神経心理学
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35 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集 体性感覚認知障害の諸相
  • 平山 和美
    2019 年 35 巻 3 号 p. 122-123
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー
  • ―痛覚,温冷覚を中心に
    花田 恵介
    2019 年 35 巻 3 号 p. 124-133
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    頭頂弁蓋の内側面にある第二体性感覚皮質や,後部島皮質を損傷した患者の多くに,温冷覚や痛覚の著しい障害が生じる.生じる障害は,温冷覚と痛覚とでそれぞれ程度や性質が異なりうる.また,刺激が強くても知覚できないという状態だけでなく,痛み刺激を知覚でき程度の評価もできるのに逃避反応や情動反応が起こらない状態や,温冷刺激を痛みとして感じてしまい温かいとか冷たいとかは感じない状態などが起こりうる.これらの障害について,解剖学的背景,過去の症例,神経科学上の知見などを引いて解説した.また,これらの領域の損傷によりそれぞれ異なった特徴の障害を呈した3症例を紹介した.

  • 山田 麻和
    2019 年 35 巻 3 号 p. 134-141
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    右大脳半球の脳梗塞後に触覚性失認を伴わずに形態失認を示した自験症例を紹介した.要素的体性感覚は保たれていたが,左手では二次元および三次元の形態のみ認識ができなかった.しかし,日常物品の触覚認知は十分に保たれていた.頭部MRIでは,右中心前回,中心後回と右前頭皮質に虚血性病変があった.これまでに知覚型触覚性失認の報告は5例ある.触覚性失認に加えて,このうち3例は形態失認および素材失認を示し,1例は素材失認のみ,もう1例は形態失認と軽度の素材失認とを示した.我々の症例は,触覚性失認のない形態失認のみを呈した最初の事例であり,触覚認知プロセスと神経解剖学についてのさらなる洞察に繋がる可能性がある.

  • 山田 浩史
    2019 年 35 巻 3 号 p. 142-148
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    右頭頂葉皮質下病変を有する多発性硬化症の症例研究から連合型触覚性失認の臨床的特徴や責任病巣および発症機序について解説した.本症例は要素的感覚が正常で素材や形態の弁別もほぼ可能であるにも関らず,左手で触った物品の呼称が困難であった.右手にはこの障害は認められず,左手で触った物品の用途説明とカテゴリー分類が不可能であったことから,左手の連合型触覚性失認と考えられた.責任病巣は角回を中心に拡がり,発症機序として体性感覚情報と側頭葉の意味記憶との離断によって出現すると推測された.

  • 五味 幸寛
    2019 年 35 巻 3 号 p. 149-152
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    多様式失認は,複数の感覚様式に失認が認められる状態をいう.これまでに報告されている多様式失認は視覚と触覚の失認であり,触覚失認単独の場合とは臨床症状や責任病巣が異なる.多様式失認の病巣は左側もしくは両側の後頭葉及び側頭葉であり,この領域にある外側後頭複合が視覚や触覚の様式を超えて形を認識する上で重要な役割を担っている可能性がある.触覚認知は第一体性感覚野から縁上回,角回,そして外側後頭複合を経由して側頭葉前方へと向かう腹側経路によって処理されている可能性が考えられている.

  • 坂本 和貴, 平山 和美
    2019 年 35 巻 3 号 p. 153-160
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    身体パラフレニアとは,病巣と反対側の麻痺した身体部位に対して,他の誰かの体の一部であると主張する症状である.右半球損傷で起こることが多く,責任病巣としては島,視床やその周辺の白質,前頭葉内側が重視される.多くの場合,片麻痺の病態失認,半身無視,重度の体性感覚障害の3つを伴う.しかし,片麻痺の病態失認とは二重解離し,半身無視のない症例や重度の体性感覚障害のない症例の報告もある.片麻痺の病態失認も半身無視もなく体性感覚障害が非常に軽度であった自験例も紹介しながらこの症候について解説した.

原著
  • logopenic variant of primary progressive aphasia(LPA)の失語症状との比較検討
    加藤 梓, 今村 徹
    2019 年 35 巻 3 号 p. 161-170
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/10
    [早期公開] 公開日: 2019/08/30
    ジャーナル フリー

    症例は79歳,右利き男性.物忘れ,幻視,ことばの出にくさを主訴に初診した.Parkinson症状は認められなかった.注意障害と保続,近時記憶障害,構成障害を認めた.言語面では発話は流暢であった.発語失行,失文法はみられなかった.音韻性錯語と喚語困難が明らかであった.言語理解は語,統語レベルとも良好であった.文の復唱では言語性短期記憶の低下による障害を認めた.文の聴覚理解では文の長さに影響され,3文節文以上から困難であった.Dopamine transporter(DAT)SPECTで線条体での集積が軽度低下,脳血流SPECTで左側頭・頭頂葉に顕著な集積低下がみられた.本症例の臨床像はprobable dementia with Lewy bodies(DLB)に一致していたが,言語症状はlogopenic variant of primary progressive aphasia(LPA)の臨床像と一致していた.

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