ネットワークポリマー論文集
Online ISSN : 2434-2149
Print ISSN : 2433-3786
42 巻, 6 号
サスティナブル社会におけるネットワークポリマー
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総合論文
  • ──環境負荷低減を目指して──
    岡村 晴之
    原稿種別: 総合論文
    2021 年 42 巻 6 号 p. 223-228
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル 認証あり

    サスティナブル社会構築に貢献できるネットワークポリマーとして,環境負荷の低減がキーワードとなる。低炭素社会の実現に寄与できる,天然物由来の化学物質を使用し,使用後解架橋により除去が可能となるリワーク型ネットワークポリマーを使用することは,環境負荷低減への第一歩となりうる。本稿では,天然物由来の化学物質であるリモネンから誘導される構造を含むリワーク型ネットワークポリマーによるポリマーネットワークの制御とその機能性材料への応用を指向した著者の取り組みを紹介した。リワーク型ネットワークポリマーの合成,架橋,分解とその機能性材料への展開において,著者の研究成果を概説した。

総説
  • 林 寛一, 舘 秀樹, 陶山 寛志
    原稿種別: 総説
    2021 年 42 巻 6 号 p. 229-235
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル 認証あり

    必要に応じて分解が可能なポリマーは,リサイクルやフォトポリマーなどさまざまな用途で利用が期待できることから,研究が盛んに行われている。中でも光化学的手法により分解が可能なポリマーは,基材へのダメージが少なく,分解の制御が可能という優れた特徴をもつ。ポリフタルアルデヒド(Polyphthalaldehyde:PPA)は,主鎖の分解が可能なポリマーとして古くから知られているが,その特徴的な分解特性から,最近あらためて注目されている。著者らは,PPA の末端にナフタレンオキシムを導入した光で分解可能なPPA(NaPPA)を合成し,溶液やフィルム中での光反応の挙動を詳細に検討してきた。また,光照射前後の機械的特性をナノインデンテーションにより解析した。さらに,PPA とアクリル酸ブチル(BA)との共重合により粘着性を有するPPA 共重合体(NaPPAMA-BA)を合成し,光照射に伴う易剥離挙動を確認した。本稿では,これまで報告されてきたPPA とそれらを用いた機能性材料としての応用例をまとめるとともに,著者らが研究している光分解可能なPPA について紹介する。

  • −高安定性と高分解性の両立−
    木原 伸浩
    原稿種別: 総説
    2021 年 42 巻 6 号 p. 236-242
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル 認証あり

    ジアシルヒドラジンは熱的にも化学的にも安定な官能基であるが,次亜塩素酸ナトリウムのような非天然の酸化剤によって速やかにカルボン酸まで酸化分解する。そのため,ジアシルヒドラジンを架橋部位としてもつネットワークポリマーは,使用中は天然の刺激によって分解せず,高い耐熱性,耐薬品性,耐候性を持たせることができるが,使用後に次亜塩素酸ナトリウムによって直ちに脱架橋させることができる。ジアシルヒドラジン部位をもつ硬化体で硬化されたエポキシ樹脂は使用後に酸化分解除去できる酸化分解性接着剤となった。側鎖にエステル構造をもつポリマーは,ジアシルヒドラジン部位の形成による架橋と,酸化的脱架橋を繰り返すことができた。ジアシルヒドラジンによって架橋された透明板を反応射出成型によって得ることができ,次亜塩素酸ナトリウムによって可溶化した。ジアシルヒドラジンによって架橋された高吸水性ポリマーは次亜塩素酸ナトリウムによって直ちにポリアクリル酸ナトリウムに分解した。

  • 高田 健司, 金子 達雄
    原稿種別: 総説
    2021 年 42 巻 6 号 p. 243-250
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル 認証あり

    スーパーエンプラに代表されるポリイミドを,バイオ由来で得るために,特殊な糖代謝経路を構築した微生物により4- アミノ桂皮酸を生産した。4- アミノ桂皮酸は,桂皮酸の特徴でもある紫外線による光二量化が可能であり,これにより対称性の高いジアミンに変換することが可能であった。得られたジアミンは各種テトラカルボン酸二無水物との反応によりバイオ由来ポリイミドへ変換することが可能であり,バイオプラスチックの中でも最高レベルの耐熱性を示した。当該バイオ由来ポリイミドの側鎖がエステル基を有しているという特徴を活かして,アルカリ金属水溶液による処理を施すことで,バイオ由来ポリイミドへ水溶性を付与することに成功した。この水溶性ポリイミドは,多価の金属カチオンとの置換により,ネットワーク構造を形成し,水に不溶な性質を与えることもできる。さらに,側鎖カルボニル基をジアミンと縮合反応させることでハイドロゲル化が可能である。

  • 粕谷 健一, 鈴木 美和, 橘 熊野
    原稿種別: 総説
    2021 年 42 巻 6 号 p. 251-259
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル 認証あり

    EU を中心としたプラスチックに関するサーキュラーエコノミー戦略では,プラスチック減容,代替およびリサイクルの高度化により解決を図ろうとしている。一方で,これらに加え,特にプラスチックの海洋ごみが引き起こす諸問題の解決策の一つとして, 経済産業省は,「海洋生分解性プラスチック」の研究開発を産官学上げて推進することを2019 年5 月に発表した。現状では海洋生分解性プラスチックの候補材料は非常に限られており,物性面においても必ずしも当該用途を満たすものとはなっていない。これを実現するためには新しい発想に基づく材料開発が望まれる。本解説では,はじめに海洋生分解性プラスチックの開発の背景となる科学と技術について紹介する。さらに,時限生分解性を実現するための,生分解性プラスチックの海洋での分解開始時期および分解速度制御について事例を交えて解説する。

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