日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
63 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
 
  • ――仲忠の幼時体験と関連して――
    古田 正幸
    2014 年 63 巻 2 号 p. 1-11
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2019/02/28
    ジャーナル フリー

    古代文学は、授乳を常に甘美なものと捉えるわけではない。そうした傾向の一つに、乳母への忌避感を示す『うつほ物語』の仲忠があげられる。仲忠の娘・いぬ宮には史上の冷泉天皇に並ぶ高い出自の乳母がつけられるが、仲忠はその乳母に信頼感を抱かない。その背景には、仲忠自身乳母の世話を受けず、授乳を苦しいものと捉えた、伝奇的な幼時体験の影響が考えられる。仲忠幼時の伝奇性は、仲忠の子育てにおいて再び表出すると考える。

  • ――山東京山・大田南畝――
    神谷 勝広
    2014 年 63 巻 2 号 p. 12-19
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2019/02/28
    ジャーナル フリー

    文化十五年(一八一八)三月、伊勢古市遊廓にあった備前屋は、大広間を新装する。その際、式亭三馬作歌川国直画『伊勢名物通神風』を宣伝のために無料で配った。しかしそればかりではなく、同書に見える記述から、三馬と鹿津部真顔が作成したチラシや、柳々居辰斎画の浮世絵も配っていたことがわかる。さらに、歌川国丸画山東京山賛の浮世絵も配っていたと確認でき、大広間の床の間に大田南畝筆額を掛けていたことも判明する。つまり、備前屋は、多種多様な江戸文芸を自店の広告宣伝に活用していたのである。伊勢と江戸の文化的な関わりは、従来の想定以上に濃いと見なすべきだろう。

  • ――蒋士銓及び山陽・旭荘詩との関わり――
    王 暁瑞
    2014 年 63 巻 2 号 p. 20-30
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2019/02/28
    ジャーナル フリー

    幕末の歌人橘曙覧の歌には、「寒僕」「寒婢」などのような、「寒」の字を冠した歌題を伴う一群の連作がある。これは、清の蒋士銓の詩「消寒雑詠和王蔗村太守十首」(消寒雑詠王蔗村太守に和す十首)及びその影響を受けた頼山陽、広瀬旭荘の詩と深くかかわっているとみられる。本稿では、このことを中心に論じながら、合わせて「妓院雪」「侠家雪」「書中乾胡蝶」など、和歌において一般には見られない曙覧の歌題と旭荘また茶山の詩題との関係も視野に入れて、その和歌の特質の一斑を考察する。

  • ――「郷土望景詩」『氷島』『猫町』から幻の家郷まで――
    安 智史
    2014 年 63 巻 2 号 p. 31-43
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2019/02/28
    ジャーナル フリー

    詩人・萩原朔太郎を、関東大震災後の東京郊外に移住し、郊外化現象をテクスト化した文学者として捉え直した。彼にとっての「郊外」は、郷里前橋の郊外、東京東郊(田端)をへて、西郊(馬込、小田急線沿線)へと変遷する。それは遊歩空間であると同時に、都市消費社会の確立にともなう社会状況との緊張関係の渦中に、彼自身を投げ込む場所でもあった。その諸相を朔太郎の散文(散文詩、エッセイ、小説)および詩集『氷島』収録詩篇を中心に検証した。

日本文学協会第68回大会・総会報告
日文協と私
子午線
読む
書評
feedback
Top