ネットワークポリマー論文集
Online ISSN : 2434-2149
Print ISSN : 2433-3786
41 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
報文
  • チェ ジェヨン, 網代 広治
    原稿種別: 報文
    2020 年 41 巻 6 号 p. 226-236
    発行日: 2020/11/10
    公開日: 2020/12/22
    ジャーナル フリー

    新しいネットワークポリマーの構成要素として複数の架橋構造を導入することを目的とし,ポリエチレングリコール(PEG)とシクロデキストリン(CD)からなる擬ポリロタキサンを,ポリ乳酸(PLA)の開始剤に用いた。将来的に,擬ポリロタキサン構造とPLA ステレオコンプレックスを架橋部位として利用するために,新しい分岐ポリマーを調製した。ここでは,擬ポリロタキサンの軸成分であるPEG 両末端の水酸基と環成分であるCDの水酸基が,それぞれラクチド重合の開始部位として利用した。擬ポリロタキサンおよび分岐ポリマーは,水およびアセトンによる溶解性の差を利用して分別して回収した。PEG は数平均分子量1500 および6000 のものを用いたところ,溶解性の差が観測された。また,α-CD とγ-CD を利用することで,貫通するPEG 軸の数を変化させることを試みた。これら調製された擬ポリロタキサンおよび分岐ポリマーは1H NMRおよびSEC分析によって確認し,熱重量分析によって耐熱性を比較した。

  • 井上 陽太郎
    原稿種別: 報文
    2020 年 41 巻 6 号 p. 237-244
    発行日: 2020/11/10
    公開日: 2020/12/22
    ジャーナル フリー

    フラン-マレイミド間のDiels-Alder 反応は,可逆反応性を示すことが知られている。今回,植物油に導入したフラン骨格と,ビスマレイミドをDiels-Alder 反応させることにより,植物油をベースとする可逆反応部位を有するネットワークポリマーを合成した。フラン骨格を有する植物油誘導体とビスマレイミドの組み合わせにより,機械特性に大きな差異が現れ,とくに,ひまし油誘導体(FMECO)とビス(3- エチル-5- メチル-4- マレイミドフェニル)メタン(M1)から作製したネットワークポリマー(FMECO-M1)の引張強さは48.3 MPa に達した。また,得られたネットワークポリマーは,ステンレス鋼板に対し,良好な接着性を示した。接着試験片を140 ℃,20 分間加熱すると,retro Diels-Alder 反応の進行により,容易に解体することができた。さらに,破断後の接着試験片の接着面を合わせ,加熱による解重合-再架橋をさせると,接着試験片は再接着した。破断-再架橋を5 回繰り返しても,接着強度は低下せず,良好な接着性を示すことが明らかとなった。

  • 榊原 圭太, 加賀田 秀樹, 小田 俊和, 石塚 紀生, 辻井 敬亘
    原稿種別: 報文
    2020 年 41 巻 6 号 p. 245-251
    発行日: 2020/11/10
    公開日: 2020/12/22
    ジャーナル フリー

    本稿では,エポキシ系ポリマーモノリス膜の力学特性向上を目的としたセルロース繊維との複合化について報告する。エポキシモノマー,アミン硬化剤,ポロゲンからなる重合液をセルロース繊維シートに含浸させ,熱硬化による重合誘起スピノーダル分解型相分離に供し,ポロゲンを除去することで,セルロース繊維で補強されたエポキシ系ポリマーモノリス複合膜を得た。熱硬化に際して,犠牲膜であるポリビニルアルコールで被覆した基板で含浸膜を挟んでも,あるいは,含浸膜を吊り下げても,表面にスキン層のない自立膜を得た。モノリス複合膜は,ニートモノリス膜に比べ大幅なヤング率および強度の向上を発現した。また,リチウムイオン電解液を含浸した複合膜は,ポリオレフィン系セパレータに匹敵する高いイオン伝導性を示した。エポキシ系ポリマーモノリス複合膜の高耐熱性や迂曲チャネルの特徴を活かすことにより,ポリオレフィン系を代替する次世代セパレータとなりうると期待される。

  • 梶 正史, 大神 浩一郎
    原稿種別: 報文
    2020 年 41 巻 6 号 p. 252-259
    発行日: 2020/11/10
    公開日: 2020/12/22
    ジャーナル フリー

    ビフェニレンエーテル構造を持つエポキシ樹脂(BGPB)を合成し,フェノール系硬化剤により硬化させて得られる硬化物を得て,ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(GBPAR)およびビスフェノールA 型エポキシ樹脂(DGBPA)を用いた硬化物との物性を比較した。フェノールノボラックを硬化剤として用いた場合,BGPB 硬化物のガラス転移温度は159 ℃であり,DGBPA 硬化物に対して32 ℃,GBPAR 硬化物に対して7 ℃高い値を示した。また,700 ℃での残炭率は37.8 wt%とGBPAR の28.0 wt%よりも高く,かつ10%重量減少温度(Td10)も408 ℃であり,BGPB 硬化物の高い熱分解安定性が確認された。さらに,4,4’- オキシビスフェノール(OBP)との反応物は257.4 ℃と高い融点を持つ結晶性の硬化物を与えるとともに,熱伝導率は0.32 W/m・K であり,非結晶性のDGBPA 硬化物に対して約1.5 倍の値を示した。

総説
  • 陶山 寛志, 舘 秀樹
    原稿種別: 総説
    2020 年 41 巻 6 号 p. 260-264
    発行日: 2020/11/10
    公開日: 2020/12/22
    ジャーナル フリー

    光分解性架橋剤とは,多官能の重合性基を光分解性ユニットでつないだ架橋剤である。通常の架橋剤と同様の方法で,分解ユニットを均一かつ確実に架橋樹脂に組み込みやすい。最近の報告例では,一般的なo- ニトロベンジルカルボニルユニット,クマリンメチルユニットとともに,第三級エステル,ルテニウム錯体などの光分解性ユニットが,アクリラートとのラジカル重合や,エン-チオール,クリックなどの様式で重合できるよう設計されている。これらは主に水溶性モノマー・ポリマーと組み合わされ,光分解性ヒドロゲルとして医用材料での応用展開が図られている。また,オキシムエステル系の光分解性架橋剤もアクリルまたはウレタン樹脂の架橋剤に用いられ,架橋構造の形成と,その光分解が確認された。光分解性架橋剤の架橋構造の形成と分解の物性評価には,UV レオメータが有用であった。

解説
feedback
Top