日本語教育
Online ISSN : 2424-2039
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159 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
一般論文
研究論文
  • ――L2学習者の意味推測を支援するために――
    白石 知代, 松田 文子
    原稿種別: 研究論文
    2014 年 159 巻 p. 1-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー

     本稿は「ぬく」を後項とする複合動詞「V-ぬく」を取り上げ,コア理論を援用してその意味を記述したものである。これまで「V-ぬく」の大半は本動詞「ぬく」の意味が希薄化した統語的複合動詞であること,これらの「V-ぬく」には「貫徹」(例:走りぬく),「極度」(例:悩みぬく)などの用法があることが指摘されている(姫野,1999)。しかしこのような説明だけではL2学習者に納得のいく説明とはなりにくい。そこで本稿では本動詞の意味から複合動詞の意味推測が可能となることを目指し,本動詞「ぬく」の意味を「場所Yの中からYの外へXが移動することを表すが,その移動には必ず「抗う力」が伴う」と捉え直し,「ぬく」のコア図式を提示した。こうすることで,本動詞「ぬく」と語彙的/統語的複合動詞「V-ぬく」の意味の共通性を示すことが可能となる。

  • ――「弟は10歳だけだ」はなぜ不自然なのか――
    中西 久実子
    原稿種別: 研究論文
    2014 年 159 巻 p. 17-29
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー

     学習者は「弟は10歳だけだ」など不自然な「だけだ」を多用する。先行研究ではこのような「だけだ」は質を規定する名詞述語に接続すると不自然になるとされている。

     本稿では「だけだ」が質を規定する名詞述語に接続しても不自然にならない反例があることを指摘し,「だけだ」が不自然になる原因を解明する。「Xだけだ」というのはたとえば「朝食はバナナだけだ」のように「X+X以外」のセットを前提集合とし,その否定「X+X以外のセットではない。Xはあるが,X以外はない」を表していなければならない。しかし,問題となる「だけだ」では前提集合「X+X以外」があり得ない。質を規定する述語Xにつく「だけだ」では「X+X以外」が,「Xであり,かつ,X以外だ」になるからである。たとえば,学習者が用いる「弟は10歳だけだ。まだお酒は飲めない。」の場合,「弟が10歳であり,かつ,20歳だ」はあり得ないので,「だけだ」が不自然になる。

  • ――母語話者と非母語話者の使用実態から――
    松下 光宏
    原稿種別: 研究論文
    2014 年 159 巻 p. 30-45
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー

     本稿では,終助詞「もの」について,多くの先行研究や日本語教育での導入における意味・用法の記述(主に正当化や言い訳に用い,主に若い女性や子供が用いる)の妥当性を母語話者の使用実態を基に検証し,その本質的意味を考える。また,非母語話者の使用実態を調査し,コミュニケーション上の問題点を考察する。結果は次の4点である。1.「正当化・言い訳」用法は使用が少なく,理解・同意を提示/要求する用法や例などを示し理解を促す用法の使用が多い。2.性別・年齢差による使用の偏り(主に若い女性が使用)は各用法においてない。3.意味は「先行発話/事態の正当性を示す根拠を強い気持ちで提示する」ことを表す。4.非母語話者は上級者であっても使用が少なく,理解・同意を提示する用法の不使用がコミュニケーション上の問題点となりうる。以上の結果から,日本語教育では頻度・有用性ともに高い,理解・同意を提示する用法での導入を提案する。

調査報告
  • ――学会誌『日本語教育』の分析から――
    大場 美和子, 中井 陽子, 寅丸 真澄
    原稿種別: 調査報告
    2014 年 159 巻 p. 46-60
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー

     本研究では,会話データを対象とした多様な研究を「会話データ分析」という包括的な概念で捉え直し,学会誌『日本語教育』創刊号から153号で会話データ分析を行う研究論文170本を対象に,その研究の動向を年代別に分析した。まず,『日本語教育』中の(1)会話データ分析論文数の比率,(2)分析データ場面の傾向(母語場面,接触場面,両場面),(3)会話データの種類の傾向について年代別に集計した。次に,この集計結果に加え,各論文が分析項目として設定している項目も詳細に見つつ,当時の日本語教育の歴史的・社会的状況をふまえた総合的な分析を行った。この結果,80年代から会話データ分析の論文が増加し,分析も専門化・詳細化し,会話データ分析の研究成果を教育現場で活用することを主張する論文が増加していることが明らかとなった。今後は,より専門化・詳細化していく研究成果を多様化する教育現場で活用できるよう,会話データ分析の知見を多分野で共有し,連携していく重要性を主張する。

  • ――日本人教師・ロシア人教師・一般日本人の比較――
    渡辺 裕美, 松崎 寛
    原稿種別: 調査報告
    2014 年 159 巻 p. 61-75
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー

     日本人教師,ロシア人教師,一般日本人各20名にロシア語母語話者の発音評価を求め,その評定値と,評価後のコメントを分析した。分析の結果,日本人教師は,ロシア語母語話者の典型的な発音特徴が見られた場合に評価が厳格化し,日本語母語話者にとっての異音が見られた場合に評価が寛大化した。一方,ロシア人教師は,ロシア語の単音やストレスアクセントなどのロシア語の特徴が見られた場合に評価が厳格化し,「ほんをよむ」が「ほのよむ」になるような,拍の減少と[n]が同時に見られた場合に評価が寛大化した。以上の結果をもとに,教師の評価特性について考察した。

  • 小宮 千鶴子
    原稿種別: 調査報告
    2014 年 159 巻 p. 76-91
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー

     本研究では,中学高校教科書から選定された「経済の基礎的専門連語」の専門学習における有効性の検討を目的に,経済関係学部の専門基礎科目教科書3冊を資料として使用状況を調査した。その結果,「経済の基礎的専門連語」527種は,資料に同形式が使用された184種,類義形式が使用された115種,いずれも不使用の228種に大別された。

     同形式使用の184種では,専門語の共起語の品詞は動詞と名詞がほぼ同数で,語種は漢語が和語の3倍近く多かった。類義形式使用の115種は,共起語の品詞や語種などが中学高校教科書から選定された「経済の基礎的専門連語」とは異なる連語88種と複合語27種とに対応した。いずれも不使用の228種は,資料とは別の社会科学の書籍のコーパスに同形式が180種使用され,資料以外の専門科目の教科書に使用される可能性があることが確認された。以上から,「経済の基礎的専門連語」527種は,経済分野の専門学習に有効といえる。

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