本研究では浸炭焼入れが施されたクロムモリブデン鋼(SCM420鋼)の疲労強度に対して微粒子ピーニング(FPP)処理およびレーザーピーニング(LP)処理が及ぼす影響を検討した。LP処理はFPP処理と比較して表面性状の悪化を抑えつつ深い表面改質層を形成し,高い圧縮残留応力を付与できることが確認された。これにより浸炭焼入れ後の疲労強度が向上しC+LP材の疲労限度は1150 MPaに達した。これに加え,C+LP材では疲労試験後に圧縮残留応力が増加した。 これらの結果より,疲労強度向上のためにはLP処理のように表面性状を変化させずに硬さの向上や圧縮残留応力を付与することが重要である。
高濃度真空浸炭と高周波焼入れによる複合熱処理を施した肌焼鋼について,未固溶セメンタイトの分布と形態,残留オーステナイト量とその安定性に着目し,これらの因子が曲げ疲労強度に及ぼす影響について調査した。高周波加熱温度が高くなると,セメンタイトは分解し,残留オーステナイト量は増加した。低サイクル疲労破壊の場合,試験中に加工誘起マルテンサイト変態に伴う圧縮残留応力が付与され,疲労強度は向上した。高サイクル疲労破壊の場合,試験中に残留オーステナイトが加工誘起変態し難いため,試験前の圧縮残留応力を大きくすることと,残留オーステナイトの安定度を下げることにより,加工誘起変態しやすくし,圧縮残留応力を付与することが疲労強度の向上に重要となる。
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