日本橋学館大学紀要
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10 巻
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 古賀 毅
    原稿種別: 本文
    2011 年 10 巻 p. 3-13
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2018/02/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は、近代公教育を構成する諸原理の歴史的コンテクストを確認し、20 世紀の社会変化という視点でみた場合にそれが今日的にどのような意義をもつのかを考察することにある。〈義務・無償制〉これらの原理は、18 〜 19 世紀に西欧の国民国家が形成される過程にその起源をもつ。西欧諸国は、キリスト教会に代わって子どもたちを教育し、国力を強化しようと考えていた。当初、民衆が就学義務を受け入れることは難しかったが、社会の工業化が進む中で、義務制はその有用性から国民的なコンセンサスを得ていく。無償制は義務制を有効ならしめるのに不可欠のものであった。今日、社会の変化にかんがみて、これらの原理に対して次の2 つの疑問が示される。1)学業失敗を増やさずに、義務就学期間を中等教育修了にまで延伸することは可能か?2) 初等教育から中等もしくは高等教育まで、完全な無償制を実現するための財源は確保できるか?〈非宗教性〉非宗教性あるいは学校の非宗教化は、国あるいは文化ごとにさまざまな現れ方をするが、教会による主宰権が国家によって否定ないし制限され、教育内容には宗教的教義を含まないという共通点はみられた。とくにフランスでは、19 世紀の政教間の闘争に由来して、この原理が非常に厳格に維持されている。非宗教性は、多文化的動向あるいは非キリスト教徒との共生という事態を前に変容を迫られている。また今日では、ハイパー・サイエンスや高度技術に満ちあふれた社会の中で人間存在がいかにしてその自律性を確保していくかというような問いも、教育の非宗教性に影響を及ぼそうとしている。
  • 宮入 小夜子
    原稿種別: 本文
    2011 年 10 巻 p. 15-27
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2018/02/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、2009 年7 月に全国の1 万人以上の都道府県・市区町村を対象に行った「行政組織の組織風土改革に関する実態調査」(N=509)をもとに、どのような要因が行政組織の改革実現に寄与するのかについて、仮説モデルを提示することを目的とした。調査結果からは、行政組織の組織風土を規定する範囲としての組織の境界に対する認識が曖昧であることが示唆され、「地域」と「役所」の混同が見られた。行政組織においては組織風土改革を重視する割合は6 割程度に止まり、その内容も職員個人の意識改革を掲げているところが大多数であった。組織風土・職員意識改革に関連した質問項目のクロス集計から、(1)首長が組織風土・体質および職員意識の改革について重視し、マニフェストに明記している場合、総合計画や行政改革プランに組織風土・職員意識の改革に関する項目が明記される可能性が高まる。(2)首長のマニフェストに掲げられた改革ビジョンが計画に反映されることで、新たな制度の導入や、それに基づく行動を促進させる可能性が高まる。(3)総合計画や自治基本条例の中に行政組織(役所)としての理念やビジョンが明記されている場合、組織風土・職員意識改革に関する項目が総合計画等に明記され、コミュニケーションの機会を増やし、具体的な業務や行動の改革に繋げていく可能性を高める、といった仮説が導き出された。
  • 林 リレイ
    原稿種別: 本文
    2011 年 10 巻 p. 29-60
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2018/02/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、中国・台湾における経営改革・改善に外部の専門能力をどの程度活用しているかを明らかにしようとした。日本は、1965 年当時の18 年にわたる長期経済成長を80 年代絶頂期に経験した。この発展・成熟期には、欧米へ多くの経営視察団を派遣し、また、欧米の先進的経営専門家の力を借り、日本の経営の質的充実を目指してくることにより、ジャパン・アズ・ナンバーワンに表現されたように世界が目を見張るような驚異的経済の発展を勝ち得たのである。特に中国の経済発展は、今日の停滞のひどい世界経済の牽引車とも期待される、強い実践力を示している。しかし、個別企業の経営実態は、戦略的、技術的、経営管理面でも、また特に、専門的に優れた人材の十分な蓄積に欠け、この問題の解決に腐心していると考えられる。この現実を明らかにするため中国・台湾がコンサルティング・ファームにどの程度依存しているかを実態調査(アンケート)することにより、今後の中国・台湾の経営を研究する一助にすることを目的としている。
  • 佐々木 由利子
    原稿種別: 本文
    2011 年 10 巻 p. 61-68
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2018/02/07
    ジャーナル オープンアクセス
    集団内の対人葛藤を体験し、その中での自分の行動傾向や乗り越えるためには何が必要かを学ぶオリジナルなグループワークが筆者により開発された。最初の道具(ジグソーパズル)がこの目的のために2008 年に開発され、日本橋学館大学の対人関係論とカウンセリング心理学のクラスで試行された。パズルは両面折り紙で作られ、グループの各々の学生にはパズル完成のための2 組の対となる情報が与えられ、互いに色彩と形について相反する要素を持つ内容となっていた。従って学生が自分の情報に固執するとパズルの完成が難しい。学生が活動中に体験した譲り度をセッション後の振り返り用紙に記入してもらった。対人関係論のクラスでは対情報を与えられたペアの半数が対照的な結果を示していた。またセッション後の両クラスにおける学生のグループワークについての振り返り用紙の記述には彼らの体験した葛藤とワークから学んだことが書かれていた。2009 年にはさらに新たなジグソーパズルが作られ、再び対人関係論のクラスで試行された。このパズルは完成図形はよく知られたものだが、グループワークの葛藤度は与える情報や正解の色の組合せの選択により変えられるようになっている。この回の葛藤度はマイルドなものであったので、学生の報告した譲り度には明らかな傾向は見られなかった。しかし学生の体験に関する記述は彼らの体験した葛藤の性質と学んだことを示すものであった。
  • 村上 千鶴子
    原稿種別: 本文
    2011 年 10 巻 p. 69-79
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2018/02/07
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:統合失調症者の世界観について、正常対照群と比較して評価した。方法:統合失調症の診断がついている入院患者41 名と正常対照群50 名について、1996 年に世界観調査が実施された。結果:統合失調症者では、対象群と比較して具体性、感情的反応、二極化、分散、断定、自惚れ、被害妄想(女性)、宗教的傾向(女性)、関係性重視(女性)がより頻回にみられた。考察:統合失調症者の回答にみられた傾向は、ほとんどがPiaget の認知発達理論でいう「前操作期」あるいは「具体的操作期」と同様の認知段階を示した。慢性統合失調症患者では、情緒の退行と情緒の不安定性と同様に認知段階の退行が起こり、これが、自閉思考や原始的思考にみられる奇異な論理を惹起し、同時に心の平衡を保とうとすると考えられた。また、統合失調症者は、批判的に体験を受け入れる代わりに、生起した主観的、特殊な体験を無批判に受け入れる傾向があり、また断定的に物事を否定することで自身の意識の明瞭性を印象付ける傾向があることが示唆された。このことは、疾病それ自体だけではなく、環境要因への配慮も必要であることが示唆されており、その意味では、統合失調症者においても環境制限的であり、所与の環境における心理学的影響が注意深く考慮されなければならない。
  • 村上 千鶴子
    原稿種別: 本文
    2011 年 10 巻 p. 81-88
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2018/02/07
    ジャーナル オープンアクセス
    精神科治療における医療倫理問題について考察し、その改善策を検討した。精神障害者に対する偏見は今日でも存在するところから、小論ではスティグマの歴史、医療倫理でとらえた患者の入院治療、他科受診と受け入れサイドの医療関係者の偏見について検討し、精神科患者が十全な医療を受けるための制度的方策について論じた。諸問題の内でも、特に精神障害者の他科受診について取り上げ、その困難を改善する方策を提示した。従来の複数科併設の必要とともに、補完代替医療を広く学んだホリスティック医の配置、医学教育への補完代替医療の導入が差別低減に向けて有効であることが示唆された。
  • 柴原 宜幸
    原稿種別: 本文
    2011 年 10 巻 p. 89-102
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2018/02/07
    ジャーナル オープンアクセス
    そこで本研究では、大学入学直後の学生の答案が、半年間の授業(ディシプリンにおける指導)を通じて、ライティングにおいて、どのような変化をみせるのかを考えていく。その観点としては、学生が、授業内容の理解をどれだけ自分の言葉として表現できるようになるのか、さらには、異なる文脈で話された内容や、個人的な経験や一般的な言質との関わりでの知識とどのように再体制化するのか、である。またその際、教員からのフィードパックがどのような効果をもたらすのかについても考察し、今後のライティング教育を考えていく1つのヒントとしたい。
  • 高橋 早苗
    原稿種別: 本文
    2011 年 10 巻 p. 103-108
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2018/02/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、地域スポーツとして愛好者が年々増加傾向にあるミニテニスにスポットをあて、本学女子学生とミニテニス女性愛好者の身体組成及び、体力テストの結果を比較し、生涯スポーツとしてのミニテニスが、加齢によって起こる体力低下を予防、あるいは遅延させる可能性について検討した。また、ミニテニスをスポーツ実技種目の1つとして導入し、生涯スポーツの基礎づくりをすることについて検討することとした。
  • 服部 一枝
    原稿種別: 本文
    2011 年 10 巻 p. 110-120
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2018/02/07
    ジャーナル オープンアクセス
    貫之集恋歌の中に次のような一首がある。吉野川岩波高く行く水のはやくぞ人を思ひそめてしこの歌は古今集にも所収されており、注釈書の多くは「吉野川岩波高く行く水の」を「はやく」と言いかけた序詞とし、「吉野川の岩波高く流れる水のように」と直喩表現で解釈している。また「はやく」は「激しく」と「ずっと以前から」の二通りに解釈できる語であることから、当然、注釈書の口語訳も二つに分かれている。上の句を序詞とする立場からでは、その解釈を一方に決定することは困難である。しかし、本文に「如く」がないのに、補って「〜のように」と解釈するのは誤りであろう。今、序詞という考え方を捨てて別の見方をし、「の」を「〜で」と訳す方法を提案したい。そこで上の句を序詞ではなく「私の心は、吉野川岩波高く行く水そのもので」という気持ちにとれば、下の句は「激しくあなたを思いそめていたのです」となり、「はやく」は「激しく」の意に決定づけることができるだろう。貫之集恋歌には、同じ構造を持つ歌群があり、すべて「の」を「〜で」と解釈することで深みのある歌となる。これは貫之の表現の特質と考えられる。本稿はこれらの歌を一つひとつ検討することによって新しい解釈を試み、そこに貫之の和歌における独自性を見出そうとするものである。
  • 三枝 秀子
    原稿種別: 本文
    2011 年 10 巻 p. 122-134
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2018/02/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は唐代における陶淵明受容研究の一環として、盛唐の王維詩に見える「悠然」の語について検討したものである。この「悠然」の語は、陶淵明の「飲酒二十首」その五の「悠然として南山を見る」に見えるものである。この「悠然」には様々な問題があり、筆者は、かつてそれらの論考を整理し、さらに「悠然」について検討を加えたことがある。その際、調査の対象を陶淵明以前の詩文に限定して行った。その後、陶淵明よりも後の時代の「悠然」が如何に詠まれているのか調査することが必要だと考え、まず、王維詩における「悠然」の言葉の検討を試みるに至った。王維は、陶淵明の影響を受けた人物であることは周知のことである。王維詩には計三例の「悠然」が見え、三首にそれぞれ一例ずつある。三首のうち二首には明らかに陶淵明の影響を見ることができるのだが、同詩に用いられている「悠然」は陶淵明の用法とは異なる意味で用いられている。この点から筆者は、王維は陶淵明と異なる用法をあえて用いることにより、王維自身の「寂寞」の境地を詩に表現したのではないかと考えた。
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