ネットワークポリマー
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37 巻, 3 号
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報文
  • 玉祖  健一, 小川  亮, 松本  幸三, 遠藤  剛
    2016 年 37 巻 3 号 p. 108-115
    発行日: 2016/05/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    近年,情報端末電子機器の小型化や大容量情報の高速伝送・処理化に伴って,回路基板の材料であるエポキシ樹脂硬化物には低誘電率化が求められている。低誘電率化を付与できる硬化剤として活性エステル樹脂が注目されている。活性エステル樹脂でエポキシ樹脂を硬化した場合,水酸基が発生しないため低誘電率かつ耐湿性に優れた硬化物を与える。本研究では,活性エステル樹脂のコンセプトを応用し,活性リン酸エステル硬化剤の創出を目指した。リン酸エステルとエポキシ樹脂の間で同様の付加反応が起こるかどうかを確認するため,種々リン酸エステルを合成し単官能エポキシ樹脂との反応を調べた。その結果,ジメチルホスフィン酸エステルおよびN,N ’ジメチルリン酸アミドエステルで活性エステル樹脂と同様の付加反応が起こることを確認した。N,N ’- ジメチルリン酸アミドエステルを基に活性リン酸エステル硬化剤を合成し,エポキシ樹脂硬化物を作成した。得られた硬化物の吸水率は予想に反して高い値を示した。しかし,硬化物のTg は高く,熱分解後の残炭率も高いことから,活性リン酸エステル硬化剤は高耐熱性と難燃性を付与できる硬化剤であることが示唆された。
  • Inoue Yukiko, Matsumoto Kozo, Endo Takeshi
    2016 年 37 巻 3 号 p. 116-121
    発行日: 2016/05/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    Radical copolymerization of 5-(methacryloyloxy)methyl-1,3-oxathiolane-2-thione (DTC) and styrene derivatives such as 4-(t-butoxy)styrene, 4-(t-butyldimethylsiloxy)styrene, and 4-trimethylsiloxystyrene were carried out in tetrahydrofuran using 2,2’-Azobis(isobutyronitrile) (AIBN) as a radical initiator. The copolymerization proceeded smoothly to give the corresponding polymers in high yield. The copolymer composed of DTC and 4-trimethylsiloxystyrene was deprotected by addition of 1M HCl aq. in ethyl acetate to give the corresponding copolymer having DTC and phenol structures. Thermal properties of the obtained polymers were evaluated by thermal gravimetric analysis (TGA) and differential scanning calorimetry Synopsis (DSC). These polymers showed 10 wt % loss temperatures (Td10) in the range from 191 to 234 ℃. The polymers obtained here exhibited glass transition temperature (Tg) in the range from 105 to 139 ℃. Furthermore, cyclic dithiocarbonate moieties in the copolymers underwent a ring-opening polymerization by heating in the presence of 4-hydroxyphenylbenzylmethylhexafluorophosphate as a thermally latent cationic initiator to give the corresponding ross-linking polymer.
  • 川守  崇司, Jeffrey Gopez, Craig J. Hawker, 海野  雅史
    2016 年 37 巻 3 号 p. 122-130
    発行日: 2016/05/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    形状保持可能で電荷依存性が少ないイオン結合性コアセルベート型ハイドロゲルの作製を目的に,スルホン酸ナトリウム基を側鎖に修飾したポリ(スチレン-b- アリルグリシジルエーテル)ダイブロックポリマー(数平均分子量:5k-24k)とグアニジウム塩酸塩を側鎖に修飾したポリ(アリルグリシジルエーテル-b- エチレンオキシド-b- アリルグリシジルエーテル)トリブロックポリマー(数平均分子量:13k-20k-13k)の組合せを検討した。その結果,負電荷のモル分率を37.2 mol%から84.9 mol%に変化させても,形状保持可能なハイドロゲルを形成することができた。このことから,強固なハイドロゲル形成方法として,イオン性結合と疎水性相互作用の組合せが有用であることを確認した。
  • 水﨑  真伸, 榎本  智至, 原  祐樹
    2016 年 37 巻 3 号 p. 131-137
    発行日: 2016/05/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    ラジカル重合開始剤を用いずに液晶中でモノマーの重合反応を起こす手法について検討した。液晶中に溶解させたモノマー,2,6- ジメタクリロイルオキシナフタレン(2,6-DMANaph)に紫外光を照射すると,2,6-DMANaph の光フリース転移でラジカルの発生が起こり,重合反応が進行,高分子層を形成することが,IR スペクトル,High Performance Liquid Chromatography( HPLC),Scanning electron microscopy( SEM),およびTransmission electron microscopy(TEM)分析により推測された。2,6-DMANaph を用いて液晶セル中に高分子層を形成させる場合,重合反応開始のためにラジカル重合開始剤を用いなくてもよいので,紫外光照射による電荷保持の低下は無く,液晶デバイスへの応用が可能であることが示された。
  • 富岡  伸之, 岡  英樹, 本田  史郎
    2016 年 37 巻 3 号 p. 138-144
    発行日: 2016/05/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    自動車軽量化要求の高まりを受け,炭素繊維強化複合材料(CFRP)が注目を浴びている。CFRP の量産車展開に向け,スチール部材に匹敵する生産性の実現が重要課題となる。これに対し,生産性に有利な成形法であるレジントランスファー成形(RTM)に着目し,この成形サイクルタイムを10 分以内とすることを目標とした。 ハイサイクルRTM では,型の昇降温時間ロスを排除すべく,成形サイクル全体に渡り型温を一定とする。この一定温度下で,注入時には樹脂は硬化せず流動性を保持し,炭素繊維基材へ含浸した後,速やかに硬化しガラス状態に至り,変形なく脱型できることが求められる。そこで,樹脂の硬化過程全般に渡る分析が可能な誘電分析を用い,長い流動時間と短い硬化時間を両立可能なエポキシ樹脂の設計に取り組んだ。反応速度論に基づき,汎用のアミン硬化系に比べ,アニオン重合系が,これらを両立させる上で本質的に有利であることを明確にした。 また,アルコールによる連鎖移動を導入したアニオン重合系と,酸無水物との交互アニオン重合系で,流動時間と硬化時間の目標を達成し,10 分サイクルのRTM にて,大型CFRP 部材の成形にも成功した。
総説
  • 松本 幸三, 遠藤 剛
    2016 年 37 巻 3 号 p. 145-152
    発行日: 2016/05/10
    公開日: 2016/06/10
    ジャーナル フリー
    近年,バッテリーや発電デバイス,センサー等の安全性と信頼性に対する要求が高まっており,これらに使用される安全かつ高性能な新規電解質材料の開発が必要とされている。イオン伝導性を有する電解質材料としては,これまでは溶媒に支持電解質を溶解させて得られる電解液を使用するのが一般的であったが,液漏れや溶媒の揮発性,発火等を抑えるために,電解液をゲル状にしたいわゆるゲル電解質や,溶媒を使用しない高分子固体電解質のなどの開発が進められている。本総説では,(i)ネットワークポリマー固体電解質の開発,(ii)ネットワークポリマーとイオン液体を組み合わせた新規なイオン液体ゲル電解質の開発,ならびに( iii)ネットワークポリマーとカーボナート系電解液を組み合わせたリチウムイオンバッテリー用のゲル電解質の開発に関して,著者らの最近の研究についてまとめて解説する。
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