222-225
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    大動脈解離の疫学は,未だ不明な点が多く,参考となる調査報告も少ない.しかし,発症には季節や時間による影響が少なからず存在し,これまで明らかな危険因子と言われている高血圧に何らかの病態が絡んで発症するのではないかと考えられる.次第に増加する傾向にある大動脈解離のtriggerが明らかになれば,発症予防に繋がる可能性もあり,発症状況の把握を含めた疫学的検討が重要である.
  • 堀 進悟
    2010 年 99 巻 2 号 p. 226-230
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    本邦には大動脈瘤に関する大規模な疫学調査は存在せず,手術統計,剖検報告,救急医療関連情報等の断片的な情報から,あるいは欧米の報告から,有病率や発症頻度が推測されている.欧米では腹部大動脈瘤を60歳以上の4~9%に認めるが,4cm以上の瘤は55~64歳の1%,65歳以上の2~4%である.胸部大動脈瘤は腹部大動脈瘤より少なく,10万人あたり6人である.加齢,喫煙,男性,高血圧,動脈硬化などが危険因子である.本邦では,大動脈疾患のために人口10万人当たり8.5人が死亡し(解離を含む),東京都監察医務院の剖検の1.28%が大動脈瘤破裂である.
2.病理
3.分子機構と新展開
  • 吉村 耕一, 青木 浩樹, 濱野 公一, 松崎 益德
    2010 年 99 巻 2 号 p. 237-244
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    大動脈瘤は,大動脈疾患の最たるものであり,慢性炎症と細胞外基質代謝異常がその主要な病態である.様々な病因刺激によって活性化されるシグナル伝達系の中に,炎症と細胞外基質代謝の両方の病態過程を統合的に制御するものがあり,大動脈瘤の病因・病態の鍵と考えられる.大動脈瘤克服のためには,病因・病態機序に基づく内科的治療法を確立することが急務であり,シグナル伝達系はそのための有力な治療標的候補の一つと期待される.
  • 鶴田 敏博, 畠山 金太, 北村 和雄
    2010 年 99 巻 2 号 p. 245-250
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    マスト細胞はI型アレルギーのみならず,慢性炎症,腫瘍増生,血管新生,組織リモデリング等,生体内で幅広く活躍する.マスト細胞の分泌顆粒であるトリプターゼやキマーゼをはじめ,種々のサイトカインが同細胞の活性化に伴い放出され病態を修飾する.マスト細胞の欠損した小動物を用いた検討から同細胞が腹部大動脈瘤の進展に関与することが示唆される.マスト細胞の集簇や活性化の抑制は同疾患に対する治療標的になる可能性がある.
II.診断の進歩
  • 新沼 廣幸
    2010 年 99 巻 2 号 p. 251-257
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    本邦では多列CTやMRIなどの画像診断装置の進化と普及に伴い急性大動脈解離や大動脈瘤に代表される大動脈疾患の診断能は改善された.しかし,大動脈疾患は多彩な臨床症状を示し,非典型的な症例が多いため,しばしば診断に困窮する.このため,大動脈疾患の診断では個々の症例で詳細な問診と身体所見を含む基本的診断法から得られた情報をもとに正確な診断プロセスを用いて画像診断に至ることが重要である.
  • 大倉 宏之
    2010 年 99 巻 2 号 p. 258-264
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    心エコー図は非侵襲的かつベッドサイドにおいても施行可能な診断法である.大動脈解離や瘤の診断には造影CTが標準的診断法として広く用いられているが,心エコー図ではその診断のみならず,重大な合併症や血行動態の評価が可能である.心エコー図法には経胸壁心エコー図法と経食道心エコー図法がある.それぞれのアプローチ方法によって診断可能な大動脈の領域が異なる.その特徴を理解して活用できれば,心エコー図は大動脈解離や瘤の診断に有用である.
  • 林 宏光
    2010 年 99 巻 2 号 p. 265-268
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    大動脈解離や大動脈瘤の診断において,CTとMRIは欠くことのできない非侵襲的診断法である.さらに近年の画像診断の進歩は目覚しく,CTではmultidetector-row CTが,そしてMRIでは高磁場装置に加えて様々な撮像法が開発されるに至り,両検査法の役割は,「単なる診断法としての位置付け」から「治療支援画像を提供する検査法」へとparadigm shiftしつつある.
  • 鈴木 亨, 澤城 大悟, 永井 良三
    2010 年 99 巻 2 号 p. 269-274
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    大動脈瘤ならびに大動脈解離は成人でみられる代表的な大血管の疾患である.ともに急性発症するため,迅速な診断法の開発は急務である.本稿では,バイオマーカーによるこれら大血管疾患の診断法の研究開発の現状と今後の可能性について概説する.
III.治療へのアプローチ
  • 川口 聡
    2010 年 99 巻 2 号 p. 275-281
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    大動脈拡張病変に対する治療は従来より人工血管を用いた置換手術がその中心であったが,病変部位によっては体外循環を要したり,出血量が多いなど過大な侵襲を患者に与えることがある.手術侵襲の低減は治療成績を向上させる上で必要不可欠であり,最近の低侵襲治療として注目されている血管内挿型人工血管(ステントグラフト)を用いた血管内手術(ステントグラフト内挿術)は,ここ15年で急速な進歩を遂げている.本法は血管外科領域での大動脈瘤に対する有効な治療法の一つとして,今後さらなる展開が期待されている.
  • 藤田 広峰
    2010 年 99 巻 2 号 p. 282-287
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    Stanford A型急性大動脈解離と胸腹部大動脈瘤に対する手術は未だ定型化された手術方法はなく各施設で様々な工夫がなされている.解離手術においては体外循環の送血部位,上行置換,弓部置換の術式選択,人工血管と解離動脈の吻合法,下行大動脈に対する処置などが検討されている.胸腹部大動脈瘤は手術死亡率は未だ高く脊髄虚血による対麻痺も克服されていない.本稿では各術式の簡単な紹介と川崎幸病院の現状を記す.
  • 本間 覚
    2010 年 99 巻 2 号 p. 288-296
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    急性大動脈解離は,1960年代に外科的治療が確立した.その後,病型・病態によって治療法を選択する考え方が広まり,1990年頃から治療の一画を内科医が担うことになった.大動脈解離は今なお重篤な疾患であり,急性期はもちろん慢性期の死亡も今なお少なくない.我々は大動脈解離の内科的治療を完成に近づけなければならない.
  • 横井 宏佳
    2010 年 99 巻 2 号 p. 297-304
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    大動脈瘤は高齢化,ライフスタイルの欧米化により近年増加傾向にある.動脈硬化性疾患を診療する内科医の動脈瘤早期発見の役割は少なくない.また,手術適応のない小径動脈瘤に対する動脈瘤径拡大予防のための生活習慣改善と薬物療法も大切である.さらに,大動脈瘤患者の生命予後は動脈瘤破裂よりも心血管イベントに規定されており,危険因子の管理が求められる.以上より,大動脈瘤に対する内科治療は今後ますます重要となると思われる.
IV.合併症とリハビリ
  • 西上 和宏
    2010 年 99 巻 2 号 p. 305-309
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    リハビリテーション(以下リハビリ)に関し,急性大動脈解離の内科治療,胸部大動脈瘤の外科治療,腹部大動脈瘤の外科治療に分けて述べた.リハビリプログラムは,クリニカルパスが管理・治療に大きな役割を果たしており,合併症の評価や予防もその要素となる.本稿では,日本循環器学会のガイドラインおよび当院で使用しているクリニカルパスを基に,リハビリと合併症について言及した.
V.どの段階から大学病院などの専門病院に送るか
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 日野田 裕治
    2010 年 99 巻 2 号 p. 343-348
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    現在実用化されつつある固形癌治療のゲノムバイオマーカーには,治療効果予測マーカーと副作用予測マーカーがある.前者には乳癌のトラスツズマブ治療におけるHER2遺伝子増幅(過剰発現),非小細胞肺癌の抗EGFR阻害薬治療におけるEGFR遺伝子変異,大腸癌・非小細胞肺癌の抗EGFR抗体治療におけるKRAS遺伝子変異,消化管間質腫瘍の抗チロシンキナーゼ阻害薬治療におけるC-KIT遺伝子変異,後者にはカペシタビンの副作用に関連するDPYD遺伝子変異(あるいは多型),イリノテカンの副作用に関連するUGT1A1遺伝子多型がある.これらに続くものとして予後予測マーカーがある.複数遺伝子の発現プロファイルによる予後予測の検討が乳癌・大腸癌等で進められている.ゲノムバイオマーカーの臨床的意義を確立するためには,マーカー陽性群と陰性群に分けたランダム化比較試験が必要であり,その成果に期待が寄せられている.
  • 市田 隆文
    2010 年 99 巻 2 号 p. 349-357
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/04/10
    ジャーナル フリー
    わが国で1991年に始まった生体肝移植と1999年に始まった脳死肝移植は肝移植医療の車の両輪と言われながらも,実際は前者が5,000例以上,後者が70例以下のアンバランスな医療形態を示している.数カ月以内に死亡が予想される末期肝不全患者が平均5年生存率75%を示すこの肝移植医療は適切なドナーと医学的適応を明確にすると,再生医療が成熟するまでは必要不可欠な医療であることに間違いはない.肝移植医療の最新の問題点はC型肝炎ウイルス陽性レシピエントの生存率の低下,原発性硬化性胆管炎の5年を過ぎてからの生存率の低下など憂慮すべき点が挙げられるが,一方で,B型肝炎ウイルス陽性レシピエントの再感染防止の確立,肝細胞癌に対するミラノ基準遵守による成績の向上など優れた業績が見られるようになってきた.さらに,劇症肝炎に関しては圧倒的に移植医療が内科的治療を凌駕していることも顕著なことである.今後はイスタンブール宣言に基づく,適切な脳死肝移植の推進が国際的にも重要なこととなり,生体肝移植一辺倒の医療を転換すべき時期に差し掛かってきていることを認識しなければならない.
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