年金研究
Online ISSN : 2189-969X
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  • 坂本 純一
    2024 年 24 巻 p. 1-29
    発行日: 2024/09/10
    公開日: 2024/09/12
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     カナダの公的年金制度は、無拠出で居住要件により定額給付が受けられる老齢保障制度(OAS)と、社会保険方式による報酬比例年金であるカナダペンションプラン(CPP)/ケベックペンションプラン(QPP)から成っている。CPPとQPPは完全に通算ができ、ケベックに住所のある事業所に勤務する場合に、QPPが適用される。ここではCPPに焦点を当て、その財政状況を概観する。  CPPは2016年に大きな給付改善を行い、2019年から施行した。従来存在した制度を中核的制度、給付改善された部分を給付改善部分と呼ぶことにする。ただし、中核的制度にも給付改善の影響を受ける部分や、全体から見ると規模は小さいが給付改善している部分がある。基本となる給付改善の概要は坂本(2021)にまとめたが、第31回CPP財政再計算報告書が公表され、給付乗率の引上げと給付算定対象年収の上限の引上げという基幹的な給付改善とともに、中核的制度における給付改善を含めてその詳細が明らかになってきた。カナダの公的年金制度の財政運営は、給付改善部分や新規導入給付については平準保険料方式による運営が義務付けられており、給付改善部分は中核的制度部分と分離して財政運営が行われる。また、給付改善の影響を受ける中核的制度の給付改善部分もあり、別途平準保険料を計算して運営されることになる。その際、その給付改善部分のうち、2019年1月前の期間に係る給付については、2033年12月までの15年間で有限償却する平準保険料率が計算される。その保険料率は中核的制度の保険料率に加算される。そこで当稿においては、給付改善部分の詳細をまとめるとともに、実行保険料率である法定保険料率が財政再計算の結果、財政運営に必要な最小保険料率以上の水準にあるかを見ることにしている。結論は、実行保険料率が最小保険料率よりも高い水準に設定されており、財政的には問題のないことが確認された。この検証を行うに当たっては人口や経済の詳細な前提を置くことになるが、その内容については改めて報告することとする。

  • - 強制加入の職域年金は目標建て (Defined Ambition) 制度 -
    杉田 健
    2024 年 24 巻 p. 30-60
    発行日: 2024/09/10
    公開日: 2024/09/12
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     アイスランドの年金制度は、社会保障年金、職域年金、個人の年金貯蓄という3 つの柱からなる。  第 1 の柱の社会保障年金は強制加入であり、税財源により基礎的な年金を支給し所得制限がある。  第 2 の柱の職域年金は、被用者のみならず自営業者の強制加入の制度で、年金基金が運営を担っており、所得代替率 72%を目標とするが保証はしていないのでIMFは目標建て(Defined Ambition, DA)制度と位置付けている。アクチュアリーによる財政検証が毎年あり、資産と負債の差が 10%以上乖離した場合または5年間継続して5%乖離している場合、給付を増減するなどの規約を変更する必要がある。例えば2022年は資産と負債の差が10%以上乖離して、複数の年金基金で給付減額を実施することとなった。  第 3 の柱の任意加入の個人の年金貯蓄は、老後のための税制優遇のある個人勘定を有する確定拠出(DC)制度で、資産運用の選択肢が個人にある。  三つの柱を合わせると、全期間平均給与に対する所得代替率は 99%に達しており、また資産規模もGDPの1.7倍にのぼっている。

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