日本文学
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63 巻, 6 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
 
  • ――神代記と垂仁記――
    吉田 修作
    2014 年 63 巻 6 号 p. 1-10
    発行日: 2014/06/10
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    古事記において男女間で「愛」の文字が多用されているのは、神代記のイザナキ・イザナミ神話と垂仁記のサホビコ・サホビメの物語である。その間に、トヨタマビメとヒコホホデミの心情表現を置いてみると、それらの神話、物語が絡み合いながら独自に展開されていると読めてくる。それらと日本書紀の記述を比較するとともに、神代記と垂仁記との関連性や、神代記と垂仁記の心情表現の独自性から、古事記における男女の「愛」と「別離」について考察する。

  • ――巻二十七~三十に着目して――
    小島 明子
    2014 年 63 巻 6 号 p. 11-21
    発行日: 2014/06/10
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    『栄花物語』「異本系統」の富岡本において、顕著な増補がなされる巻二十七~三十を分析すると、他系統の本文に比して父・藤原道長の後継者としての頼通像が殊に強調される傾向が指摘できる。それは、後朱雀天皇后・禎子に対する頼通の懇切な後見のさまを描き出す補入とも読み取れ、これによって富岡本の改修時期・背景が推測され得るのである。固定された本文の受容にのみ留まらない、享受者による改修の動きは、歴史物語の再創造とも言える文学的営為として捉えるべきであることを提示する。

  • ――延慶本を中心に――
    高村 圭子
    2014 年 63 巻 6 号 p. 22-29
    発行日: 2014/06/10
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    延慶本をはじめとする『平家物語』諸本には「頼朝は謀叛によって日本国を掌握する力を「天」に与えられた」という思想が散見される。中国の易姓革命思想に基づいていると考えられるが、このような思想は日本の天皇制とは全く相容れない。

    日本における「天」は仏教や神道とも習合して天皇制と共存しうる思想へと変容を遂げてきたが、南北朝期には「天は帝よりも上位に位置する」ことを前提とした思想が定着しており、『平家物語』はその早い段階として位置付けられると考えられる。

  • 顔 淑蘭
    2014 年 63 巻 6 号 p. 30-42
    発行日: 2014/06/10
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    本稿は『支那游記』の夏丏尊(xia mianzun)抄訳「中国遊記」について、これまで参照されてこなかったいくつかの同時代的批評を取りあげ、その中国における受容のされ方について考察したものである。中国人読者が「中国遊記」を読んで示した反応は、批判と共感という相反するものであった。本稿は、この相反する文章のなかに夏丏尊の抄訳が与えた影響を確認した。

    そのなかから、「中国遊記」の批判に共感する受け止め方を取り上げ、『支那游記』から読み取れる芥川の中国観との間の齟齬を明らかにした。そのような齟齬から、「中国遊記」が目標言語環境の中国で獲得した、西洋化を批判して東方的伝統を擁護する『支那游記』とは異なった、中国伝統批判と西洋化推賞という新たな意味を浮かび上がらせた。

  • ――「私」は「明治の精神」を批判する――
    篠原 武志
    2014 年 63 巻 6 号 p. 43-52
    発行日: 2014/06/10
    公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    「こころ」の「私」が批判したのは何か。それは、そのように手記のなかに記されないにもかかわらず、どのようにすればそれが浮かび上がってくるのか。そのことを考察していきたい。同時にこの作品の教材価値を考えたい。先走って言えば、「明治の精神」という鍵語を支点にすることによって、生徒にも、「私」が、観念の牢獄にとらわれた先生を批判的に継承しようとしている読みがベクトルとして教室内で立ち上げられるのではないか。

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