年報政治学
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71 巻, 1 号
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《特集》
  • 竹中 佳彦, 遠藤 晶久
    2020 年71 巻1 号 p. 1_13-1_33
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    グローバル化と 「格差社会」 の進展、統治機構改革などは、エリートの平等観や政策選好をどのように変化させたであろうか。本論文は、1980年の 「エリートの平等観」 調査 (三宅一郎・綿貫譲治・嶋澄・蒲島郁夫. 1985. 『平等をめぐるエリートと対抗エリート』) に倣って2018年に実施した調査の結果をもとに、エリートの平等観や政策選好がどのように変化したかを明らかにしようとするものである。なお、この調査でのエリートとは、国会議員だけでなく、地方議員や経営者、労働組合、メディアなど各種リーダーを含めたものである。

     本論文では、エリート・レベルのイデオロギー対立とその平等観との連関について、1980年代との比較から検討する。イデオロギーの変容が指摘され、右傾化が論じられている今日において、エリートにおいてもイデオロギー対立の様態が変容しているのかは重要な研究課題といえる。さらに、この約40年の間に生じた 「一億総中流社会」 から 「格差社会」 へという社会変化によって、平等観がイデオロギー対立にどの程度、組み込まれてきているのかについても分析を行う。

  • ―世論調査集積法による分析
    三輪 洋文, 境家 史郎
    2020 年71 巻1 号 p. 1_34-1_57
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    本研究は、戦後に主要7調査機関が実施した憲法に関する世論調査の結果を包括的に分析することで、戦後日本人の憲法意識の変遷を追うことを目的とする。動的線形モデルを応用した世論調査集積法を用いることによって、質問内容やワーディングの違い、調査機関・調査方法ごとの傾向、標本誤差を考慮した上で、憲法改正に対する潜在的な賛成・反対率を推定できる。推定結果からは、有権者の認識において1950年代には憲法改正が全面改憲を意味したのに対して、1960~80年代にかけて争点が9条改正に収斂していったこと、1990~2000年代には9条以外の論点が明確に意識されるようになったこと、小泉政権後は焦点が再び9条問題に絞られつつあることが読み取れる。さらに、質問内容やワーディングに関する分析結果からは、一般的に9条の改正が2項の改正として有権者に認識されていることや、戦争を連想させることが9条改正の反対率を高めることなどが示唆される。

  • ―サーベイ実験とテキスト分析の融合を通じて
    秦 正樹, Song Jaehyun
    2020 年71 巻1 号 p. 1_58-1_81
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    本稿では、有権者が各政党のイデオロギー位置を認識 (推論) する際に、⑴ 各政党を代表する政策情報は、当該政党のイデオロギー位置の推論に役立つか、また ⑵ 各政党を代表する政策情報はイデオロギー位置を決定する際にどのような役割を果たしているのかについて、サーベイ実験とテキスト分析を組み合わせて検討する。具体的には、サーベイ実験の回答方法を従来的なnumericの場合と、自由回答にした場合の結果を計量的に比較することで、上記の課題に応える。分析の結果、政党の 「看板政策」 の存在が他の政策の重みを低下させたり、判断を歪ませたりすることによって、争点態度の集合とイデオロギーが一致しないことが明らかになった。たとえば、護憲と道徳教育を同時に掲げる政党に対して有権者は、本来 “左派” ではないはずの 「道徳教育政策」 の解釈を変え、当該政党を 「左派政党」 と認識させるのである。本稿の知見は争点投票における有権者の認知プロセスの重要性を再確認させただけでなく、政党のイデオロギーに反する政策を掲げる政党がいかに支持率を維持してきたかというパズルに対する一つの答えを提供する。

  • ―2019年沖縄県民投票における投票行動
    久保 慶明, 岡田 勇, 柳 至
    2020 年71 巻1 号 p. 1_82-1_105
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、2019年沖縄県民投票における投票行動の分析を通じて、国家の安全保障をめぐり地方レベルで展開する対立軸を特徴づけることである。有権者の選好形成と選好表明を内生的に捉える枠組みを構築し、政策争点に関する態度、直接民主制に関する価値観、政党キューの影響に関する記述的分析と多項ロジット分析をおこなった。

     得られた知見は以下の通りである。第一に、在日米軍基地に否定的な有権者、直接民主制に肯定的な有権者、オール沖縄を支持する有権者は、「反対」 に投票しやすい。第二に、米軍基地に肯定的な有権者、直接民主主義に否定的な有権者、自民党を支持する有権者は、「賛成」 への投票か 「棄権」 を選びやすい。これは 「賛成」 の選好を形成したために 「棄権」 した有権者、つまり選好形成と選好表明を内生的に選択した有権者の存在を示唆する。第三に、自らの争点態度と支持政党からのキューが一致しない有権者は、争点態度に沿って投票するか、政党キューにしたがって投票するか、という選択に迫られる。以上の知見は、保革対立が流動化した日本政治において、防衛・安全保障をめぐる対立軸が代議制と直接民主制の相互作用の中で展開していることを示している。

  • ―「革新」・「保守」・「改革」をめぐって
    大井 赤亥
    2020 年71 巻1 号 p. 1_106-1_127
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    冷戦終焉に伴う 「革新」 の一方的衰退をへて、1990年代以降の日本政治は、コンセンサス型意思決定によって利益配分を担ってきた 「守旧保守」 と、強いリーダーシップによって行政機構の縮小再編成を断行する 「改革保守」 との対立軸へと変容した。ここにおいて支配的趨勢となったのは 「改革保守」 であり、「改革」 が 「革新」 を代替して現状打開のための結集軸を担うようになった。

     親社会主義と憲法9条を旗印とした 「革新」 と、規制緩和や民営化と日米同盟を基軸とする 「改革」 とは似て非なるものである。55年体制下において 「革新」 が左から自民党政治を攻撃したとすれば、ポスト冷戦下においては 「改革」 が自民党政治を右から解体しようとしたのであり、その方向性において二つのシンボルの出所は真逆であった。

     しかしながら、「革新」 と 「改革」 とは、いずれも官僚主導や自民党の利益配分政治を否定する点において類似してもきた。二つのシンボルはいずれも現状変革の結集軸となり、ある種の等価物として機能してきたのである。

     本稿はそのような 「革新」 と 「改革」 の意図せざる共振と 「改革」 が孕んだ二面性を考察するものである。

  • ―政党の選挙公約に見る左右軸の国際比較研究
    谷口 尚子, クリス・ウィンクラー
    2020 年71 巻1 号 p. 1_128-1_151
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    政治家や政党が提示した選挙公約を計量的に分析し、政治の対立軸を析出することがある。ただし特定の国や時期の選挙公約を分析するために最適化された手法は、他の手法との接合や長期間の時系列比較・国際比較に難がある。これを目指した選挙公約コーディング法に、Manifesto Research Group/Comparative Manifesto Projectの手法がある。本研究では、日本の1960~2014年総選挙時の主要政党の公約等を同手法でコーディングし、一次元また二次元 (政治・経済) の左右対立軸を析出した。それらの軸上における政党の位置の変化を確認したところ、日本の主要政党は全体として右に移動し、保守政党には経済自由主義化、革新政党には政治的穏健化が見られた。また、米英独の二大政党と日本の最大与野党とを合わせて左右対立軸を析出して変化を確認したところ、米英日は共通して1980年代に保守化し、2000年代に英独日の政権政党の公約が中央に収斂するなど、連動した動きも見られた。また日本の自民党はやや右傾化しているが、西側主要国の中ではなお中道右派程度の位置取りであることが示された。本コーディング法や分析手法には普遍性の面で課題があるものの、国際的・長期的に日本の政党の政策位置や変化の特徴を捉えることができた。

《公募論文》
  • ―離散時間ロジットモデルによる存続要因の導出
    三谷 宗一郎
    2020 年71 巻1 号 p. 1_152-1_177
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    ひとたび成立した政策を終了させることは容易ではない。政策の不必要な継続を回避し、円滑な終了を促す目的で、米国では1970年代から州政府レベルの立法過程において、法制定時に当該政策の失効期限を定めるサンセット条項が急速に普及した。日本には、類似する立法技術として失効条項や廃止方針条項を付す法律 (以下、時限法) が存在するが、その運用実態は判然としない。時限法は当初の期限通りに失効しているのか、どのような時限法がなぜ存続するのかを明らかにし、政策終了論および立法過程論上の空白を埋めることが本稿の目的である。研究の結果、⑴戦後制定された時限法は全208件で、そのうち約半数が当初の期限通りに失効しておらず、中には最大12回延長され、半世紀以上も存続する時限法が存在していたこと、⑵時限法のうち、衆議院議員提出のもの、国土開発分野のもの、法律補助規定を有するもの、制定当初の失効期限が5年以上に設定されているものは存続する確率が高いことが明らかになった。一部の時限法は、失効期限が到来するたびに票と利益を交換する機会を創出し、関係議員の再選可能性に寄与しているため、予定されている期限通りに失効しないという矛盾を抱える可能性があると考えられる。

  • 本多 倫彬
    2020 年71 巻1 号 p. 1_178-1_200
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    民主党政権の外交・安全保障政策は、一般に評判が悪い。しかし、国際平和協力について民主党政権は、ハイチと南スーダンという二つの国連PKOへの自衛隊部隊派遣、東南アジア地域での防衛省・自衛隊による能力構築支援の開始、さらにジブチでの海賊対処を目的に自衛隊初の海外拠点の整備など、従来の枠を超える積極的な試みを行っている。

     それにも係わらず、2011年の自民党への政権交代後、第二次安倍政権が進めた 「積極的平和主義」 に基づく国際平和協力強化の試み、就中、平和安全法制に対して、野党民主党は強固な反対姿勢を示した。これにより、批判者としての印象が先行し、民主党政権期の国際平和協力は正面から検討されることのないままとなっている。

     本稿は、民主党政権の実施した国際平和協力について、後の自民党政権との相違と共通性に着目して検討を行うことで、国際平和協力における民主党政権の再評価を行った。分析を通じて、民主党政権の役割が、積極的平和主義に基づく国際平和協力の試みの基盤整備にあったことを示すとともに、自民・民主両党の国際平和協力政策の根本的相違は、国際平和協力の考え方にではなく、対米関係の考え方にあることを明らかにした。

  • ―選挙権なき女性の政治参加を論点として
    末木 孝典
    2020 年71 巻1 号 p. 1_201-1_222
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    本稿は、明治期最初の議院規則における傍聴規定の成立過程を 「梧陰文庫井上毅文書」 所収の草案の順序を推定することにより、現行規定の傍聴席の細かい分類や傍聴人の服装などの規制が規定された経緯や、最終的に女性の傍聴禁止条項が廃止されるに至った経緯を考察するものである。

     その結果、以下のことがわかった。第一に、傍聴席分類や傍聴人の服装などの規制は欧米諸国を調査した事務局グループが作成した草案に起源があり、議院秩序を最優先する発想から来ていること。第二に、議院規則を勅令で事前に制定する方式ではなく、憲法が保障する議院の自律性に配慮して草案の作成にとどめ、成案は議会が定める方式を採用したことが最終的に女性の傍聴禁止条項の削除を可能にしたこと。第三に、草案作成に際して事務局内に対立があり、総裁の井上毅は女性の傍聴禁止を明文化せずに運用で規制すればよく、傍聴席分類も厳しすぎると認識していたこと、海外調査組の金子堅太郎は秩序と事務処理を重視し、女性の傍聴禁止の明文化に反対ではなかったこと。最後に、現行の議院規則や傍聴規則が明治期から維持されてきた細かい規制をいまだに残したままであることである。

  • ―グローバルな時代のドイツ・ナショナリストの陥穽
    水谷 仁
    2020 年71 巻1 号 p. 1_223-1_245
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    本稿は、マックス・ヴェーバーの帝国主義論について多角的に考察することを主な目的とする。先行研究において彼の帝国主義論は、ヴェーバーの国際政治思想におけるひとつの軸である、「世界政策」 (ヨーロッパにおけるドイツの大国としてのプレゼンスの追求) の延長上に位置づけられている。しかしヴェーバーは、グローバリゼーションという彼の生きる時代のドイツが直面した国際政治的な状況を視野に入れて帝国主義を論じ、ドイツが 「世界政策」 を保持し得なくなった後も、帝国主義について言及した。さらには、ドイツの帝国主義的な植民地領有に対する否定的な見解や、帝国主義そのものに対する制約、そしてドイツの帝国主義の放棄さえも主張していた。本稿は、ヴェーバーの帝国主義論を多角的に考察することで、ドイツ帝国主義の経済的・政治的なメリットやデメリットに対するグローバリゼーションの観点をも含んだ彼の評価と、「世界政策」 を保持し得なくなった後の、ヨーロッパにおけるドイツの国際政治的な生存の追求のための帝国主義に対する彼の批判を発見した。それに加え、帝国主義を批判するヴェーバーにドイツの植民地支配・侵略に対する視座が欠如していたという、ドイツ・ナショナリストとしてのヴェーバーの帝国主義論の陥穽をも明らかにした。

  • 竹中 勇貴
    2020 年71 巻1 号 p. 1_246-1_266
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    通説的に、議員とは別個に公選される執政長官 (大統領、知事など) は、望む政策を立法によって実現することに苦労しデッドロックに直面しがちであるとされてきたが、執政-議会関係についての近年の研究は、執政長官がポーク・バレリングによって議員の支持を取り付けるという形で議員に影響力を行使し、立法に成功しうることを明らかにしてきた。しかし先行研究では、執政長官の選挙前連合、つまり執政長官の選挙において同じ候補を支持する議員や政党の連合がポーク・バレリングによる執政長官の影響力行使や立法の成功をどのように左右するかについての分析は不十分である。

     そこで本稿は、執政長官たる知事が公選され、様々なパターンの選挙前連合が存在した1991年から2005年までの日本の都道府県をケースとして、合理的選択理論による仮説構築と計量分析によって、知事は、選挙前連合が拡大するほど自らの再選を議員に依存するようになり、議員と協調的な関係を築くためにポークを増加させ、立法に成功していることを明らかにする。さらに、因果媒介分析によって、選挙前連合はポークを媒介して立法の成功をもたらすことも示す。

  • ―選挙戦略としての訴訟提起
    井関 竜也
    2020 年71 巻1 号 p. 1_267-1_291
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    中央政府と地方政府の対立を憲法裁判所が規律する制度は広く採用されている。そのような制度の下で、いつ、なぜ、国は地方政府を相手どって訴訟を提起するのだろうか。本論は、国は党派性の異なる州政府に対する選挙戦略、具体的にはネガティブキャンペーンとして訴訟を提起していることを論証する。憲法裁判所の一例であり、国による訴えが認められる割合が低いにもかかわらず、国が州政府に対して多くの訴訟を提起していたイタリア憲法裁判所を事例にタイムシリーズ・クロスセクション重回帰分析を行ったところ、以下の結果が得られた。第一に、国は党派性の異なる州政府に対して、より多くの訴訟を提起している。第二に、党派性の異なる州政府に対する訴訟提起は、訴訟提起が地方選挙に及ぼす影響が大きくなると考えられる州議会選挙直前期に増加している。以上の結果は、たとえ憲法裁判所が中央政府の意向に反した行動をとりうるとしても、憲法裁判所への訴訟提起自体が、中央政府によって選挙戦略として活用されうることを示唆している。

  • ―運輸省港湾建設局に着目して
    山田 健
    2020 年71 巻1 号 p. 1_292-1_315
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    本論文は、戦後日本の中央-地方関係という行政学の伝統的な主題について、地方行政において重要な役割を果たしていながらその実態を十分に把握されていなかった中央省庁出先機関に焦点を当て、その再考を試みたものである。出先機関の活動について、行政学の通説は本省の方針に接近した活動を見出し、対抗説は地方自治体の方針に接近した活動を見出してきた。しかし、先行研究は、出先機関の活動に本省への接近・地方自治体への接近の二面を見出しうることを説明するに至っていない。すなわち、「なぜ、出先機関はある時に中央省庁本省の方針に接近し、またある時には地方自治体の方針に接近するのか」 という問いが残されていた。これに対して、本論文は、出先機関が制度設計による動機付けを背景として、「中央主導型」 と 「地方後方支援型」 という二つの自律的な行動様式を展開し、地方行政において看過しえない影響力を行使していることを明らかにした。そして、この知見をふまえて、国と地方自治体の単線的な関係として捉えられてきた中央-地方関係について、本省・出先機関・地方自治体の三者による複線的な中央-地方関係として再考しうることを提示した。

  • ―政権党による 「手続的指示」 の数理的・定量的分析
    池田 峻
    2020 年71 巻1 号 p. 1_316-1_340
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    代議制民主主義において、有権者から選出されていない官僚を政治家はいかに統制しているのだろうか。本研究は、政治家が審議会への諮問の強制という手段を用いて統制を行っていると主張するものである。

     審議会は行政の民主化などを目的に設置される行政機関であるが、その実態は官僚が望む政策を追認する 「隠れ蓑」 に過ぎないという見方が根強く残る。これに対し本研究は、政治家が法令に 「○○審議会に諮問しなければならない」 旨 (これを手続的指示と呼ぶ) を書き込むことによって、官僚の逸脱を防ごうとしている側面があることを示してゆく。

     では、いかなる条件で手続的指示が行われるだろうか。本研究ではゲーム理論を用いて政権党・官僚制・審議会の関係を定式化し仮説を導出したあと、2002年時点に存在する全ての審議会を対象とした計量分析によってそれを検証する。

     分析の結果、①政官の理想点の乖離が大きい、②審議会の権威が小さい、③審議会と政権党の理想点が近い、④政権党が現状の政策に不満を持っているという四つの場合においてより多くの手続的指示が行われることが明らかとなった。この結果から、官僚は政権党の戦略によって審議会を利用させられており、審議会が統制手段として用いられているという見落とされてきた側面が浮かび上がる。

  • ―新しい有権者を規定する社会的文脈
    三村 憲弘, 深谷 健
    2020 年71 巻1 号 p. 1_341-1_367
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    本研究では、新しい有権者 (18歳高校生) が政治的選好を形成するメカニズムを実証的に検討することを目的として、2016年7月10日 (日) に実施された第24回参議院議員選挙に合わせて 「選挙啓発のフィールド実験」 を行った。その結果、簡素なビラ1枚でも、社会的な人間関係への影響を促すことで、高校生の政治的選好形成 (政治関心や投票行動) に効果があることがわかった。そして、そのメカニズムにおいては、親とのコミュニケーションが大きな役割を果たしていた。さらに、このような影響は、高校生がもともと持っているこれまでの家庭環境 (親との政治的コミュニケーション) や本人の性格特性 (特に外向性) によって大きく条件付けられることが明らかになった。これらの知見は、若者を一律に同じ方法で選挙啓発 (より広くは政治教育) することの効果と限界を浮き彫りにしている。

  • 勝又 裕斗
    2020 年71 巻1 号 p. 1_368-1_392
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    選挙制度は有権者の選好を議席に変換する重要な制度である。戦後日本においては衆議院、参議院、そして、地方議会の選挙に至るまで中選挙区制が採用されてきた。55年体制においてほぼ全期間で絶対多数を維持した自民党は、この選挙制度による恩恵を受けていたのであろうか。これに対して既存研究では、中選挙区制において大政党だけが候補者擁立戦略の問題に直面するため、中選挙区制は大政党にとって不利であると指摘された。後続の研究は自民党がこの課題を克服できたのか否かを巡って論争してきたが、これらの研究の多くが政党の得票率を所与として分析を行ってきたため、得票率自体が中選挙区制の影響を受けるという重要な視点が見落とされてきた。中選挙区制によって各政党の得票率がどのような影響を受け、それがどのように議席数に反映されたのかを分析した結果、自民党が総合的に少し議席を減らしたのに対し、社会党は総合的に大きく議席を減らしたことが明らかになった。中選挙区制は第二党である社会党に不利にはたらくことで結果的に自民党に有利にはたらいてきたのである。

  • ―国内機能としての批判回避
    藤田 将史
    2020 年71 巻1 号 p. 1_393-1_415
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル フリー

    国際制度論においては、国家は基本的に国際協調を実現するために国際制度を利用すると考えてきた。しかし現実には、国家行動をあまり変えられないという意味で有効性の低い国際制度を、国家は多く利用してきたと指摘されている。では、なぜ国家は敢えて有効性の低い国際制度を利用するのだろうか。先行研究は、有効性の高い制度を構築することの困難・経路依存性・政策判断の誤りといった要因を提示してきた。しかし、それらの要因が存在しなくても国家は有効性の低い制度を利用する場合があり、先行研究の知見だけでは有効性の低い制度利用の事例群を十分に説明できない。本稿の主張は、国家行動を変化させない制度であっても国内政治上の効用があり、そのために政府によって利用される場合があるというものである。具体的には、政府が対立する国内主体からの批判を回避するために、有効性の低い国際制度を利用できるという仮説を提示する。そして、先行研究の逸脱事例であり本稿の仮説の最不適合事例に当たる、為替操作国認定問題での米国のIMF (International Monetary Fund) 利用の事例を用い、仮説を実証する。

《書評》
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