熱帯農業研究
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2 巻, 2 号
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原著論文
  • 相澤 麻由, Nguyen Duy CAN, 黒倉 寿, 小林 和彦
    2009 年 2 巻 2 号 p. 71-79
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/08/21
    ジャーナル フリー
    メコンデルタの半分以上を占める塩水遡上地域では,1990年代から米の増産を目的とした淡水化プロジェクトが実施され,稲作環境や農業形態が大きく変化している. この塩水遡上地域での農家経営実態を明らかにするために,Soc Trang省のDai AnⅡ村,Long Phu村,Tai Van村において,計193戸の農家に聞き取り調査を実施した.水稲2期作と畜産を組み合わせた農業形態の世帯数が全体の41%と最も多く,次いで水稲2期作専作が37%,水稲2期作と畑作・果樹の組み合わせは17%だった.ただし,水稲以外の生産規模は小さく,農家はあくまで稲作主体の農業を実施していた.各作目の土地生産性を比較すると,畜産が最も高く,続いて畑作・果樹が高く,稲作は最も低かった.従って,土地の利用効率からは,稲作よりも畜産や畑作・果樹を導入した方が,高収入を期待できる.それにも関わらず,農家が稲作以外の作目の生産規模を拡大しない理由として,労働力と土地の制約が考えられる.この地域では畑作・果樹や畜産の生産に対して雇用労働を用いておらず,生産規模は家内労働力で制約される.また,畑作・果樹は水はけの良い高台で行われ,養豚は各家の裏庭で行われるが,現状ではそれぞれに適した土地が限られている.それに加えて,米の販売価格が農家間で差が小さく安定していることから,農家は他の作目よりも稲作を優先して生産規模拡大を行ったと考えられる.なお,この地域における米生産は規模拡大によって土地生産性が向上するが,このことも農家が稲作の規模拡大を選択する要因の一つになっていると思われる.
  • 金城 和俊, 渡嘉敷 義浩, 鬼頭 誠
    2009 年 2 巻 2 号 p. 80-84
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/08/21
    ジャーナル フリー
    腐植粘土複合体は土壌中で安定的に存在する.熱帯・亜熱気候に属する地域の土壌においてその複合体の形態についてほとんど報告が見当たらない.本研究では亜熱帯気候に属する南北大東島のサトウキビ圃場の土壌の腐植粘土複合体の特徴を明らかにし, その複合体の腐植物質の蓄積要因を明らかにすることが目的である.
    1).南北大東島のサトウキビ栽培土壌の粘土含量は514.0~920.0 g kg-1を示し,ほとんどの圃場が重埴土だった.主要粘土鉱物はカオリナイトとイライトで,次いでギブサイトとゲーサイトだった.2).両島の土壌の腐植酸の腐植化度はほとんどの圃場でRp型を示した.交換性カルシウム含量が10μg kg-1以上の圃場はRF値が15~25,ΔlogKが0.85~1.0の範囲にプロットされRp型を示した.土壌中の交換性カルシウムが腐植酸を保護し,微生物による腐植酸の分解防止,すなわち腐植化を妨げることが考えられた.3).ヒューミン画分が腐植酸やフルボ酸よりも多い圃場が両島の圃場において多かった.最もヒューミン画分が多く含む圃場では交換性カルシウム含量も高かった.ヒューミン含量と交換性カルシウム含量との関係は北大東島(n=9, r=0.655),南大東島(n=14, r=0.750)および南北大東島(n=23, r=0.657)においても有意な正の相関関係が得られた.以上のことから,土壌中のヒューミン画分は交換性カルシウムと正の相関関係を示し,ヒューミンの蓄積に交換性カルシウムが関与することが示唆された.
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