日本語教育
Online ISSN : 2424-2039
Print ISSN : 0389-4037
ISSN-L : 0389-4037
155 巻
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
【特集】エンパワーメントとしての日本語支援
寄稿論文
  • 山西 優二
    原稿種別: 寄稿論文
    2013 年 155 巻 p. 5-19
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿は,エンパワーメントの視点から日本語教育のあり様について考察することをねらいに,まず関係性の視点からエンパワーメントを捉え,そのエンパワーメントと多文化共生の関係,多文化共生に向けての教育課題を考え,さらにはその教育課題に即したことばの教育そして日本語教育のあり様について考察したものである。関係性を基軸に,「文化」そして「ことば」を動的に捉えること,「道具としてのことば」と「対象としてのことば」を教育で関連づけることを基本的な視座としながら,学習者そして社会的なニーズに即した,エンパワーメントの視点からのこれからの日本語教育のあり様として,「目標の明示」「人間関係づくり」「場づくり」「教材開発」などの点について考察した。

  • 市瀬 智紀, 田所 希衣子
    原稿種別: 寄稿論文
    2013 年 155 巻 p. 20-34
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿は,学会誌『日本語教育』の特集「エンパワーメントとしての日本語支援」の主旨を踏まえ,東北地方の国際結婚による移住者を中心とする外国出身者に焦点をあてて,3.11東日本大震災から2年について,エンパワーメントの具体的なアクションとしての日本語支援と母語支援の側面から記述した。今回の震災の被害は広範囲にわたったため,都市部に居住する留学生を中心とする短期滞在型の外国人と,農村部や沿岸部に居住する国際結婚配偶者とでは,情報の入手方法や震災後の行動が異なった。また,津波浸水被害や原子力災害を含む複合的な大規模災害であったため,専門的な用語を含んだ情報を提供することや,生活上の基本書類の再発行や「罹災証明書」申請など,生活再建に密着した難解な日本語を支援することに難点があった。地域の日本語教室のネットワークは,災害時のセイフティーネットとしての役割を果たした。母語で被災体験を振り返る機会を提供することは,外国出身者の心のケアにつながった。数か月を経過して,外国出身者の間で,子どもへ母語や母文化を伝えていきたいという意識が芽生え,危機に直面して外国出身者による自発的なネットワークづくりが始まった。今回の震災において,外国出身者は情報弱者や災害弱者であった反面,ボランティア活動に参加し,災害弱者の強力な支援者となった。支援者としての外国出身者は,それが外国出身者であることは意識されず地域の内部にごく自然に受け入れられたが,このことは「エンパワーメント理論」における「既存の社会関係の変容」があったことを示している。

  • 松尾 慎
    原稿種別: 寄稿論文
    2013 年 155 巻 p. 35-50
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿は,群馬県太田市で日系ブラジル人の子どものために開かれている母語(ポルトガル語)教室における実践を取り上げる。この教室は太田市内の学校関係者などボランティアによって運営されており,東京女子大学の学生団体「ぱずる」のメンバーも活動に参加している。本稿では,母語教室での実践が子どもたちや参加学生にとっていかなるエンパワーメントにつながるのかを観察記録と「ぱずる」メンバーが書いた振り返りを主な材料にして論じた。結果として,それぞれ異なる背景を持つ子どもたちが,学習支援者と学生との間の協働実践を通して達成感を得ている様相が認められるとともに,教室活動において新たな役割を担うことで肯定的な自己概念が生まれるプロセスが確認された。また,教室内でのブラジル人スタッフや子どもの働きかけにより,支援する学生の参加の形態が変化し,多文化や複文化を受容し共生していく能力が涵養される事例が見られた。

  • 内海 由美子, 澤 恩嬉
    原稿種別: 寄稿論文
    2013 年 155 巻 p. 51-65
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿では,外国人の母親31人を対象とした聞き取り調査の結果から,幼稚園・保育園における読み書きの必要性とその課題を明らかにし,読み書き能力支援について提案する。園と連携して子育てに当たるには日本語使用が不可欠で,連絡帳やお便り等の読み書きが重要となる。しかし調査の結果から,全ての母親が連絡帳を書くことに苦手意識を持ち,困難を感じていることがわかった。また,連絡帳によって園と信頼関係を築いたり,子育て上の問題を相談したりする等,日本人の母親が行う利用の仕方は外国人の母親には見られなかった。さらに,連絡帳を書くかどうかには,子どもの入園時にすでに日本語学習歴があり,ひらがなカタカナの読み書きができるかどうかが大きく関わっていた。園との文字によるやりとりを支えるには,連絡帳に特徴的な言語形式や談話の流れを自習可能な教材にすることが求められる。また,書くか書かないかの判断や,書くか話すかの技能選択のポイントを示すことも必要である。

  • 岡 典栄
    原稿種別: 寄稿論文
    2013 年 155 巻 p. 66-80
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿では,聴覚を通じて音声日本語を習得することがほぼ不可能な,日本手話を第一言語とするろう児・者に対する第二言語としての日本語教育について考察する。従来のろう教育で行われてきた補聴機器等を用いた母語教育としての国語教育では達成が難しかった日本語の習得が,日本語教育の視点の導入によりパラダイム自体が転換し,ろう者のエンパワーメントにつながることを見る。また,ろう者に対するわかりやすい日本語,視覚情報としての日本語の提示を通じて,まわりの人々もエンパワーされることを見る。

  • 石塚 昌保, 河北 祐子
    原稿種別: 寄稿論文
    2013 年 155 巻 p. 81-94
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     多文化社会を読み解く視点として居場所感に着目し,地域日本語教室の居場所感を測るための「多文化社会型居場所感尺度」を開発した。その結果,地域日本語教室で活動する人々が居場所感を得るためには,①役割,②被受容,③社会参加,④交流,⑤配慮の5つの因子が必要であることが示唆された。またこの尺度を用い,地域日本語教室で活動している人々の居場所感全体をレーダーチャートとして視覚化する試みを行った。この尺度は,地域日本語教室の特徴や課題をとらえる上でも有効に活用できると考えられる。この尺度を利用し,ある地域日本語教室の参加者の「居場所感」を調査したところ,学習者の社会参加感が高い一方で,支援者の役割感が低いことが分かった。この調査結果を基に支援者をエンパワーした試みを紹介し,多文化社会型居場所感尺度を用いた活用事例について考察した。

実践報告
  • 鎌田 倫子, 中河 和子, 後藤 寛樹
    原稿種別: 寄稿論文
    2013 年 155 巻 p. 95-110
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     エンパワメント評価は評価活動自体をエンパワメント活動と捉え,評価によってプログラムの改善を目指す評価方法である。エンパワメント評価はどのように実践され,組織や当事者にどのような変化がおこるのか,日本語プログラムにおける評価実践から見えてきた点を報告する。大学の理系小規模日本語プログラムでエンパワメント評価を実践し,プログラム当事者のエンパワメントによりプログラムの改善を目指した。評価実践を1期実施した中間点で,プログラム当事者である教員の変化について分析した。エンパワメント評価の導入には,プログラムがエンパワメントされることを希求する「エンパワメント文脈」が必要とされることから,当該プログラムのエンパワメント文脈について検討した。より困難なプログラムに向くとされるエンパワメント評価を,同様の困難を抱える日本語プログラムに適用すればプログラムの改善に繋がることが期待される。

一般論文
研究論文
  • 関崎 博紀
    原稿種別: 寄稿論文
    2013 年 155 巻 p. 111-125
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,日本人大学生同士の雑談の中で否定的評価として機能した発話を取り上げ,その言語的な表現方法を分析した。分析は,各発話が,評価の内容(「価値づけ」),評価の対象となる「事柄」,対象を評価する「基準」のいずれに言及したものかという観点から行い,次のことを明らかにした。「価値づけ」の表現方法には,語義として評価の意味を含んだ単語を利用する方法と比喩表現から価値づけを示唆する方法があった。また,「事柄」を表現する方法には,価値づける対象となる事柄を言語化する方法と,その事柄の結果として生じた事態を言語化する方法が見られた。価値づけの基準への言及方法には,モダリティ表現を用いた方法と基準を言語化する方法が見られた。最後に,本研究が日本語教育に示唆することについて考察した。

  • 舩橋 瑞貴
    原稿種別: 研究ノート
    2013 年 155 巻 p. 126-141
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿では,注釈挿入における発話構造の有標化を,言語形式以外のリソース(音声特徴,非言語行動,人工物)の使用から考察する。有標化にかかわるリソースとして,ポーズをはじめとする複数の音声特徴,ジェスチャーや姿勢といった非言語行動,スライド等の人工物をみとめ,リソースが互いに関与し有標化がなされる様子をみる。注釈挿入において,リソースの複合的使用,それらが一体となって発話構造の有標化が実現されていることを明らかにし,日本語教育のための文法研究では,言語形式だけを記述の対象とするのではなく,言語形式と言語形式以外のリソースを等価なものとして扱い,総体として分析する視点が必要であることを示す。

調査報告
  • 王 先哲
    原稿種別: 調査報告
    2013 年 155 巻 p. 142-158
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿は,親しい日本人女性同士の依頼会話のビデオを中国人日本語学習者(C)と日本語母語話者(J)に視聴してもらい,両者が被依頼者の行動をどのように予測するか,何を手がかりに予測するかを認知の視点から,比較,考察したものである。

     分析の結果,依頼直後に被依頼者が内容の確認をしている段階から,CよりJの方が断られると早く予測し,一度断られると予測したら,その後も,引き受ける可能性があると予測を立てる者は少ないことが分かった。また,報告された予測の手がかりにも違いが見られた。CはJより被依頼者からの依頼内容に関する「情報要求」を受諾の兆候だと認識する者が多く,被依頼者の念押しの「確認要求」に対して,被依頼者の顔の表情や姿勢など「表象的手がかり」を合わせて,予測の根拠に挙げる者も多かった。一方,JはCより「依頼内容の負担度への言及」,「責任感の表明」を拒絶の前触れだと認識する傾向があり,特に「責任感の表明」に対する認識は日中の間で大きく異なることが分かった。

実践報告
  • 山路 奈保子, 須藤 秀紹, 李 セロン
    原稿種別: 実践報告
    2013 年 155 巻 p. 175-188
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿は,書評ゲームである「ビブリオバトル」を日本語パブリックスピーキング(1)入門として大学・大学院留学生を対象とする日本語授業に取り入れる試みの実践報告である。「ビブリオバトル」は,複数のプレゼンターが各自で選んだ本を紹介した後,聴衆が「最も読みたくなった本」に投票し,最多票を得た本を「チャンプ本」とする書評ゲームである。これを留学生対象の日本語コースで実施した。参加学生はそれぞれ2度プレゼンターとして書評プレゼンテーションを行った。その結果,聴衆が「チャンプ本」を選ぶというゲーム性が参加学生のモティベーションを高め,聴衆の理解や共感に対する配慮をもたらした。ビブリオバトル導入は日本語学習者のパブリックスピーキング技能向上に有効であることが示唆された。

研究ノート
feedback
Top