日本語教育
Online ISSN : 2424-2039
Print ISSN : 0389-4037
ISSN-L : 0389-4037
166 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
一般論文
研究論文
  • 武内 博子
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 166 巻 p. 1-14
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/26
    ジャーナル フリー

     本稿では,EPAに基づく介護福祉士候補者(以下候補者)が現状をふまえ,よりよく介護福祉士国家試験対策(以下国家試験対策)が進められるよう学習支援者は何ができるかその提言を行うことを目的に,候補者に具体的にどのように国家試験対策を進めたのか,またその過程で思ったことなどを構造構成的質的研究法に基づきインタビューを行った。インタビューデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析した結果,国家試験対策過程は大きく停滞から促進へと移行することが明らかになった。この結果を受け,①長丁場である国家試験対策期間のモチベーション維持への働きかけ②学習支援担当者が国家試験対策の全体像を見せる③候補者を孤立させないといった3点を学習支援者が意識して進めていくことが必要であろう。また候補者と施設職員の双方にとって,関係性を築いていく力や態度を育成する場が必要ではないかと考える。

  • 藪崎 淳子
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 166 巻 p. 15-30
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/26
    ジャーナル フリー

     本稿は,「取り立て」とは何かを再考するものである。「係助詞」「副助詞」という伝統的カテゴリーの別を排し,両者に共通するところを括る「取り立て」は,日本語学だけでなく,日本語教育の分野においても用いられる術語である。しかし,「取り立て」とは何かについて一定の見解はなく,範列関係を表すものを「取り立て」とする立場と,範列関係を表すことに加えて「要素をきわだたせる」ものを「取り立て」とする立場がある。この定義の差によって扱いの異なる,概数を表すグライ・バカリ,順序を表すカラ・マデの検証を通じ,「取り立て」の意味を考える。そして,「取り立て」とは範列関係を表すものであると捉えると,形式間に見られる分類基準の差を解消でき,さらには助詞だけでなく,類義の副詞も含めた「取り立て」形式の体系を成す上でも有意であると主張する。また,本稿の議論が日本語教育にどう関わるのかにも言及する。

  • 松下 光宏
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 166 巻 p. 31-46
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/26
    ジャーナル フリー

     接続辞「ものの」はこれまで「PもののQ」のPとQの事態の特徴や両者の関係でとらえた意味や用法の説明が中心であった。本稿では,「PもののQ」文より1つ前の文・節との連接という観点から,「PもののQ」の使用文脈の特徴と「Pものの」の役割を論じる。さらに,「PもののQ」を用いる際の文法上の必要条件についても述べる。その特徴は次のとおりである。

     ・「PもののQ」は直前の文・節がPとは連接せずQと連接し,Qが直前の文・節と同じ主題について事態を述べるという文脈でよく用いられる。「Pものの」は直前の文・節とQが表す事態について,その文脈の流れには沿わないPという事態も存在することを注釈として表す。

     ・「PもののQ」はPの主題がQの主題と同じものか,Qの主題に従属するもの(Qの主題の部分,Qの主題の行為,Qの主題の程度や方法など)という条件を持つ。

  • 大神 智春
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 166 巻 p. 47-61
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/26
    ジャーナル フリー

     中国語母語話者および韓国語母語話者を対象に,多義動詞「とる」で形成されるコロケーションの習得について調査した。まず(1)日本語母語話者が認識する「とる」の意味体系を整理した。次に(2)学習者が考える「とる」のプロトタイプ,(3)「とる」で形成されるコロケーションの理解について調査・分析した。その結果,(1)母語話者が考える意味体系と辞書的体系はおおよそ一致するが一部相違が見られる,(2)学習者と母語話者が考えるプロトタイプにはずれが見られ,学習者は独自の意味体系を構築していると考えられる,(3)学習者は多義性についてある程度習得するが,共起語として使用できる語の範囲は広がりに欠ける。各コロケーションの用例を「点」として習得し,習得した知識は「面」として広がりにくいことが示唆された。

  • 劉 瑞利
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 166 巻 p. 62-76
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/26
    ジャーナル フリー

     本研究は,日本語学習者の「名詞+動詞」コロケーションの使用と日本語能力との関係を明らかにすることを目的としたものである。扱うデータは,「YNU書き言葉コーパス」において下位群,中位群,上位群に分けられた中国語母語話者及び韓国語母語話者の日本語作文データであり,学習者全員が一般的に上級と称されるレベルである。3つのグループにおける「名詞+動詞」コロケーションの使用について調査した結果,以下の2点が明らかになった。①コロケーションの使用頻度は,学習者の日本語能力が上がるにつれ高くなり,日本語能力と正の相関関係がある。②コロケーションの誤用数は,中位群が有意に多いこと,上位群が有意に少ないことが確認された。日本語学習者の「名詞+動詞」コロケーションの習得は,学習者の日本語能力が上がるにつれ,誤用が一時的に増えるが,その後習得が進み,誤用が減っていくという過程を経ることが示された。

調査報告
  • 小口 悠紀子
    原稿種別: 調査報告
    2017 年 166 巻 p. 77-92
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/26
    ジャーナル フリー

     本研究は,上級学習者の談話における「は」と「が」の習得について,運用実態の調査と知識を測る課題という相互補完的なアプローチにより,日本語指導につながる新たな知見を示すものである。具体的には,談話の先行文脈に対象が未出か既出かによる「は」と「が」の使い分けについて,発話産出課題と受容性判断課題を用いて調査した。

     その結果,学習者は様々なストラテジーを使いつつ標識の選択をしており,運用面では母語話者に近い使い分けが見られる部分もあるが,未出,既出という言語知識に従って標識を使い分ける段階には至っていないことが分かった。このことから日本語教育において,「は」と「が」の使い分けについて指導を行う際には,ある程度の長さがある談話教材を用いて,文脈を重視した活動を行うとともに,自動化を促すことを意識していくことが効果的であると考える。

  • 池田(三浦) 香菜子
    原稿種別: 調査報告
    2017 年 166 巻 p. 93-107
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/26
    ジャーナル フリー

     本研究では,日本語を第二言語とする(以下,JSL)生徒(n=8)を対象に,小・中学校教科書で使用される多義動詞の意味・用法の習得について産出・理解調査を行った。対象動詞は,日本語モノリンガル(以下,Mono)の子どもが初期の段階で習得すると考えられる基本的な多義動詞10語で,対象用法は教科書コーパスから選出された80用法である。調査の結果,産出・理解ともにJSLの派生的用法の習得は中心的用法に比べ難しいことが分かった。さらにMono・JSLの産出正答率をもとに,JSLのみ正答率が低い用法とMono・JSLともに正答率が低い用法に分けて分析し,JSLが苦手とする用法の特徴を詳細に調べた。教科書にはMono・JSLともに産出が難しい用法が存在し,JSLの語彙力はMonoと同様に発達過程にあると言えるが,一方で理解面における遅れは,JSLのみに見られることが明らかになった。

研究ノート
  • 磯野 英治, 西郡 仁朗
    原稿種別: 研究ノート
    2017 年 166 巻 p. 108-114
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/26
    ジャーナル フリー

     言語景観が日本語を学ぶ学習者のための教育・学習リソースとして注目され,実際の授業での活用も始まっている。本稿では,2020年オリンピック・パラリンピック東京大会という社会的なトピックと言語景観を関連付けた新しいコンセプトを有する日本語教育用ビデオ教材『東京の言語景観-現在・未来-』について制作における目的と内容,および公開方法と授業実践を報告した。授業実践では,ビデオ教材を使用した教育実践によって,日本語学習者が身近に存在する言語景観の様々な特徴に気付くだけではなく,社会を構成する要素として言語景観を意識できるようになったと考えられる。

feedback
Top