日本語教育
Online ISSN : 2424-2039
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147 巻
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一般論文
調査報告
  • ――テンス・アスペクト的な観点からの一考察――
    清水 まさ子
    原稿種別: 調査報告
    2010 年 147 巻 p. 52-66
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

     本稿では論文において先行研究を引用している文の文末のテンス・アスペクトに着目し,それらを量的に調査し,それらがどのように用いられ,さらに引用節の形式との間に何らかの関係性を持っているかについて考察した。その結果,テイル形文末引用文は当該の論との間に論理性を生み出し,タ形文末引用文はタクシス的に働き,時系列的に論を進める際に用いられていることが明らかになった。さらに特定のテンス・アスペクトは,特定の引用節の形式とともに出現する傾向があることがわかった。テイル形文末の場合,①事柄フォーカス引用文の「と」以外+間接引用文,②著者フォーカス引用文の「と」+間接引用文,③著者フォーカス引用文の「と」以外+間接引用文という3つの引用節の形式と共に多く出現していた。またタ形文末の場合は,著者フォーカス引用文の「と」以外+間接引用文という引用節の形式と共に多く出現していた。

  • 中川 健司
    原稿種別: 調査報告
    2010 年 147 巻 p. 67-81
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

     EPAに基づく介護福祉士候補者が国家試験を受ける上で漢字が大きな障壁となると予想されており,国家試験を見据えた漢字学習支援が急務となっている。本研究では,国家試験受験の上で必要な漢字知識を検証するために,過去8回の国家試験中に出現する漢字の頻度と傾向を調査し,介護分野の漢字教材で扱われている漢字と比較対照した。その結果,8回の国家試験中の出現頻度が29回以上の漢字497字で,全13科目においても,その中の介護関連3科目においても,出現漢字(延べ)の約90%がカバーされる一方で,教材で扱われている漢字でカバーできるのは50%未満にとどまることが明らかになった。この調査結果は,介護分野の教材で扱われている漢字では,国家試験に出現する漢字をカバーしきれていないことを意味し,国家試験に対応するためには,漢字教材で扱われている漢字以外にも試験に頻出する漢字を相当数学ぶ必要があることを示唆している。

  • 大西 由美
    原稿種別: 調査報告
    2010 年 147 巻 p. 82-96
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

     本稿では,ウクライナの大学において日本語を専攻する学習者を対象に,日本語学習動機調査を行った。ウクライナは日本との人的・経済的交流が少ない「孤立環境」と呼ばれる地域である。日本語学習者は増加傾向にあるが,卒業まで意欲的に学習できない学生が多いことが問題となっている。

     一方,日本語学習者を対象とした動機づけ研究では,環境が大きく異なるにも関わらず,他地域の動機づけ尺度を基に調査が行われる傾向がある。

     そこで,本稿では,日本語学習動機を自由記述によって収集し,先行研究にはない項目を含む35項目の尺度を作成した。5大学の学生を対象に質問紙調査を行い,180名分のデータを得た。学年層別の因子分析の結果,低学年と高学年では動機づけの構造が異なることが明らかになった。低学年の学習者は文化に関する動機と仕事に関する動機の相関が高く,これらの動機が対立するものだとしている他地域の先行研究とは異なる結果となった。

実践報告
  • ――実際場面で使用できる「聞き返し」をめざして――
    椿 由紀子
    原稿種別: 実践報告
    2010 年 147 巻 p. 97-111
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

     コミュニケーション・ストラテジーとしての「聞き返し」の教育を中級の会話クラスで実践した。この「聞き返し」教育では,(1)『「聞き返し」をマスターしよう』という作成教材の学習,(2)母語話者との実際場面での会話の事前指導および事後のフォローアップインタビューでの指導,(3)メタ認知トレーニングシートの記入を行った。本実践の教育効果を「聞き返し」教育前と後の母語話者との会話で検証した。2回の会話での学習者の「聞き返し」使用意識と使用回数の変化を検討したところ,半数の学習者は,教育前には使えていなかった「聞き返し」が教育後の会話では意識的に使えていることが明らかになった。教育後の会話では,質的により望ましい「聞き返し」が使えており会話交換が活発になったこともわかった。しかし,この実践では,教材および教材の学習方法,会話直前の指導法,フォローアップインタビューでの指導法に改善の余地があることも明らかになった。

研究ノート
  • ――学習者が書いた日本語手紙文を対象として――
    宇佐美 洋
    原稿種別: 研究ノート
    2010 年 147 巻 p. 112-119
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/02/15
    ジャーナル フリー

     日本語母語話者が学習者の日本語作文を評価する際,評価の基本的方針(評価スキーマ)は人によって大きく異なる。評価スキーマのばらつきの全体像をとらえるため,評価観点に関する質問紙への回答傾向によって評価者をグルーピングする試みを行った。

     評価者155名に学習者が書いた手紙文(謝罪文)10編を読んでもらい,「最も感じがいいもの」から「悪いもの」まで順位づけを依頼し,作業後,「順位づけの際どういう観点をどの程度重視したか」を問う質問紙(22項目,7段階)に回答してもらった。得られた回答に対して因子分析を実施した結果,「言語形式」,「全体性」「読み手への配慮・態度」「表現力」と名付けられる4因子を得た。さらに,評価者ごとに算出した上記4因子の因子得点に対しクラスタ分析を実施したところ,評価者は「言語重視型」,「非突出型」,「態度・配慮非重視型」,「言語非重視型」という4グループに分類するのが適当と解釈された。

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