日本語教育
Online ISSN : 2424-2039
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152 巻
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一般論文
研究論文
  • ―ソフトウェア開発中に発生するコミュニケーション上の問題分析から―
    戎谷 梓
    原稿種別: 研究論文
    2012 年 152 巻 p. 14-29
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     日本企業でのインド人ITエンジニア(IE)の増加に伴い,IEと日本人従業員(JCW)とのコミュニケーションを仲介するインド人ブリッジ人材(IBR)も増加している。IBRは,高度な日本語能力を有するものの就業中に問題を抱えている。本研究では,IBRが就業企業のプロジェクト遂行方法を理解し,適切に情報授受を行うための能力に関して示唆を得るため,IBR,JCW,IEに行ったインタビューの回答に基づいて製品開発中の情報授受全体の枠組みを示した。そこで発生する問題の分析の結果,「ビジョン共有」のためにJCWの必要とするIEの開発状況などの情報を,IBRがIEから受け取ることが困難であることが分かった。これはIEのビジョン共有の目的に関する理解不足が原因と考えられるため,IBRには,JCWとIE間のコミュニケーションを調整し,双方に他者の方法の長所に関する理解を促しつつ情報授受を行う能力が求められる。

実践報告
  • ―発話の単声機能と対話機能に着目した相互行為分析―
    広瀬 和佳子
    原稿種別: 実践報告
    2012 年 152 巻 p. 30-45
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     本研究は,書くことを協働で学ぶ学習者の相互行為を,発話の単声機能と対話機能の観点から考察した。学習者の言いたいことは固定的なものではなく,他者との対話によって変容し,明確化していった。このような発話の対話機能よりも,情報の正確な伝達を重視する単声機能が優位になると,権威者である教師や専門家のことばで語ることが目標となり,学習者は自分の言いたいことが実感できない。日本語だから表現できないというもどかしさを抱えることになる。学習者が「本当に言いたいこと」を表現するためには,対話を通して内省を深め,他者のことばとの葛藤によって新しい意味を創出していく過程,すなわち対立する価値観をぶつけあい,他者との関係をつくっていく過程を経る必要がある。

  • 池田 順子, 深田 淳
    原稿種別: 実践報告
    2012 年 152 巻 p. 46-60
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     Speak Everywhere(以下SE)は,インターネットの繋がる環境にいれば,どこからでもアクセスでき,学習者が個人的に口頭練習をしたり,オーラルテストを受けることができるウェブベースのシステムである。本稿では,このSEを取り入れたスピーキング重視のコース設計とその実践について報告する。SEをカリキュラムに組み込み,教室活動と密接に連動させることで以下の成果が得られた。(1)本来,個人練習であるべき基礎口頭練習が授業時間外で個人的にできるようになり,口頭練習の機会が増え,さらにそこで得られた授業時間をコミュニケーション活動の充実にあてることができた。(2)オーラルテストを,対面式に加え,SE上でも行うことによって,貴重な授業時間を確保でき,またスピーキング能力を評価する機会も増えた。(3)学習者はより快適な環境で,個人的に練習したり,オーラルテストを受けたりすることができた。(4)学習者の多くがSEのシステムに対し,肯定的な評価をした。

  • ―漢字の一斉授業における取り組みから―
    大関 由貴, 遠藤 郁絵
    原稿種別: 実践報告
    2012 年 152 巻 p. 61-75
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿は,教師が「自律的な学びとは何か」という問いを持ち,漢字の一斉授業を対象に自らの実践を振り返り,分析を行った実践報告である。意思決定の主体と教師の学習観の変容に焦点を当て分析した結果,初期の教室では教師が学習を設計,主導していたのに対し,学習活動が変化すると,学習者が自身に合った方法や内容を考えながら実践するという意思決定が行われていたことが明らかになった。また,学習過程の観察を通し,教師の関心は学習者主体の学びへと移り,次第にそれを尊重する態度が生まれていった。これらの分析結果を踏まえ,自律的な学びの支援者として,教師には1)学習者の主体的な学びを理解すること,2)そのために彼らの学習過程から学ぶこと,3)学習者が意思決定を行いやすい協働的な学習環境を設計することが求められると考えた。

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