わが国の甲状腺癌取り扱い規約では甲状腺癌は4種類に大別され,悪性リンパ腫を加えた5種類を甲状腺悪性腫瘍として分類している.生物学的特徴が個々の腫瘍で異なるためそれぞれの疾患に対し対応が異なることを認識する必要がある.組織学的には濾胞細胞由来の分化癌(乳頭癌,濾胞癌),未分化癌と傍濾胞細胞由来の髄様癌に分類される.悪性リンパ腫は非上皮性の悪性腫瘍で橋本病が基礎疾患として存在する.治療方法は,手術療法,内分泌療法,外照射や内照射(
131Iなど)による放射線療法,化学療法があり,それぞれの病理組織型や進行度によって選択される.甲状腺乳頭癌,濾胞癌,髄様癌は,手術療法が第1選択となる.一方,未分化癌では,手術療法は気道閉塞等による窒息,血管浸潤による大出血など防ぐ一時的な対症療法,緩和治療としての意味を持つにすぎず,放射線療法,化学療法が選択されるが予後不良である.
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