日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
64 巻, 6 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
 
  • ―― 『源氏物語』における「ことば」としての筆跡 ――
    朴 英美
    2015 年 64 巻 6 号 p. 1-10
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2020/07/04
    ジャーナル フリー

    本研究が明らかにしたのは、『源氏物語』に見られる「ほのか」な筆跡の「ことば」としての働きである。「ほのか」な墨色を用いる女君のなかで、玉鬘を中心に考察を行なった結果、「ほのか」な筆跡は書の未熟さを隠すためだけでなく、歌意の強弱を調整するために用いられていることが明らかになった。和歌を薄く書くことは、女君自身の表現手段であると同時に、作者が作中人物の心情を描く文学的手法のひとつと言える。

  • 白戸 満喜子
    2015 年 64 巻 6 号 p. 11-26
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2020/07/04
    ジャーナル フリー

    本論では『開版指針』(以下、本書)について報告する。本書は天保の改革期以降を中心とした出版関係記録であり、その内容は四〇項目に分類される。現在まで宮武外骨『筆禍史』などに発禁書関連資料として用いられた他、天保の改革を風刺した歌川国芳の浮世絵「源頼光公舘土蜘作妖怪図」解説に引用されているが、多くは天保十三年六月以降幕末まで昌平坂学問所が行なった「学問所改(あらため)」という、幕府が主導した書物の検閲に関わる内容である。本書は、他資料との比較・検討により江戸町奉行を務めた筒井政憲が成立に関与していると推定された。学問所内における改関連記事をはじめ、五経重版事件、江戸とそれ以外の地方での書物の出版・売買に関する記事、写本の売買に関する記事などを総合し、幕臣による出版方針立案資料であることを考察した。

  • 木村 洋
    2015 年 64 巻 6 号 p. 27-38
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2020/07/04
    ジャーナル フリー

    一八八〇年代後半に徳富蘇峰は、政治小説の流行に対抗する形で複数の感想録や文学評論を『国民之友』に発表し、さらに同誌で文学を厚遇した。蘇峰が「美文学の庇護者」、「精神的開国」の推進者として称えられたのはそのためだった。文学の地位を高めようとする蘇峰の熱意は当時の言論界のなかで突出しており、功利主義的という従来的な評価だけでは蘇峰の活動の意義を適切に捉えることができない。

  • ―― 文学概念、そして、文学表現の軌跡を辿って ――
    ブルナ ルカーシュ
    2015 年 64 巻 6 号 p. 39-49
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2020/07/04
    ジャーナル フリー

    「憂愁」や「哀愁」などと訳される「トスカ」というロシア語の表現は一九世紀初頭以来のロシア文学に様々な意味合いをもって活用される。ゴーリキー作・二葉亭訳「ふさぎの虫」(一九〇六年)によって「トスカ」は日本文壇でも注目され、自然主義思想と関連づけられた。のちに「トスカ」は文学表現に転換され、戦前にいたるまで様々な作品に用いられてきた。本論はこれまで注目されなかった二〇世紀前半における「トスカ」という表現の歴史を辿ったものである。

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