EPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者の日本語をめぐる問題は,日本語研修の成果と課題,国家試験に関する調査や分析等を中心に議論が重ねられてきた。一方,受入れ現場や就労場面に焦点を当てた研究は数が限られており,成果が待たれる状況にあると言える。
そこで筆者は,介護現場でフィールドワークを行い,日本人介護職員の視点からインドネシア人候補者の日本語をめぐる諸問題を明らかにすることとした。参与観察とインタビュー調査によって得られたデータを分析した結果,専門用語,リフレーズ,介護場面での日本語運用という側面から日本人介護職員の問題意識が浮き彫りにされた。本稿では,これらの問題についてデータを引用しながら実証的に論じ,受入れ現場からの知見に照らして,候補者を対象とした日本語教育および日本人介護職員への働きかけの方途を探り,課題を提起した。
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