ネットワークポリマー
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27 巻, 3 号
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  • 門多 丈治, 長谷川 喜一, 舩岡 正光
    2006 年27 巻3 号 p. 118-125
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    木材中のリグニン成分から誘導される新規材料リグノフェノールの工業的利用法の確立が望まれている。リグノフェノールから工業製品へのルートが開拓されれば, 石油から合成製品という現在の資源の流れに変わる資源循環システムとなりうる。さらに, 廃棄建材などの環境問題に対する解決策にもなる。リグノフェノールは, 樹木成分の約30%を占めるリグニンの3次元網目構造の一部を解きほぐした分子量数千から数万のポリマーであり, 有機溶媒や, アルカリ水溶液に可溶である。また, その構造中には多くのフェノール性水酸基を含んでおり, フェノール樹脂とよく似た性質を示す。よって, フェノール樹脂代替材料としての可能性を秘めており, 加えてリグノフェノールに基づく新たな性能を付与することもできると考えられる。本研究では, リグノフェノールを原料とする新規エポキシ樹脂を合成し, その工業原料としての適性について検討した結果, 熱的, 機械的性質に優れた材料となることを見出した。
  • 機械的特性
    酒井 哲也, 久保内 昌敏, 新井 和吉, 大野 茂, 津田 健
    2006 年27 巻3 号 p. 126-134
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    攪拌条件の制御が可能な試験片装置を使用し, 硬化剤混合度が異なる不飽和ポリエステル樹脂を作製した。機械的特性における硬化剤濃度分布の影響と二次硬化の効果について検討した。これらの試験片について二次硬化を行い, 曲げ強さを測定し, 平均値, 標準偏差および分布の形状によって信頼性工学的見地から評価を行った。最も攪拌効率の良い手混ぜで作製した試験片の強度分布は正規分布に従い, 標準偏差も小さい値を示した。これに対して攪拌装置によって作製した試験片は正規分布にならず, ばらつきが大きくなった。二次硬化時間を変化させたハンドミキシング材についてDSC分析を行い, 二次硬化時間を決めた。攪拌装置によって作製した全ての試験片について二次硬化を行ったところ強度および弾性率の増加が見られ, 成形条件による機械的性質の違いは無くなった。しかしながら, 二次硬化による硬化収縮が起こり, 樹脂内部の微小欠陥に対しての残留応力が増加したため, 一次硬化材に比べて曲げ強さの標準偏差はとても大きくなった。不飽和ポリエステル樹脂成形品は二次硬化を行うことで, 機械的特性は向上するが, 残留応力の増加によってばらつきは大きくなるため, 注意すべきである。
  • 腐食劣化挙動
    酒井 哲也, 久保内 昌敏, 新井 和吉, 大野 茂, 津田 健
    2006 年27 巻3 号 p. 135-144
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    攪拌状態を制御できる攪拌装置を用い, 硬化剤の不均一な不飽和ポリエステル樹脂試験片を作製した。80℃, 30wt%の硝酸水溶液において50および250時間これらの試験片を浸せきさせた後, 曲げ強さおよび腐食深さを測定した。さらに平均値, 標準偏差および分布の形状によって腐食挙動および機構を信頼性工学的見地から検討した。ハンドミキシングで作製した試験片の曲げ強さ分布は正規分布に従い, 腐食試験後の曲げ強さ分布は形状を維持したまま劣化した。攪拌装置により作製した硬化剤が少ない注型板, 硬化剤が偏在する注型板, 硬化剤多く存在する注型板について腐食試験を行った。硬化剤が多い注型板は著しく腐食したのに対し, 硬化剤の少ない注型板の腐食は遅かった。さらに, 偏在する注型板の腐食は大きなばらつきをもって腐食した。硝酸水溶液中における不飽和ポリエステル樹脂の劣化機構は硬化剤中に残留する希釈剤が溶出することによってピットを生じるためであり, そのため曲げ強さの低下は硬化剤の濃度に依存する。不飽和ポリエステル樹脂中の硬化剤濃度が増加するにつれて, 一次硬化材の強度は増加し, 腐食深さもまた増加した。それゆえに, 機械的特性分布は腐食が進行するとともに複雑に変化した。耐食性を要求される化学装置等に不飽和ポリエステル樹脂を使用する場合, 適量の硬化剤を使用する必要がある。
  • 野本 雅弘, 山岸 忠明, 中本 義章
    2006 年27 巻3 号 p. 145-150
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    検出器として示差粘度計を接続したサイズ排除クロマトグラフィー (SEC-VISCO) を用いて, ノボラックの分子量を評価した。絶対分子量200~2,300,000の狭分散及び単分散ノボラックから, Universal Calibration Curve (UCC) を作成した。このUCCと分子量校正用ポリスチレンから作成したUCCを比較した結果, 両者は良く一致した。したがって, 分子量200以上のノボラックに対して, SEC-VISCOにより絶対分子量の評価が可能である。また, SEC-VISCOは, 二核体の異性体3種における流体力学的容積の微小な差を検知できることを例証した。二核体の1種類は分子内水素結合を形成するので, 流体力学的容積に差が生じると推察した。
  • 打矢 裕己, 小林 恒夫
    2006 年27 巻3 号 p. 151-158
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    臭素化ビスフェノールA (BPA) 型エポキシ樹脂やオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂 (ECN) から構成されるエポキシ樹脂積層板について熱分解および反応熱分解GC-MS法による組成分析法を検討した。臭素化BPA型エポキシ樹脂は熱分解GC-MS法では無秩序な脱臭素反応が生じるため組成分析は困難であったが, 反応熱分解GC-MS法では架橋体中の臭素化BPAは軽微な脱臭素反応を伴って臭素化BPAメチルエーテル体として検出され, 定性可能であった。また, 臭素化BPA型エポキシ樹脂とECNが混在する積層板中のノボラック樹脂は通常行なわれている一段階での熱分解法では多量のBPA分解物により定性分析が困難であった。しかし, 熱分解および反応熱分解GC-MS法を組み合わせた, いわゆる二段階方式の適用では, BPA分解物による影響を低減させることができた結果, ノボラック樹脂を構成するフェノール類を分析することでノボラック樹脂の有無を判断することが可能となった。
  • 柴山 充弘, 狩野 武志
    2006 年27 巻3 号 p. 159-167
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    近年, 全く新しい概念に基づくゲルが相次いで開発されてきている。それらはいずれも驚異的な力学物性を持っており, さまざまな用途開発が進行中である。ここでは, 小角中性子散乱や光散乱を使ってそうしたゲルの構造やダイナミクスを研究した成果を紹介し, なぜそのような物性が発現するかについて議論するとともに, 新奇ネットワークポリマーに寄せる期待について述べる。
  • 原口 和敏
    2006 年27 巻3 号 p. 168-179
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
    有機/無機ナノコンポジットの概念を, 機能性ソフトマテリアルとして注目を受ける高分子ヒドロゲルの分野に展開し, 特異的な “有機 (高分子) /無機 (クレイ) ネットワーク構造” を構築することにより, 従来の有機架橋剤を用いた高分子ヒドロゲルの抱える多くの課題を一挙に解決できることを見出した。特に, 力学物性の改良は著しく, 脆弱で取り扱いにも不便であった有機架橋高分子ヒドロゲルを, 同一 (高分子/水) 組成において, 3000倍を超える破壊エネルギーを持つ高強度・高タフネスゲルへと変身させることが出来た。無機ナノ粒子 (層状剥離クレイ) を超多官能架橋剤として用いた有機/無機ネットワークからなるナノコンポジット型ヒドロゲル (NCゲル) が, どのような機構で優れた力学物性を発現したかをネットワーク構造の視点から考察した。
  • 佐藤 泰
    2006 年27 巻3 号 p. 180
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2012/08/20
    ジャーナル フリー
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