ネットワークポリマー論文集
Online ISSN : 2434-2149
Print ISSN : 2433-3786
41 巻, 5 号
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報文
  • 松原 典恵, 藤元 伸悦, 谷口 裕一, 林 敬一
    原稿種別: 報文
    2020 年 41 巻 5 号 p. 186-192
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/12/09
    ジャーナル フリー

    熱硬化性の構造用高分子材料の分子構造と基礎物性や力学的特性との関連性を調べるため,エポキシ系熱硬化性樹脂の分子構造を分子動力学シミュレーションにより計算し,トポロジーデータ解析を用いて分子構造と物性,あるいは,力学的特性に影響を及ぼす材料の不均一性を解析した。特に,硬化反応による分子運動性の制限に伴って生じるナノメートル領域での自由体積の分布構造に着目した。その結果,硬化反応が進むにつれ自由体積の平均分布が変化することを明らかにし,熱硬化性樹脂の分子レベルでの不均一性を捉えるデータ解析手法としての可能性が示唆された。

  • 木村 夏海, 山田 和義, 古井 裕彦, 藤田 晶, 岸 肇
    原稿種別: 報文
    2020 年 41 巻 5 号 p. 193-200
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/12/09
    ジャーナル フリー

    低銀フィラー含有量かつ低粘度な導電性エポキシ複合材を得るためin-situ ラジカル重合メタクリルモノマー/アニオン重合エポキシオリゴマー組成物を研究した。具体的には,ビスフェノールF 型ジグリシジルエーテル(DGEBF)/ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(DPOMA)ブレンドを導電性エポキシ複合材のマトリックス樹脂とした。電子顕微鏡観察により,重合ブレンド物中には共連続相構造が形成され,そのメタクリル樹脂リッチ相に銀フィラーが選択配置したことが明らかとなった。体積割合の小さい連続相中への銀フィラー選択配置により,フィラー接触(連続性)が増し低銀フィラー含有率での導電チャンネル形成がなされたと考えられる。結果,比較材(DGEBF/銀フィラーブレンド)と同等の導電率発現に要する銀量(体積含有率)を約30%低減できた。銀フィラーの選択配置メカニズムについて,エポキシ樹脂,メタクリル樹脂,銀フィラーのハンセン溶解度パラメーター(HSP)を測定し相互の親和性を比較して考察した。

  • 梶 正史, 大神 浩一郎, 甲斐 智美
    原稿種別: 報文
    2020 年 41 巻 5 号 p. 201-206
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/12/09
    ジャーナル フリー

    エポキシ樹脂の耐熱性を向上させるための一つの方向にエーテルエーテルケトン構造を有するエポキシ樹脂がある。ヒドロキノンと4,4’- ジフルオロベンゾフェノン(DFBP)との反応によりビスフェノール化合物(DHEEK)を得た後,エポキシ化反応を行うことでエーテルエーテルケトン構造を持つエポキシ樹脂(DGEEK)を合成した。

    これを用いてフェノールノボラックを硬化剤とした硬化物の物性を評価した結果,ガラス転移温度(Tg)は149

    ℃とビスフェノールA 型エポキシ樹脂(DGBPA)に対して22 ℃高い値を示した。また,700 ℃での残炭率が

    35.0 wt%とDGBPA に対して2 倍以上の値を示すとともに,10 wt%重量減少温度(Td10)は406 ℃であり,DGEEK 硬化物の高い熱分解安定性が確認された。

総合論文
  • 有光 晃二
    原稿種別: 総合論文
    2020 年 41 巻 5 号 p. 207-214
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/12/09
    ジャーナル フリー

    3 次元架橋構造を有するネットワークポリマーは,その優れた力学特性,耐熱性,耐薬品性,電気特性から,汎用材料,構造材料,電子材料として工業的に広く利用されているが,高温加熱ができないエレクトロニクス関連分野等では,UV 硬化が利用される。金属の腐食がないことから,光塩基発生反応を利用したアニオンUV 硬化が注目されているが,光塩基発生剤の開発例が少ない上に,光による塩基発生効率が低く,低感度なUV 硬化材料となることが問題となっている。そこで著者らは,高効率で有機強塩基を発生する新規な光塩基発生剤を開発した。さらに,塩基の作用により自己触媒的に分解して新たな塩基を発生する塩基増殖剤も開発した。光塩基発生剤と塩基増殖剤を組み合わせることで,光化学的に発生した塩基をトリガーとする塩基増殖反応が進行するため,光塩基発生反応を増幅することが可能であり,アニオンUV 硬化材料の飛躍的な高感度化が可能になる。本稿では,光塩基発生剤の開発と塩基増殖反応を利用したアニオンUV 硬化材料の高感度化の手法について述べる。

解説
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