EU を中心としたプラスチックに関するサーキュラーエコノミー戦略では,プラスチック減容,代替およびリサイクルの高度化により解決を図ろうとしている。一方で,これらに加え,特にプラスチックの海洋ごみが引き起こす諸問題の解決策の一つとして, 経済産業省は,「海洋生分解性プラスチック」の研究開発を産官学上げて推進することを2019 年5 月に発表した。現状では海洋生分解性プラスチックの候補材料は非常に限られており,物性面においても必ずしも当該用途を満たすものとはなっていない。これを実現するためには新しい発想に基づく材料開発が望まれる。本解説では,はじめに海洋生分解性プラスチックの開発の背景となる科学と技術について紹介する。さらに,時限生分解性を実現するための,生分解性プラスチックの海洋での分解開始時期および分解速度制御について事例を交えて解説する。
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