日本語教育
Online ISSN : 2424-2039
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164 巻
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一般論文
研究論文
  • 内藤 真理子, 小森 万里
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 164 巻 p. 1-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー

     学部留学生が書いたレポートの中に不要な語や表現の重複があることにより,読み手に稚拙な印象を与えることがある。重複を回避するためには,学生の気づきを促す指導を行うことが有効であると考える。しかし,作文教材を調査したところ,重複が十分には扱われていないことがわかった。このことから,アカデミック・ライティングの授業において重複が積極的に取り上げられていないことが推測される。そこで,重複回避を意識したライティングの指導ができるよう,その基礎研究として本研究を行うことにした。本稿では,まず,学部留学生のレポートから,複数の判定者によって重複と判定されたものを抽出し,次に,文レベル,談話レベル,およびその2つのレベルに関連する重複をみていくため,卓立性・結束性・論理性・一貫性の4つの観点を導入し,それぞれに関わる重複に分類し,分析・考察を行った。さらに,重複と判定されなかった文との比較も行った。

  • 中島 和子, 佐野 愛子
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 164 巻 p. 17-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー

     多言語環境で育つ年少者の作文力の分析には,モノリンガル児とは異なり,4大要因(年齢,滞在年数,入国年齢,母語力)を踏まえる必要がある。本研究は,英語圏で収集した日・英バイリンガル作文(「補習校データ(2010)」)336名から選出した小学校6年生から中学校3年生(82名)を滞在年数と入国年齢によって短期・中期・長期の学習者グループに細分化し,各グループの特徴を把握すると同時に,日本語指導のあり方について考察した。分析の対象は,作文の構想を練る段階であるプレライティングと本文の文章構成力である。文章構成力の指標としたのは導入部分とまとめの部分,単文を使用する割合である。またバイリンガル児特有のトランスランゲージングと2言語の関係にも留意した。これら4大要因による学習者の細分化は,国を越えて移動する国内外の年少者一般の言語能力を把握する上で,また実態に即した指導への示唆を得る上で,極めて有用である。

  • 魏 維
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 164 巻 p. 34-49
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー

     本研究は清末に行われた日本語学習活動を近代日本語教育史の一部として捉え,読解・翻訳を主とした日本語教育において行われた音声教育に注目する。具体的には言語教育の視点から清末に編集された日本語教科書や学習書に用いられた発音教育の方法などを考察の対象とし,清末の日本語音声教育の実態を探る。考察の結果,清末に行われた独自の日本語学習活動において,読解・翻訳という言語習得の目的に応えた和文漢読法が誕生したが,そこでは文字と音声が分断され,音声教育が軽視される傾向にあったことが明らかになった。また,清末の学校教育においては,反切法や直接表音法などが表音表記として使われたこと,日本人教師の登場により,清国人の方言訛りなどによる発音の混同が意識されるようになったことなどが明らかになった。

  • 近藤 優美子
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 164 巻 p. 50-63
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー

     本稿では,補助動詞「しまう」のうち,現実の世界で既に実現した事態に接続するものをテシマッタとし,テシマッタが何を表すかと,そこから課される使用制約を明らかにした。

     テシマッタは,実現した「事態は想定と異なる」という話し手の評価的態度を表す。そこから次の使用制約が課される。話し手は,具体的にはどのように「事態は想定と異なる」か,を表す情報を,聞き手が文脈から得られるようにする必要がある。検証は1.会話コーパスの分析,2.二種類の話し手の評価的態度「事態は想定と異なる」と事態は想定通りという文脈内での例文の自然度判定調査,3.会話作成調査の三つの手法による。2,3は母語話者調査である。

     カーナビが「目的地に到着してしまいました」と言ったら不自然であるのは,機械であるカーナビが事態を評価することはない点,また目的地に着くという事態は想定通りである点でテシマッタの使用制約に反するからである。

調査報告
  • 黄 明淑
    原稿種別: 調査報告
    2016 年 164 巻 p. 64-78
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー

     本研究は,「さくらんぼ狩りへの誘い」というロールプレイデータを用いて,中国語母語話者(以下CNS)と日本語母語話者(以下JNS)の「誘い」談話における再勧誘の言語行動を比較することを目的とする。分析の結果,1)再勧誘のやりとりの回数においては,CNSがJNSより有意に多かった。2)再勧誘の切り出しの意味公式別使用数においては,CNSは「意志要求」がJNSより有意に高く,JNSは「受け止め」がCNSより有意に高かった。また,再勧誘を構成する各意味公式の生起頻度においては,「受け止め」「気配り発話」「同意表明」において,JNSがCNSより有意に高く,「代案提示」「誘導発話」「意志要求」「理由尋ね」「負担軽減」「相手非難」において,CNSがJNSより有意に高いことが明らかになった。以上の結果から,CNSは積極的で,自分を強く押し出す目的達成型で,JNSは無理強いをしない対人配慮型であることが示唆された。

  • 戸坂 弥寿美, 寺嶋 弘道, 井上 佳子, 髙尾 まり子
    原稿種別: 調査報告
    2016 年 164 巻 p. 79-93
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー

     本研究では,学外でのインタビュー活動における学習者の不安とその変化を明らかにした。対象者は日本国内の大学で日本語中級コースを履修する144名であった。まず,インタビュー活動前後の不安を比較した結果,活動後,6項目において有意に低下した。因子分析の結果からは,活動前後とも「インタビュー活動における不安」という1因子が抽出され,その因子の不安の大きさは性別や教室外での日本語使用時間という条件で異なっていた。さらに,母語話者の言語,協力的な母語話者の存在,活動での失敗経験と失敗に対する意識,成功体験,自身の日本語力に対する肯定的な気づき,タスクの難易度に対する認識,効果的なタスク達成の方法に対する気づきが不安の変化の様相に影響を与えた要因であると考察した。また,活動後の学習者の意識に関しては5つの肯定的変化が見られ,その変化が今後のインターアクションにおいて効果を生む可能性があることを考察した。

実践報告
  • 向山 陽子
    原稿種別: 実践報告
    2016 年 164 巻 p. 94-109
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー

     本研究はビジネス日本語教育におけるタスク中心の指導の効果を検証することを目的とする。大学院ビジネス日本語コース在籍の2年生20名を実験群とし,ビジネス場面のストーリーを設定することで真正性を高めたタスク教材を用い,ビジネスメール・ビジネス文書作成の授業を15回行った。1回目,8回目,15回目に行ったタスクのパフォーマンス,および異なる指導を受けた対照群20名の15回目のタスクのパフォーマンスを比較した結果,実験群のビジネスメール作成能力(全体的評価,形式の適切さ,社会言語的適切さ,語用論的正確さ)に有意な伸び,および対照群との差が示され,ビジネス日本語教育において真正性を高めたタスク教材を用いた指導に効果があることが明らかになった。しかし,文法の正確さには有意な伸びが見られなったことから,文法能力向上のためには,言語形式により多くの注意を向けさせる指導を組み込む必要があることが示唆された。

  • 楊 煜雯
    原稿種別: 実践報告
    2016 年 164 巻 p. 110-125
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー

     台湾人日本語既習者が発音能力維持のために利用できるe-learning自学教材の作成を試み,教材使用前後の発音能力の日本語母語話者による評価結果に基づいてその有効性を考察した。e-learningシステムとして「Moodle」を利用し,「聞き分けトレーニング」と「リピート・トレーニング」の2種類の練習教材を準備した。Aコースはまず「聞き分けトレーニング」,次に「リピート・トレーニング」を受ける。BコースはAコースと逆の順である。参加者の発話を日本語母語話者が聴覚評定した結果から,1.Aコース,Bコースとも参加者全体の発音能力が有意に伸びたこと,2.実質50分のトレーニングで有意な練習効果が見られたことがわかった。また,「聞き分けトレーニング」は即時にフィードバックが得られるため,学習のモチベーションを高める効果があったと考えられる。

  • 古川 智樹, 手塚 まゆ子
    原稿種別: 実践報告
    2016 年 164 巻 p. 126-141
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/08/26
    ジャーナル フリー

     本稿では,大学・大学院進学を目的とする上級日本語学習者を対象に,日本語科目の文法教育においてTraditional Flip(2014年9月~1月:実践①)と実践①に練習問題等の課題を追加し,より学習者主体の授業に近づけた反転授業(2015年4月~7月:実践②)を行った実践結果を報告する。分析は,視聴(アクセス)ログ分析,学習成果分析,アンケート調査及び半構造化インタビュー調査の3つを行った。以上の調査及び分析を行った結果,視聴ログ分析,学習成果分析,いずれにおいても実践②において反転授業の効果が確認された。また,アンケート,インタビュー調査においても,学習者は講義動画を高く評価しており,それらによって文法の理解度が高まり,授業にも入りやすくなったという意見が多数を占め,本実践で行われた反転授業が有効に機能していたことがわかった。

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