神経心理学
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特別講演III
  • 長谷川 功
    2018 年 34 巻 3 号 p. 184-189
    発行日: 2018/09/25
    公開日: 2018/10/11
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    現代の神経科学は,『脳の特定の解剖学的区分に限局する細胞の性質がその脳区分に宿る機能を表す』とする機能局在論のパラダイムのもと,目覚ましい発展を遂げてきた.しかし,複雑系としての脳の動作原理を説明するのに,機能局在論に基づく細胞活動記録や脳機能マッピングのアプローチだけでは限界があることは否めない.筆者は,視覚認知の基盤をなす大脳の巨視的ネットワークにおける信号の流れや分散的・同期的な神経表現の解明を目指している.本稿では,脳の表面に柔軟な電極を張り巡らせるメッシュ型皮質脳波(ECoG)の技術を活かして,皮質に分散した視覚カテゴリー認知に関わる微細機能構築の非線形的・動的な性質を明らかにすることにより,機能局在論と全体論の発展的統合を目指そうとする最近の試みについて紹介する.

シンポジウムIII 座長記
シンポジウムIII 認知モデルと方法論
  • 田邊 宏樹
    2018 年 34 巻 3 号 p. 192-199
    発行日: 2018/09/25
    公開日: 2018/10/11
    ジャーナル 認証あり

    脳機能イメージング研究における領域間の関係性の解析は,大きく機能的結合(functional connectivity)と因果的結合(effective connectivity)に分類できるが,Dynamic Causal Modeling(DCM)は後者の代表的解析法である.DCMの特徴は,神経レベルでモデルを作成し,神経活動を脳血液動態反応へ順モデルを使って変換し,ベイズ手法により神経・脳血液動態それぞれのパラメータを推測するという点である.また豊富なモデル選択手法が提案されており,実験者が目的や仮説に応じて使用できる.本稿では,DCMの基本的原理と使用上の注意点について概説する.

  • 下川 哲也
    2018 年 34 巻 3 号 p. 200-208
    発行日: 2018/09/25
    公開日: 2018/10/11
    ジャーナル 認証あり

    グラフとは,ノードとリンクで構成されるトポロジーを扱う数学の1つであり,近年は脳研究の分野でもネットワーク解析の基本理論として注目されるようになってきた.友達関係やインターネットなどのネットワークでは,ノードやリンクはすでに定義されている.しかし脳の場合,ノードやリンクを定義し,推定することから始めなくてはいけない.たとえば機能的結合の場合,2つの脳部位それぞれから得られる時系列データの相関係数がある閾値よりも高ければリンクがあるとみなす.この閾値の決め方には様々な方法があり,選び方によって最終的なグラフ理論による解析結果に大きな影響を与えうる.そのあたりの問題点について解説を行う.

  • 金野 竜太
    2018 年 34 巻 3 号 p. 209-217
    発行日: 2018/09/25
    公開日: 2018/10/11
    ジャーナル 認証あり

    神経心理学における基本的な研究姿勢は,脳損傷患者の脳損傷部位(lesion)を同定し,どのように心理活動が障害されるのか(symptom)詳細に検討することである.症例Tanや症例H.M.に代表されるような単一症例研究は,脳とこころの関係をモデル化する際の出発点となる.しかし,モデルの妥当性を検証する際,多数症例による検討が必要になる場合がある.voxel-based lesion-symptom mapping(VLSM)は多数症例による検討に統計的妥当性を与える方法である.しかしそれは同時に,統計的過誤を含む危険性を有することも意味する.したがって,VLSMの結果の解釈には注意を要する.

  • 伊集院 睦雄
    2018 年 34 巻 3 号 p. 218-226
    発行日: 2018/09/25
    公開日: 2018/10/11
    ジャーナル 認証あり

    こころのしくみや機能を明らかにするにあたり,認知心理学(あるいは認知神経心理学)では,コンピュータ・メタファーを用いた情報処理的アプローチが用いられてきた.これに対して,メタファーの源泉を脳に求め,脳の情報処理様式で動作するシステムをコンピュータ上に構築し,シミュレーションによってこころを理解しようとする研究手法が,ここで紹介するコネクショニスト・アプローチである.本稿では,語彙処理,特に読みに関する脳型情報処理モデルを具体的に紹介しながら,コネクショニスト・アプローチの特徴を述べ,従来の研究手法との違いを明らかにする.また,近年の注目すべき動向についても簡単に触れる.

  • 平山 和美
    2018 年 34 巻 3 号 p. 227-234
    発行日: 2018/09/25
    公開日: 2018/10/11
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    Rizzolattiらは視覚情報処理の3つの流れのモデルを提唱した.腹側の流れ,腹背側の流れ,背背側の流れである.背背側の流れは,頭頂間溝や上頭頂小葉に向かい,対象の位置や運動,形を分析して,対象に向けた行為の無意識的なコントロールに関わる.背背側の流れの病変では,視覚性運動失調,把握の障害や自己身体定位障害が起こりうる.ここでは,これまでヒトの頭頂間溝損傷の結果としては報告されたことのない2つの症状,病巣と反対側からの音に対する衝動性眼球運動の方向付けの障害と,病巣と反対側にある放射状オプティック・フローの中心に対する知覚障害について記し,その特徴を背背側の流れ機能との関係で論じる.

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