日本語教育
Online ISSN : 2424-2039
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156 巻
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一般論文
研究論文
  • ――日本人介護職員の視点からの分析と課題提起――
    上野 美香
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 156 巻 p. 1-15
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー

     EPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者の日本語をめぐる問題は,日本語研修の成果と課題,国家試験に関する調査や分析等を中心に議論が重ねられてきた。一方,受入れ現場や就労場面に焦点を当てた研究は数が限られており,成果が待たれる状況にあると言える。

     そこで筆者は,介護現場でフィールドワークを行い,日本人介護職員の視点からインドネシア人候補者の日本語をめぐる諸問題を明らかにすることとした。参与観察とインタビュー調査によって得られたデータを分析した結果,専門用語,リフレーズ,介護場面での日本語運用という側面から日本人介護職員の問題意識が浮き彫りにされた。本稿では,これらの問題についてデータを引用しながら実証的に論じ,受入れ現場からの知見に照らして,候補者を対象とした日本語教育および日本人介護職員への働きかけの方途を探り,課題を提起した。

  • ――「AもBもP」「AもP,BもP」構文に注目して――
    中俣 尚己
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 156 巻 p. 16-30
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー

     「も」に関しては従来,意味による分類が行われていたが,この論文では構文のタイプが学習者の母語に存在するかしないかによって習得難易度に差があるのではないかという仮説を立て,JFL環境の中国語話者を対象に,3種の調査によってそれを検証した。理解について調べた文法性判断課題においては構文タイプによる差は見られなかった。しかし,産出について調べた翻訳課題ならびに作文課題においては,通常の「AもP」構文の使用に全く問題ない学習者であっても,「AもBもP」構文や「AもP,BもP」構文の使用は難しいという,母語の干渉の存在を支持する結果が得られた。この結果は,産出のための文法を考える際には,日本語学の視点のみから記述された文法では不十分で,学習者の母語についても考慮する必要があること,またJFL環境における検証調査の重要性を示している。

  • ――「ために」の過剰般化は中国語話者に特有か――
    福田 純也, 稲垣 俊史
    原稿種別: 研究論文
    2013 年 156 巻 p. 31-44
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー

     本研究は,稲垣(2009)の追試により,目的を表す表現「ために」と「ように」における,中国語話者によるタメニの過剰般化が第一言語からの転移によるものなのか,実証を試みた。先行研究が示唆するように,タメニの過剰般化が中国語の「為了」との形式の類似に起因するものならば,この現象は中国語話者特有の現象だと考えられる。本実験では,日本語話者11名,中国語を第一言語とする日本語学習者11名,中国語以外を第一言語とする日本語学習者11名によるタメニとヨウニの習得状況を比較した。その結果学習者2グループ間でタメニの容認度に大きな差はみられない一方,中国語以外を第一言語とする学習者はタメニとヨウニの両方を容認する傾向が見られ,中国語話者はヨウニの代わりにタメニを容認するタイプの過剰般化が多いことが示された。以上の結果により本研究は,タメニとヨウニの習得における第一言語の影響を確認し,更に詳細な知見を付加したと言える。

調査報告
  • ――学術誌『日語学習与研究』(1979~2012)の分析から――
    田中 祐輔
    原稿種別: 調査報告
    2013 年 156 巻 p. 60-75
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー

     本調査報告は,学術誌『日語学習与研究』(1979~2012)を対象に,現代中国における日本語教育論議について,過去から現在にかけてどのような人々が何についてどのような指摘をしてきたかを整理するものである。結果(1)日本語教育論議は1990年代初頭から活発化し,(2)執筆者は北京や吉林,沿岸部諸都市の大学に所属する教師が半数を占め,(3)研究対象は大学の日本語教育が6割以上であり,(4)研究分野は「言語習得・教授法」と「言葉の運用」が約半数を占めること,(5)これまでに,文学重視・文化理解・コミュニケーション能力育成・国家建設・中国独自の日本語教育スタイル・学習者中心・研究型人材育成・社会ニーズへの対応・教養力・学習者主体・複合型人材・ビジネス日本語等に関する指摘がなされたこと,の5点が明らかとなった。

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