日本文学
Online ISSN : 2424-1202
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64 巻, 7 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
特集・中世文学における分類と配列
  • ――紀貫之の亡児哀傷をめぐって――
    荒木 浩
    2015 年 64 巻 7 号 p. 2-14
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル フリー

    本稿は前半で、藤岡作太郎『国文学史講話』の成立と付載三序文の叙述との連環の追跡をめぐって『土佐日記』が亡児追悼のために書かれたとする説の所在を注釈史にたどり、それが「日記文学」という近現代的な視点で転換するまでの推移を考察する。後半では、そうした『土佐日記』著述に淵源する紀貫之の亡児哀悼歌話の意味と伝承を探り、その説話が『今昔物語集』においていかなる論理で採択・配列されているのかを論じて『今昔』作者論にも問題提起を行う。

  • 中村 文
    2015 年 64 巻 7 号 p. 15-25
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル フリー

    『頼政集』雑部冒頭に収められる、沈淪を経て四位に至る期間に交わされた贈答歌群は、「木隠れて月を見る山守」のイメージにより、頼政の述懐的心情をよく形象化したものと理解され、「平家全盛下に忍従する」頼政像をも生成した。当該期の頼政は八条院に近く、『頼政集』雑部には同女院の関係者をめぐる詠作が散見されるものの、冒頭歌群とは切り離して配列され、政治的文脈は見えにくい形で伏流する。雑部冒頭には、実人生とその情感のナイーヴな再構成とは異なる論理が働いている。詠作の配置と表現から意図を探った。

  • 鹿野 しのぶ
    2015 年 64 巻 7 号 p. 26-35
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル フリー

    『新後拾遺和歌集』における神祇歌の排列構成について考えた。先行研究において他の勅撰神祇部よりも複雑とされる新後拾遺集の神祇歌の構成は歌語によって緊密になされている。新後拾遺集神祇歌の特徴として神詠が見られないことが挙げられ、これは法楽和歌の開催と関係があるのでないかと指摘した。また、神官の出家に関する詠が見られることも特徴であり、神官の出家に関する詠の沿革とその意味について考察した。さらに、作者による配列構成を考え、巻軸歌に敏行の和歌が置かれることについて、古今集の大歌所御歌の巻軸歌が意識されているのではないかということを指摘した。巻軸歌を含む四首は為重自身の詠も採歌した住吉社詠を中心とした配列であること、全体を通じて和歌所を意識した撰歌であり、和歌神への威徳と現実的な加護を希求するものであることを論じた。

  • ―― 『十四代集歌枕』との共通性について ――
    嘉村 雅江
    2015 年 64 巻 7 号 p. 36-45
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル フリー

    『勅撰名所和歌抄出』は、連歌師宗碩によって永正三年(一五〇六)年に編纂された歌枕書である。この書は地形別、イロハ順に配列されており、それまでの地形別、国順の歌枕書とは配列に大きな差異がある。この書に関しては、先行研究が『勅撰名所和歌要抄』の改編であることを指摘しているが、一方で『勅撰名所和歌要抄』を改編する際の原則と考えられる配列法に、一部乱れが存在し、その部分の例歌の典拠に問題があることも指摘されてきた。本論では、この『勅撰名所和歌抄出』の配列が乱れている部分に関して、『勅撰名所和歌抄出』の不自然な配列に関して『十四代集歌枕』との配列の一致を発見した。両者の類似は、『勅撰名所和歌抄出』の成立事情を解き明かす一端となると考えられる。

  • ―― 覚一本と『源平盛衰記』 ――
    原田 敦史
    2015 年 64 巻 7 号 p. 46-56
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル フリー

    源頼政挙兵の発端となった馬争いの説話は、『平家物語』諸本によって配列が異なる。語り本系諸本と読み本系の『源平盛衰記』はともに、乱の序盤に置く。そうでありながら、その意味やはたらきは大きく異なっている。一方は頼政らの心情に共感させながら享受者を物語の世界に導こうとし、一方は広い射程のなかで、乱全体の歴史的意義を説こうとする。同一の配列であることが、両者の歴史文学としての本質的な相違を際立たせている。

  • 伊藤 聡
    2015 年 64 巻 7 号 p. 57-65
    発行日: 2015/07/10
    公開日: 2020/07/22
    ジャーナル フリー

    「世界」「日本」「神」の起源にまつわる中世のテキスト群は、後に神道書、神書、あるいは「日本紀」とも呼ばれた。これらは平安末から鎌倉時代にかけて作られたものだったが、その多くが作者を上代の古人に仮託しており、記紀と同等の価値を持つ「古典」と見なされたのであった。鎌倉後期以降になると、そこに盛り込まれた諸説を類聚し、整理しようとする動きが現れる。神道に限らず、蓄積された情報を整序・体系化しようとする指向は、宗教・文芸等に亙って院政期以降、各分野で見られるようになる現象だが、遅れて現れた神道説の場合、この頃から顕著になるのである。本稿では、『類聚神祇本源』『元々集』『山家要略記』『神代巻秘訣』等、中世神道の類聚的著作を採り上げ、その類聚・分類の意識について考える。

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