日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
61 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
 
  • —— ホムチワケの出雲訪問の考察を通して ——
    アンダソヴァ マラル
    2012 年 61 巻 2 号 p. 1-13
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/09/28
    ジャーナル フリー

    本論では古事記中巻におけるホムチワケの出雲訪問に注目した。ホムチワケは「出雲の大神」の祟りを鎮めるために、出雲に派遣される。そこでキヒサツミによって「大御食」を献上されるが、それは「出雲の大神」への祭祀を描いているのである。

    こうした祭祀は大和の天皇と関わっており、天皇の支配を語る中巻の構造において、「出雲」は「中心」に対する辺境の一地域に過ぎない。

    だが、ホムチワケの「体験」に注目することで、それとは別の「出雲」を見ることができる。ホムチワケにとって「出雲」はイニシエーションをもたらす根源的な「他界」という意味を持っている。

    ホムチワケの出雲訪問の中で構造の中に解消できない、シャーマニックな「体験」を見ることができるのである。

  • 名木橋 忠大
    2012 年 61 巻 2 号 p. 14-25
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/09/28
    ジャーナル フリー

    立原道造は昭和初期に評価を上昇させていた新古今和歌を学習し、語句が倒置表現によって二箇所に掛かり異質な二者が連結される「主部述部+副詞句+主部述部」の構造、及び述部が二つの対象を分かたずに受け異なる二者が繋がれる「主部+述部+主部」の構造を取得し自作へと応用した。一方同時期の実作における新古今和歌受容は「幽玄」的雰囲気の醸成を主としており、その統語法を移入した点に立原の独自性を見出すことができる。

  • —— 「排中律」について ——
    位田 将司
    2012 年 61 巻 2 号 p. 26-36
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/09/28
    ジャーナル フリー

    横光利一『微笑』(一九四八)を「視差(パララックス・ヴュー)」という概念から分析する。これまで『微笑』には「排中律」という、二項対立をめぐる論理的な袋小路(アポリア)が存在すると解釈されてきた。この強固なアポリアに対し、「視差」という視点の位置を移動させる運動を、テクスト分析に導入することで、「排中律」を論理的な行き詰まりとしてではなく、『微笑』が「運動=差異」を構成するテクストとして読解可能となるのである。

  • —— 文化大革命直後の中国大陸における日本推理映画の〈翻訳〉について ——
    孫 軍悦
    2012 年 61 巻 2 号 p. 37-47
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/09/28
    ジャーナル フリー

    一九七〇年代末から八〇年代初めにかけて、中国大陸でブームを巻き起こした日本の社会派推理小説とそれを原作とする映画は、「法」にかかわる文学として位置づけられた。実際〈翻訳〉された中国語版の映画にも「法」がはっきりと刻み込まれていた。本論は、『人間の証明』と『砂の器』を中心に、日本語版の小説から中国語版の映画に至るまでの転換過程を辿り、特殊な歴史的状況のなかで日本の社会派推理小説を原作とする映画が如何なる機能を果たしていたかを考察する。

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