日本語教育
Online ISSN : 2424-2039
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140 巻
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【特集】作文教育のための語彙研究
寄稿論文
  • 大島 弥生
    原稿種別: 寄稿論文
    2009 年 140 巻 p. 15-25
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

     本稿では,日本語ピア・レスポンス活動について,語の選択を支援する場としての可能性を論じた。事例を考察したところ,「書く,読む,聞く,話す」の全チャンネルを活用しつつ,即興的に意味交渉を行う活動になっていることから,ピア・レスポンスには語選択を支援し語彙習得を促進する意味交渉の場として効果が見込まれる。誤用が修正されずに見逃されるケースもあるものの,修正発話以外にも,読み手が書き手の主張を確かめて疑問や反論を提供する発話の中で,語の選択肢が提供される可能性があると考えられる。また,アカデミックなジャンルの語彙使用を協働で試行する場,課題にふさわしい語彙使用を協働で試行する場としての機能も持ちうる。これらの特徴を活動の中で発揮させるためには,フェイスの脅かしの可能性,学習者のスタンスによって意味交渉の質が異なる可能性を踏まえた,教育上の配慮が求められる。

  • ――文脈の中での意味推測を妨げる要因とは――
    宇佐美 洋, 森 篤嗣, 広瀬 和佳子, 吉田 さち
    原稿種別: 寄稿論文
    2009 年 140 巻 p. 48-58
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

     本稿では,作文添削支援システムXECSを用いて収集した,複数の添削者による日本語学習者の作文添削データを基に,書き手の語彙選択が読み手の理解にどのような影響を与えているのかについて考察する。作例によって誤用の評定をさせる先行研究では,語彙の誤りが文の意味理解に与える影響が大きいとされてきたが,実際の学習者作文データに照らしてみると,語彙の意味を取り違えているせいで全く理解できなくなってしまうような例はあまりみられなかった。語彙の誤りの多くは,「コロケーションの点で問題がある」というものであり,これは文脈を利用することでかなりの程度まで意味推測が可能である。意味推測を真に妨げるものは,個々の単語の意味の取り違えに基づくものでなく,むしろ単語同士,フレーズ同士の関連性が明確に示されておらず,その解釈の可能性に複数のものがあって,どれが適切かということについて決め手がないものである。

一般論文
研究論文
  • 太田 陽子
    原稿種別: 研究論文
    2009 年 140 巻 p. 70-80
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

     本稿では,母語話者と学習者の意見文を分析し,ハズダの文末用法の使用傾向を探った。その結果,ハズダは主に以下の3タイプの機能として,それぞれの文章展開のパターンのもとに運用されることがわかった。

     ①αタイプ:<現状> ⇒提言・主張{(そう)すれば/これからは}ハズダ文

       ハズダの機能=好ましい展望を示し,提言の正しさを支える

     ②βタイプ:<現状> ⇒ハズダ文{だから/なのに}提言・主張

       ハズダの機能=判断に当然性を担わせ,結論を導く根拠とする

     ③γタイプ:ハズダ文{しかし}(ハズダ文と食い違う)現状 ⇒<意見・問題提起>

       ハズダの機能=本来のあり方を述べ,現状を対比的に提示する

     母語話者や習得の進んだ学習者に見られるこれらのパターンが,正しくハズダを使えない学習者には身についていない傾向がある。機能を明確にし,それを支える文章展開のパターンとともに,運用のなかで意味の理解を深めていくことが,表現教育のために必要なのではないかと考える。

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