ネットワークポリマー論文集
Online ISSN : 2434-2149
Print ISSN : 2433-3786
46 巻, 2 号
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総合論文
  • 橋本 裕輝, 河西 拓也
    2025 年 46 巻 2 号 p. 98-110
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/04/04
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    5G 通信,5G ミリ波通信等で要求される大容量,高速通信の達成のために,銅張積層板(CCL)の改良研究が進められてきた。これら先端の通信には高周波帯の使用が要求される。周波数が高くなると誘電損失が大きくなり,熱が発生し,CCL 板に熱が蓄積されやすい。そのため,高周波通信においてCCL 板の撓み(ベント)が生じ,CCL 板回線がショート(短路)し発火を招くことがあるため,高いガラス転移点(Tg)と難燃性が求められる。しかしながら,難燃性の付与と,低誘電,高Tg(耐熱性),ピール強度(銅箔密着性),難燃性成分の相溶性はトレードオフの関係にあり,これまで先端CCL 材料の研究を困難にしてきた。本論では難燃性のメカニズムを解析し,難燃性と低誘電,高いTg,ピール強度(銅箔密着性)を有する難燃性低誘電化合物を示し,使用例を示しながら実証して行く。

総説
  • 一二三 遼祐, 冨田 育義
    2025 年 46 巻 2 号 p. 85-97
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/04/04
    ジャーナル 認証あり

    リン含有高分子材料はその特異な性質を活かし,幅広い分野で研究・実用化されている。その機能中心であるリン含有官能基は多彩な構造を取りうるが,本総説では特に,リン-硫黄間に直接結合を有するホスフィンスルフィド(P=S)基をもつ高分子材料に焦点を当て,その合成と特性を概説した。それら高分子材料は,P=S 基の優れた熱的・化学的安定性,遷移金属への配位性,高い分子屈折,低極性などの特長を反映し,難燃性材料,高分子配位子,高屈折率材料,低複屈折材料,低誘電材料として優れた特性を発現し,一部では従来のリン含有高分子材料を超える性能を示した。今後,これらの材料を電子・光学用途において実用化を図る上では,ネットワークポリマー材料への展開が重要性を増してくるものと考えられる。

ノート
  • Hisatoyo Morinaga, Takumi Inoue
    2025 年 46 巻 2 号 p. 78-84
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/04/04
    ジャーナル 認証あり

    Bio-based bis-functional limonene cyclic carbonate (BLC) was synthesized in 95% yield by the reaction of bisfunctional epoxide (bis-trans-LO) and carbon dioxide at 3.0 MPa in the presence of tetra-n-butylammonium chloride for 21 h at 100 ºC. The cross-linking reaction between BLC and branched polyethyleneimine (BPEI) afforded polyurethane networks with glass transition temperature (Tg ) of -11.7 to 54.9 ºC in 34% to 90% yields as a methanol-insoluble part,which depends on the feed ratio of the primary amino group to the carbonate group ([carbonate group]0:[primary amino group]0=1:0.18, 1:0.37, 1:0.92, 1:1.8, 1:3.7 (mol:mol)). The good tensile strength (11.7, 13.0 MPa) and lap shear adhesive strength (22.4, 21.4 MPa) of the network polymer were achieved at [carbonate group]0:[primary amino group]0=1:0.92 and 1:1.8 (mol:mol), respectively.

報文
  • 青栁 充, 井上 咲良
    2025 年 46 巻 2 号 p. 58-66
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/04/04
    ジャーナル 認証あり

    針葉樹ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)と広葉樹イタリアンポプラ(Populus nigra var. italica)から縮合・ランダム共役がすくないリグノフェノール(p-cresol type, LC)と140 ℃,170 ℃で作り分けた縮合,共役の分布が異なるアルカリリグニン(AL)を調製しFT-IR,1H-NMR,SEC による構造解析後,UV-Vis,蛍光分析,励起スペクトル測定,蛍光同調スペクトル測定,アセトフェノンを用いた消光解析を試みた。褐色の溶液のUVVisでは400 nm 以上の吸収は少なく,極大吸収の280 nm で励起した結果,樹種,調製法で差があるが300-600 nm に幅広い蛍光を示した。極大発光波長となった390 nm の蛍光の励起スペクトルを測定しUV-Vis と比較すると多段階のエネルギーレベルを通じた緩和過程がみられAL はより低エネルギーの発光を示した。蛍光同調スペクトルの結果,異なるStokes シフトの蛍光の重複が見られた。アセトフェノンを用いたStern-Volmer 消光解析の結果AL のStern-Volmer 係数はいずれも同じであったがLC はAL より高く,広葉樹は針葉樹の2 倍の傾きを示しエネルギー移動しやすいことを見出した。樹種や高分子構造中の縮合構造,局在化した共役系と,相互作用による高分子の高次構造がこれらのエネルギーの多段階緩和にかかわっていることが示された。

  • 香庄 揮一, 田野 絹香, 佐藤 絵理子, 大津 理人, 有田 和郎
    2025 年 46 巻 2 号 p. 67-77
    発行日: 2025/03/10
    公開日: 2025/04/04
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    加熱により架橋と脱架橋が可能なエポキシ硬化物の合成および易解体性接着材料への応用を目的とし,アミノ基含有アントラセン二量体とエポキシ化合物の重合および接着強度の評価を行った。加熱下で共有結合が解離する第一級ジアミンとして,9-アミノアントラセン二量体(A(N H 2)-D )と2(- 9-アントリル)エチルアミン二量体(A(C 2N H 2)-D )を用いた。A(C 2N H 2)-D は,A(N H 2)-D と比べてアミノ基周辺の立体障害が小さく,エポキシ化合物に対して高い反応性を示した。また,以前報告した9-アントラセンカルボン酸二量体(A(C O 2H )-D )と比較すると,A(C 2N H 2)-D とエポキシ化合物の重合はより低温で進行し,重合中のアントラセン二量体部位の熱解離を抑制できるため,高ゲル分率で硬化物が得られた。重合温度より高温で加熱すると脱架橋が進行した。さらに,A(C 2N H 2)-D はA(C O 2H )-D よりエポキシ化合物との相溶性に優れ,A(C 2N H 2)-D を用いたエポキシ硬化物は,A(C O 2H )-D より高い引張せん断接着強さと解体性を示す易解体性接着材料として機能した。

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