日本文学
Online ISSN : 2424-1202
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65 巻, 12 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • ――教科書としての〈新アラビア夜話〉受容――
    阿部 和正
    2016 年 65 巻 12 号 p. 1-12
    発行日: 2016/12/10
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    『彼岸過迄』には形式と物語内容の両面においてスティーヴンソン〈新アラビア夜話〉の影響が見られる。二作は「好奇心」をめぐる物語である点で共通するが、日本においてスティーヴンソンが高等英語教育のなかで読まれた事情も手伝い、『彼岸過迄』の「好奇心」は教育により抑制されたものとなる。教育に枠付けられた「好奇心」は、異なる階級や性への広がりを徐々に失い、「高等遊民」たちの範囲に止まるという屈折を抱える。

  • ――横光利一『蠅』をめぐる文学研究と国語教育研究の交差――
    齋藤 知也
    2016 年 65 巻 12 号 p. 13-25
    発行日: 2016/12/10
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    横光利一『蠅』をめぐる文学・国語教育の先行研究を検討し、双方の交差のなかから〈教材価値〉を拓く読み方を、提起する。視点論や物語論ではなく「第三項と〈語り〉」論で読むと、「見ることの虚偽」「語ることの背理」を抱え込み、それを超えようとする〈言語以前〉への闘いが貫かれていることが見えてくる。特に「空虚」という言葉がなぜ語られるか、考察した。登場人物が絶対化している意味や価値が、饅頭と等価なものとして否定されることによって逆説的に、かけがえのない個別の〈意味〉や〈価値〉を持つものとして読者に受けとめられる。文学と教育の接点が此処にある。

  • ――昭和一〇年代、『建礼門院右京大夫集』はいかに読まれたか――
    榊原 千鶴
    2016 年 65 巻 12 号 p. 26-35
    発行日: 2016/12/10
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    中村真一郎、大岡信らによれば、第二次大戦下、『建礼門院右京大夫集』は若者に愛読されたという。背景には、一九三九年、冨山房から上梓された佐佐木信綱校註本の存在、さらに、佐藤春夫、舟橋聖一らによる女性向け雑誌上での執筆活動があった。昭和一〇年代、建礼門院右京大夫は、銃後にある女性教育においてどのような役割を果たしたのか。文芸雑誌『藝苑』と、同誌に連載された舟橋「小説 右京大夫」を手がかりに考えてみる。

  • ――検閲をめぐる攻防――
    越前谷 宏
    2016 年 65 巻 12 号 p. 36-47
    発行日: 2016/12/10
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    『麦と兵隊』は、戦記文学の代表作であるにもかかわらず、基本的な校異作業も行われてこなかった。初出、初版、増刷過程、再録の各過程での異同をみたが、検閲によると判断されるものは、予想に反して少なかった。また、検閲に抗して、どのような戦略を取ったのかに関しても考察した。特に、兵士の〈性〉の問題と、孫圩での毒ガス使用の問題を取り上げ、検閲の網の目をかいくぐりながら、どのようにして、作品内に〈痕跡〉として留めたのかを明らかにした。

日本文学協会 国語教育部会 第68回夏期研究集会 基調報告
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