ネットワークポリマー
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20 巻, 3 号
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  • 柴山 充弘
    1999 年20 巻3 号 p. 113-121
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    ゴムやエポキシ樹脂などではゲル化点の決定は重要であるが, 同じく架橋系高分子であるゲルの場合, できあがったゲルが目的の性質を発揮すればよく, いつゲル化したかについてはあまり問題にしない場合が多かった。ところが, ゲル化点近傍では様々な面白い物性が現れ, ゲル化後のゲルとは異なった世界がある。既に広い分野で実用化されている機能性ゲルに新規性を持たせるためには, このゲル化点近傍の物性に注目する必要がある。この総説では, ゲル化過程を非接触・非破壊的にモニターできる時分割動的光散乱法について概説する。この手法によればゲル化は散乱強度の急激な増大, フラクタル性の発現スペックルの発現などとして明確に決定できる。さらに, ゲル化点近傍でのダイナミクスはゲル化のみならずガラス化についても敏感であるため, この分野の研究は機能性ゲルの開発に多くの示唆を与えると思われる。
  • 安藤 勲, 趙 晨華, 小林 将俊, 黒木 重樹
    1999 年20 巻3 号 p. 122-129
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    高分子ゲルは高分子網目鎖と溶媒しばしばプローブ分子からなっている。ゲル特有の物性・機能は網目鎖の構造, 網目鎖と溶媒分子またプローブ分子との分子間相互作用, そしてそれに伴う網目鎖, 溶媒, プローブ分子のダイナミックスにより生ずる。ゲルの構造およびダイナミックスを精度高く解明することはゲルの科学にとって重要な課題の一つである。NMRはゲルの構造およびダイナミックスについて優れた情報を与える。しかし, ゲルを溶液NMRを用いて測定すると, ゲル中の運動性の高い部分のみが観測され, 運動性の低い部分は観測されないために, 高分子ゲルのすべての部分の完全な情報を得るためには, いくつかのNMR技術を組み合わせて測定する必要がある。本総説では, いくつかのNMR技術を組み合わせ高分子ゲルの構造およびダイナミックスを解析した結果を述べる。
  • その実験結果と理論解析
    加々田 剛, 襲 剣萍, 長田 義仁
    1999 年20 巻3 号 p. 130-137
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    高分子ゲルをこれまで以上に様々な分野で多彩に, 機能的に応用するためには, ゲルの表面・界面特性の重要性に着目しなければならない。例えば, 体内補助材料としてゲルを応用するに際しての生体適合性, 接着性こそは, ゲルの表面特性と極めて密接な関連がある。我々はゲルの表面摩擦に関する系統的研究を展開してきた。その結果, 固体にお.ける摩擦法則 (F=μW) がゲルにおいては全く成り立たず, その摩擦係数は10-3オーダーという極めて小さな値を示すことが初めて明らかとなった。これは「摩擦」という古典力学の分野に新たな1ページが加えられるべき重要な発見と我々は捉えており, その機構を実験的, 理論的に解明することを現在積極的に進めている。その結果, 界面での相互作用によってゲルの摩擦特性を統一的に表現できる理論式の導出に成功した。
  • 浦上 忠
    1999 年20 巻3 号 p. 138-147
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    アルコール水溶液からの水選択透過性高分子ゲル膜, 有機液体分離用高分子ゲル膜, 医療用高分子ゲル膜, 触媒機能高分子ゲル膜, キャリヤー輸送高分子ゲル膜, 外部応答性高分子ゲル膜のそれぞれの機能の促進を目指したネットワークポリマーの構造制御が化学的, 物理的な観点から行われた結果を紹介した。ネットワークポリマーの構造制御は, 従来の分離機能の改善に重要な役割を果たしていることを明らかにするとともに, さらなる発展の提言がなされている。
  • 青柳 隆夫, 岡野 光夫
    1999 年20 巻3 号 p. 148-156
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    N-イソプロピルアクリルアミド (IPAAm) のホモポリマーは極めて敏感な温度応答性により下限臨界溶液温度 (LCST) を示す。一方, アクリル酸のような親水性のコモノマーとの共重合体では, 温度応答性の敏感性はコモノマー組成の増大により消失し, しかもLCSTは高温側に大きくシフトする。イソプロピルアミド基の連続的な繰り返し構造が, 温度応答性の敏感性を規定する重要な構造因子と考え, IPAAm連鎖を維持させて親水性成分を導入する2つの方法の有効性を検討した。第一は, 比較的高分子量のポリエチレングリコールのマクロモノマーとの重合により調製したハイドロゲルである。このハイドロゲルは, アクリル酸共重合ゲルとは異なり, IPAAmホモポリマーとほぼ同様な平衡膨潤度曲線を示し, 温度変化に対して極めて鋭敏な体積相転移を生起した。第二は, 共重合後のポリマーがイソプロピルアミドの繰り返し連続構造を持ち, しかも親水性基の導入を意図して設計した新規な2-カルボキシイソプロピルアクリルアミドを用いたIPAAmとの共重合体である。この共重合体はカルボキシル基の導入によってもLCSTがほとんど影響されなかった。これらの結果は, 温度応答性には親水性と疎水性の単なる組成のみでなく, IPAAmの繰り返し連続構造が極めて重要であることを示すものであり, 反応性と温度応答性を兼ね備えた機能性高分子あるいはハイドロゲルの分子設計の新しい方法の提案である。
  • 構造的特性と形成機構
    山中 重宣, 湯口 宜明, 浦川 宏, 梶原 莞爾, 粹谷 信三
    1999 年20 巻3 号 p. 157-163
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    2官能モノマー (VT-M) は架橋剤4官能モノマー (F4-C) の存在下でヒドロシリル化反応によりポリシロキサンネットワークを形成する。その反応過程を時分割小角X線散乱により実時間観察し, ネットワークの構造と形成の樹髄Flory-Stockmayerの古典的なモデルを基礎として構築した樹木モデルで解析した。
    モデル解析結果からポリシロキサンネットワークは次のようなプロセスで形成されると考えられる。まずヒドロシリル化反応は均質に進む。分岐構造を有するクラスターが多数形成され, 反応時間と共に重量平均サイズは増加し, サイズ分布は広くなる。この段階では, まず核となる密に分岐したクラスターが形成される。その後は密に分岐せずに星型に成長する。その星型クラスターがカップリングしてネットワークを形成する。ゲル化によりゾル部分のクラスターが少なくなると, ネットワーク内で未反応の官能基が反応して環が形成され, ゲルは収縮する。マクロ的には反応後期にシネリシスが起きるのに対応している。クラスター内の分岐密度は更に密になり, 結果としてクラスターサイズの減少となる。
  • 中西 英二, 杉本 英樹, 吉村 大祐, 花井 隆良, 岡本 茂, 日比 貞雄
    1999 年20 巻3 号 p. 164-170
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    我々は, これまでにトリプトファン (Trp) 残基を含むポリペプチドゲルをトリフルオロ酢酸 (TFA) で処理すると呈色し, Trp残基が正に解離することにより可逆的に色変化することを明らかにしてきた。今回, TFA処理したL-グルタミン酸とL-Trpから成るコポリペプチド (GAT-T) を用いて, アニオン性薬物との相互作用およびペプチドマイクロスフェアーからの溶出挙動について検討を行った。可視光および蛍光スペクトル測定において, 嵩高い低分子の添加によりスペクトルが変化し, GAT-TのTrp残基とアニオン性薬物とが相互作用していることが明らかとなった。さらに, GAT-Tのマイクロスフェアーを用いてアニオン性薬物の溶出挙動を調査したところ, 未処理のマイクロスフェアーに比べて, 結合量, 溶出量ともに大きくなり, 吸脱着と共にマイクロスフェアーが色変化することが確認された。
  • 疎水化多糖-疎水化ポリイソプロピルアクリルアミド系
    秋吉 一成, 車田 敏, 姜 義哲, 砂本 順三, Tania PRINCIPI, Francoise M. WINNIK
    1999 年20 巻3 号 p. 171-176
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    アルキル置換プルラン (C16P) と蛍光プローブとしてピレン基を有するアルキル置換ポリイソプロピルアクリルアミド (PNIPAM-C18py) との水中での相互作用を, 蛍光スペクトル法と動的光散乱法により評価した・C16P (0.5 mg/ml) とPNIPAM-C18py (0.10 mg/ml) は, 水中で自発的に混合して, 直径約45 nmの複合ナノ微粒子を形成した。蛍光スペクトル法でピレンのエキシマー発光の強度を追跡することにより, 2種のポリマーの疎水基間の会合が確認された。したがって, この疎水基の会合を介して2種の高分子が会合していることが示唆された。このナノ微粒子中のPNIPAM鎖は, その曇点以上の温度 (35℃) で, 凝集して相分離することがわかった。その結果, 微粒子間の会合が誘起されて直径約100 nmの会合体を形成した。この変化は可逆的であった。このように, 異種疎水化高分子の会合により, 熱応答性複合ナノゲル微粒子が調製しえることが明らかになった。
  • 大塚 英幸
    1999 年20 巻3 号 p. 177
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
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