熱帯農業研究
Online ISSN : 2187-2414
Print ISSN : 1882-8434
ISSN-L : 1882-8434
4 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
総説
原著論文
  • 加藤 太
    2011 年 4 巻 2 号 p. 83-89
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    タンザニアの農村部では,多様な野菜が栽培されている.1980年代に始められた経済自由化の進展に伴って,農村部でも現金の必要性が高まり,換金を目的とした果菜の栽培が各地で見られるようになっている.その一方で,経済の変化とは関係なく自給的な葉菜栽培も消滅せずに維持されている.そこで本研究では,農村部における葉菜の生産と消費の実態を明らかにすることで,葉菜栽培が続けられている背景とその要因を考察しようとした.調査地であるキロンベロ谷では,一年間に消費された副食の3割以上が葉菜を材料としたものであった.同地域の葉菜類の消費パターンには,雨季に消費量が伸び,乾季に落ち込む傾向があるものの,多様な作物を組み合わせて栽培することによってほぼ一年を通して葉菜が消費されていた.最も消費が多かった葉菜はカボチャの葉であり,次いでキャッサバの葉,ヒユの葉,クサネムの一種(Aeschynomene sp.)や野生モロヘイヤ(Corchorus sp.)などの野草,サツマイモの葉,ササゲの葉の順に利用されていた.ヒユや野草を除く葉菜に共通している特徴は,いずれも栽培にほとんど手がかからない点や,収穫される葉がイモや果実,マメなどの副産物である点などがあげられる.また,栽培に農業投入材を一切用いず,収穫物を販売する機会が少ないことなど,市場経済との接点があまりない点も葉菜栽培の特徴の一つである.こうした特徴から,同国における葉菜栽培は,経済的な変化の影響をほとんど受けずに,簡単に食料を供給する役割を担っている.これまで副産物としてみなされてきた葉菜類の栽培であるが,貴重な生業の一つであり,今後は葉を利用するキャッサバやカボチャなどを葉菜としても捉えなおす必要がある.
  • 吉井 健一郎, 志和地 弘信, 入江 憲治, 豊原 秀和
    2011 年 4 巻 2 号 p. 90-98
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    カンボジア国バッタンバン州ではイネの直播栽培が多く行われているが,播種後の湛水による苗立ち不良が問題となっている.本実験では苗立ち不良の原因について,苗の生育時に見られる事象と土壌の還元状態との関係について検討した.インディカイネ18品種の苗立ち率は全ての品種で水田土壌を湛水状態にした場合に大きく低下した.そして,苗立ちの悪い種子周辺にはゲル状の白色物質や黒色物質が観察された.黒色物質はエネルギー分散型蛍光X線分析による分析の結果,酸化鉄と推察された.白色物質は,水中に投じられ苗立ちした種子周辺で確認されたことから,種子からの滲出物によって生成されたものであり,白色物質自体は苗立ち阻害物質ではないことが確認された.種子滲出物を含む溶液をトゥールサムロン水田土壌に添加すると溶存酸素量が低下した.種子滲出物にはエタノールが含まれていた.エタノールを水田土壌に添加したところ,いずれの濃度でも溶存酸素量と酸化還元電位は低下し,pHは徐々に中性付近まで上昇した.また,水中のFe2+も増加した.これらのことから,水田土壌に播種されて湛水状態にある種子周辺の溶存酸素量は非常に低くなっている可能性がある.
シンポジウム
研究集会
feedback
Top