日本語教育
Online ISSN : 2424-2039
Print ISSN : 0389-4037
最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
【特集】2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催と日本語教育
寄稿論文
  • 井上 史雄
    原稿種別: 寄稿論文
    2016 年 165 巻 p. 3-17
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

     ここでは,オリンピックの言語問題を論じる。経済言語学的観点から2種の資料を提示する。第1として,グーグル検索を利用し,オリンピックと言語への言及の変化を見る。言語の市場価値は,かつては戦争に左右されたが,現代は経済に影響を受ける。オリンピックへの関心は短期間で,言語への関心や習得が長期にわたるのと,タイムスパンが違う。スポーツ大会は言語に限定的な作用しか与えない。

     第2として,開催都市の言語景観を考察する。オリンピックはじめスポーツ関係の国際的行事で多言語景観が出現する。しかるに2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは,日英+ピクトグラムを基本にするそうで,公的言語サービスとしては後退を示す。ただ私的企業としては,多言語化によって客を呼び込む可能性があるわけで,ビジネスチャンスととらえることができる。

  • 東京都オリンピック・パラリンピック準備局
    原稿種別: 寄稿論文
    2016 年 165 巻 p. 18-29
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

     2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催,さらに外国人旅行者の急増を背景に,外国人の日本滞在中の言葉やコミュニケーションでの障害をなくし,「言葉のバリア」がなくなることを目指して,官民一体の「2020年オリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応協議会」が設立された。同協議会では,「交通分科会」「道路分科会」「観光・サービス分科会」の3つの分科会を設け,外国人旅行者の受け入れ環境整備について調査・検討を行い,さまざまな取組を行ってきている。ここでの取組が,東京オリンピック・パラリンピック開催後も生かされて,レガシーとして残り,「言葉のバリアフリー」が実現されることを願っている。

  • 舛本 直文
    原稿種別: 寄稿論文
    2016 年 165 巻 p. 30-43
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

     本稿では,オリンピックの文化プログラムをクーベルタンが構想した「芸術競技」まで遡ってその目的を確認した。彼は心身ともに調和のとれた人間として育つために芸術的な素養をアスリート達に求めていた。彼が偽名を使って文学部門に参加した作品『スポーツへの頌歌』では,スポーツの可能性だけでなく人間の努力も訴えていた。戦後,芸術競技は「芸術展示」となり,1992年のバルセロナ大会から「文化プログラム」へと変わっていった。1958年には「オリンピック讃歌」が復活したが,その日本語歌詞から勇壮さが窺い知れた。1972年札幌,1998年長野大会では言語文化の展示やプログラムは見られないが,作文や「1校1国運動」による現地語への関わりが見られた。2020年東京大会でも文化プログラムが計画されているが,言語文化の文化プログラムは期待薄である。しかしながら,オリンピック・パラリンピック教育を通じ,各国の言語文化にふれる機会を活用したい。

  • 室伏 広治
    原稿種別: 寄稿論文
    2016 年 165 巻 p. 44-49
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

     アスリートにとってのコミュニケーションの重要性を,自分の経験をもとに示し,コミュニケーション能力と競技力との関連について述べた。また,ハンマー投の競技者としての私のアイデンティティや,日本的身体感覚とことばとの関わりについて記した。さらに,オリンピック・アスリートの存在の意味を自問し,社会に貢献できることについて示した。

  • 165号特集ワーキンググループ
    原稿種別: 寄稿論文
    2016 年 165 巻 p. 50-56
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

     当報告は,1998年の長野オリンピックで行われた「一校一国運動」について,長野市教育委員会事務局の職員にインタビューを行ったものである。インタビューの結果,「一校一国運動」は現在も10校程度継続しており,継続の要因として,明確なテーマがあること,相互交流や組織的な位置づけができていることが挙げられた。また,活動を通して,言語間での相違点や共通点に気づきが見られたこと,多言語への意識が高まったことが挙げられた。

一般論文
研究論文
  • 松下 光宏
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 165 巻 p. 57-72
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

     原因・理由を表す接続辞「ものだから」は,これまで「PものだからQ」のPとQが表す事態の特徴や機能からとらえた意味や用法が説明されてきた。本稿では,「PものだからQ」文より前や後の文脈に表される事態も分析し,「ものだから」の使用文脈の特徴を明らかにする。その特徴は次のとおりである。

     「PものだからQ」は,話し手の認識において,本来・通常の事態とは異なる,異質・例外の事態Qとそれを引き起こす異質・例外の理由Pを表し,本来・通常の事態と対比的に示す文脈で用いられる。

     そして,この使用文脈の特徴から,当該事態が本来・通常の事態と異なる,異質・例外の事態であるという話し手の判断が使用条件になり,さらにこの使用条件が予想や期待と異なる都合の悪い事態に対して理由を述べる「言い訳・弁解」の用法に結びつくことを述べる。

調査報告
  • 獅々見 真由香
    原稿種別: 調査報告
    2016 年 165 巻 p. 73-88
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

     本研究では,オノマトペの会話教材の提案を目標に,前段階として不可欠である,会話におけるオノマトペの基本語彙選定を行った。基本語彙の選定方法としては,出現頻度調査に加えて親密度調査を行い,両方のデータを統合させる手法を採った。出現頻度調査の結果,オノマトペの出現頻度に偏りがあったが,出現頻度データに親密度データを加味することで基本度の順位を決定することができた。親密度調査にあたっては,幅広い年代の新しいデータを収集するため,独自の調査を行い,成人458名(男性218名,女性240名)のデータを得た。その上で,主成分分析を行い,その得点により273語のオノマトペの基本度の順位を決定した。そのうち,主成分得点の低い21語を除外した252語を,本研究における基本語彙としてのオノマトペとした。

  • 星(佐々木) 摩美
    原稿種別: 調査報告
    2016 年 165 巻 p. 89-104
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/26
    ジャーナル フリー

     韓国中等教育日本語教師の実践とビリーフについて,変化とその要因を中心に12名の教師の質的データを分析し考察した。その結果,変化には二つの要因があることがわかった。

     一つ目は教育政策が示す教科のあり方,内容,教え方などの新しい知識を,実践の中でやってみることがきっかけとなっていた。その実践化のためには,①実践の文脈に動機があること,②実践できる手段や方法の具体的イメージが作れること,③教師の持っているビリーフと親和性があり,実践化することで何らかの価値が期待できることが必要であることが考えられた。

     二つ目に,授業実践は,主に学習者と,学習者によって媒介された社会との相互作用によって常に再構成されている。教師の実践の語りに現れるビリーフは,教師自身の経験や媒介された社会など異なる源泉をもっており,それが重層的に積み重ねられることが要因であった。その変化はビリーフに多声性をもたらしていると考えられる。

feedback
Top