日本語教育
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162 巻
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【特集】日本語教育の研究手法―「会話・談話の分析」という切り口から―
寄稿論文
  • ――量的分析と質的分析の必然的融合――
    宇佐美 まゆみ
    原稿種別: 寄稿論文
    2015 年 162 巻 p. 34-49
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル フリー

     本稿では,複合領域である「日本語教育学」の課題,従来の談話研究の動向に触れた後,「総合的会話分析」(宇佐美2008)という会話を分析する一つの方法論について,その趣旨と目的,方法について紹介する。また,この方法に適するように開発された文字化のルールである「基本的な文字化の原則(Basic Transcription System for Japanese: BTSJ)」,及び,『BTSJ文字化入力支援・自動集計・複数ファイル自動集計システムセット』についても簡単に紹介する。また,会話の分析を行う際にも,目的や対象によっては,量的分析と質的分析の双方が必要であり,その有機的な融合は,不可能ではないことを論じる。その上で,「総合的会話分析」の方法が,「日本語教育研究」にいかに貢献できるかについても論じる。また,多機能「共同構築型データベース」である「自然会話リソースバンク(NCRB:Natural Conversation Resource Bank)」についても,簡単に紹介する。

  • 八木 真奈美
    原稿種別: 寄稿論文
    2015 年 162 巻 p. 50-65
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル フリー

     近年,日本語教育研究においても質的研究の重要性は高まっている。本稿の目的は,ナラティヴという視座から質的研究方法の一つとしてのエスノグラフィーの新たな展開を示すことである。それに先立ってまず,ここで扱うエスノグラフィーは,単なる調査や分析の手順を指すだけではなく,認識論的な世界の見方に関わるものだということを述べる。次に,エスノグラフィーの分析プロセスを示した後,ナラティヴとの融合による新たなエスノグラフィーの展開を,筆者の研究を再考する形で示す。結論として,質的研究の調査や分析の方法は,自らの依って立つ解釈の枠組みを明示し,対象となる人や集団の理解を目指した上で,何を明らかにしたいのかによって多元的に選択し,組み合わせていくことができると考える。それにより,人間と言葉の複雑な関係をより深く捉えられる可能性が生まれることを主張したい。最後に,日本語教育における質的研究の意義について述べる。

  • 楊 虹
    原稿種別: 寄稿論文
    2015 年 162 巻 p. 66-81
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル フリー

     本研究は,話題上の話し手・聞き手の役割交替の様相を分析し,中日母語場面の話題展開のパターン及び中日母語話者の話題上の聞き手としての会話の参加の仕方の相違を明らかにした。分析の結果,1.日本語母語場面と比べ,中国語母語場面では,話し手と聞き手の役割交替が頻繁に見られ,聞き手側だった参加者が話し手役割の発話をする場合が多く見られることがわかった。2.「役割固定型」「協調的役割交替型」「役割回帰型」「話し手役割競合型」という4つの話題展開のパターンが見られ,この4つのパターンの生起分布について,中日母語場面を比較したところ,有意差が見られた。一つの話題が展開していくプロセスにおいて,日本語母語場面では,話題上の話し手と聞き手が比較的固定的であるのに対して,中国語母語場面では,会話参加者の双方が話し手役割をめぐって交渉する場面も多く見られるという中日母語場面の異なる特徴が明らかになった。

研究論文
  • ――なぜ「たり」で「可能性」や「意外性」が表せるのか――
    山内 美穂
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 162 巻 p. 82-96
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル フリー

     本稿は,一般に並列で用いられる「たり」を,「単独使用」することで生じる新たな用法に着目した研究である。具体的には「結婚しないと言ってた人が,結婚したりする」というような,会話文によく見られ,「可能性」の意味合いなどが生じる「たり」の用法について調査・考察した。調査にあたっては,20代~70代の日本語母語話者による2人1組の自然会話データ100人分を用い,会話で使用される頻度,形式のパタン,会話の流れなどを丹念に観察した。その結果,会話において,「たり」の「単独使用」形式は(a)「~たり」形式,(b)「~たりとか」形式,(c)「~たりして」形式の3つに分類され,「1つだけを例示し,一方でそれ以外のあらゆる事態や側面を暗示する用法」から「可能性」の意味合いなどが生じたり,話者の「意外」な気持ちが表せることなどを,実際の会話データを示しながら明らかにした。

一般論文
調査報告
  • 霍 沁宇
    原稿種別: 調査報告
    2015 年 162 巻 p. 97-112
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル フリー

     本稿は,2014年に都内の大学で行われた上級読解の授業及びそれによる学習者の読み方の意識変容プロセスに関する調査報告である。授業は,学習者の自己との対話,学習者同士の対話,教師を交えた全体の対話という「三つの対話」を用いて,正確な理解と批判的な読みという学術的文章を読むのに必要な読み方を身につけることを目的としたものである。調査では,22名の学習者へのインタビューデータを,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析し,彼らの読み方の意識変容プロセスを明らかにした。学習者は,授業の開始時期に【自分の読み方への固執】をしていた。授業では,【戸惑いと悩み】を感じながら,【努力と工夫】をし,【気づきと学び】が得られた。また,【授業スタイルの変化による相互作用の活性化】と【教室内外の活用及び達成感】を通して読み方が【より深く,より広く】変容していくことが明らかになった。

  • ――中国人学習者の場合――
    田中 信之
    原稿種別: 調査報告
    2015 年 162 巻 p. 113-128
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル フリー

     本研究は文章産出過程における辞書使用の実態を調査した。中国人学習者20名を対象に,再生刺激法を用い,電子辞書の使用状況を分析した。その結果,中日辞典と日中辞典が主に使用され,中日辞典は翻訳機的な機能,日中辞典は文産出の支援的な機能を果たしていた。検索成功率は約7割で,検索失敗後は過半数が検索を継続していたことから,学習者の辞書への期待が窺えた。一方,辞書を用いて書いた箇所の正用率は約6割で,検索失敗後,自力で書いた箇所の正用率と大差なかった。用例参照率の低さが原因の一つだと推測できるが,用例を参照して書いた箇所の正用率は6割を下回った。この結果は学習者が用例を参照しても文産出に活かせていないことを示している。誤用の原因は文法やコロケーションで,用例参照により文法情報は得られるが,コロケーション情報は読み取り困難なことがわかった。学習者がこの性質を知らないことが正用率に影響したと考えられる。

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