ポジ型電子線レジストのドライエッチング耐性と感度とは両立し難い性能であるといわれているが, 橋かけしたレジストの強制現像によるとドライエッチング耐性を低下させることなく, 感度を向上させることができる. 分子量とN-メチロール化メタクリルレアミド (mMAA) の含有率をかえながら, メチルメタクリレート (MMA) とmMAAとの共重合体を合成し, いろいろな現像条件下における電子線照射特性をしらべた. mMMA基はきわめて熱反応性に富み定量的に架橋を生成するので, 共重合体の主鎖中に少量のmMAAを導入することによって, 未照射部のレジスト膜を効率よく不溶化できることがわかった. 強制現象によってそのPMMA共重合体の感度は8-10μC/cm
2, つまり標準現像条件下におけるPMMAの約7倍まで向上させることができた. しかしながら, いくつかの場合にはコントラストの低下と膜厚の減少がなお観察された. 膜厚の減少を抑制しながら感度の向上をはかるためには, 完全に硬化したレジスト膜が少量の電子線照射量で可溶化できるように架橋密度を厳密にコントロールすること, ならびに一定密度の架橋点を含んでいるレジスト高分子が不溶化されるに十分な大きさの分子量であることが不可欠の条件であることが明らかとなった. もしこれらの条件が完全に満たされたなら, この共重合体レジストはさらに高い感度を示すものと期待される.
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