日本語教育
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169 巻
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一般論文
研究論文
  • ――香港人青少年学習者による日本語学習の エスノグラフィー――
    野村 和之, 望月 貴子
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 169 巻 p. 1-15
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/26
    ジャーナル フリー

     点数至上主義の競争文化で学歴が社会的威信に直結する香港では,学校が強い影響力を持ち,学校での競争で優位に立てない青少年は抑圧や劣等感に晒される。本稿はエスノグラフィーの手法で香港人青少年の日本語学習を社会文化的文脈に絡めて分析し,青少年学習者にとって,日本語学習が学校での抑圧から逃れるための「心の拠り所」 (safe house) として機能していることを明らかにする。香港において日本語は大学入学資格試験の選択科目になるなど十分な威信を持ち,学校内外での日本語学習は青少年が学校からの抑圧への「対抗的アイデンティティ」 (subversive identity) を構築する基盤となっている。その反面,心の拠り所となるはずの日本語学習も香港の競争文化と無縁ではない。香港で広く普及するSNS を媒介した青少年学習者同士の繋がりの中にも,言語能力・文化的知識・新情報の入手速度などをめぐり,学校での競争と共通した優越感と劣等感のせめぎ合いが存在している。

  • ――上級学習者を対象に――
    高橋 恵利子
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 169 巻 p. 16-30
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/26
    ジャーナル フリー

     日本語学習者の日本語アクセントの習得に関わる認知的な要因を調査するために,上級韓国人日本語学習者70名を対象に,アクセント習得に関わると考えられる複数の課題を課した。課題は,有意味語の読み上げ課題,アクセント正誤判断課題,無意味語の読み上げ課題とそのモニター課題,およびアクセント弁別課題の5つであった。読み上げ成績と最も相関が高かったのはアクセント正誤判断課題であった。また変数間の関係について,アクセント生成と他変数との関係を考察するために重回帰モデルの検討を行った結果,アクセント生成成績を予測する変数はアクセント正誤判断課題成績のみであることが示された。

  • ――日本語母語話者との使用上の違い及び母語の影響――
    劉 瑞利
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 169 巻 p. 31-45
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/26
    ジャーナル フリー

     本研究は,「YNU書き言葉コーパス」を用い,中国語を母語とする上級日本語学習者 (以下,上級CJL) の「名詞+動詞」コロケーションの使用について,日本語母語話者 (以下,JNS) との使用上の違い及び母語の影響を調査したものである。母語の影響に関しては,韓国語を母語とする日本語学習者 (以下,KJL) のデータで検証した。その結果,上級CJLはJNSと比べ:①コロケーションの延べ数は有意に多かったが,異なり数は同程度だった;②高頻度コロケーションを多く使用しているが,共起強度の高いコロケーションの使用が少なかった;③使用頻度上位30位のコロケーションにJNSと共通するものが多かったが,使用制限の少ない共起語を選ぶケースも見られた。また,誤用の25% (30例) は母語の影響だと母語話者に判断され,そのうち3例がKJLにも見られた。母語の影響は母語話者の直感による判断のみでは不十分であることを示した。

調査報告
  • 許 晴
    原稿種別: 調査報告
    2018 年 169 巻 p. 46-61
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/26
    ジャーナル フリー

     本研究では,中国の日本語専攻学習者を日本語志望群と非志望群に分類し,「日本語志望群は非志望群より動機減退の比率が低い」という仮説を検証することと,両群の動機減退因子および,専攻の振り分けと動機減退の関連を明らかにすることを目的とした。質問紙調査を行った結果,仮説は棄却された。日本語志望群・非志望群とも,5 つの動機減退因子が抽出されたが,両群の動機減退の因子構造には相違が見られた。日本語志望群であっても,必ずしも動機が減退しないとは限らず,成績と運用能力への落差感,自信と興味の喪失,専攻選択上の問題などが動機減退と関連があった。一方,日本語非志望群は教師に依存する傾向があり,日本語に取り組む姿勢が窺えるが,言語学習のレディネスができていない中で,学習成果が伴わず,動機が減退していることが窺える。

実践報告
  • ――対話がどのように生まれ,つくられるのかを観点に――
    岡田 亜矢子
    原稿種別: 実践報告
    2018 年 169 巻 p. 62-77
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/26
    ジャーナル フリー

     本稿は筆者が担当する大学での授業で実践した対話活動において,対話がどのように生まれ,つくられるのかを分析,考察し,今後の活動再設計に向けて行ったものである。授業開始時の留学生の日本語学習への希望は,日本語コミュニケーションスキルと,日本語を使って実現したいこと (研究室コミュニティメンバーの一員として存在し十分に参加したい) の2点が毎回挙がる。そこで,後者の希望を目標に据えた対話活動を設計し実践してきた。日本人も参加する対話活動の録音と,活動後に参加者記述の振り返りシートのデータを「聴く・つなぐ・もどす」の分析観点で,対話のうねり度合いをスケール化し,対話の動きの変化を時間軸のグラフで可視化して分析,考察した。その結果,対話が生まれ,つくられるのに大きく関与する要素は,グループ活動の進め方,対話の場での態度や参加の仕方,グループ活動での支援と環境づくりの必要性の3点に集約された。

  • ―デザイン実験による指導法の開発―
    小山 悟
    原稿種別: 実践報告
    2018 年 169 巻 p. 78-92
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/26
    ジャーナル フリー

     本研究は,歴史を題材としたCBIで学習者の批判的思考を促す手段として質問作成を提案し,実際の教育現場で想定どおり機能させるためにはどうすればよいのかを,デザイン実験という新たな研究方法によって明らかにしようとするものである。これまで「質問作成を意識することで講義を聞く態度に変化が生じ,質問の質も高まる」という学習モデルを立て調査を行ってきたが (小山 2014, 2015, 2017),想定したような結果は得られなかった。そこで本研究では,質問作成が精緻化という学習方略の1つであることから,篠ヶ谷 (2012) や湯澤 (2009) らの学習方略研究の知見を取り入れ,「質問作成の下地づくり」と「質問作成指導」の2点から学習モデルの再構築を行った。その結果,講義の聞き方に関する数値は全項目で事前調査を上回り,これまで一度も産出されなかった高次の応用的質問が初めて産出された。また,質問の長さもこれまでの最高値の5倍を超えるものとなった。

  • ――異文化間で活躍できる人材の育成をめざして――
    小玉 安恵
    原稿種別: 実践報告
    2018 年 169 巻 p. 93-108
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/04/26
    ジャーナル フリー

     近年のグローバル化に伴い,国を越え就職する学生が増えている中,カルフォニア州立大学サンノゼ校では学生の異文化間能力を育成するため,二つの国のクラスを毎週70分間オンラインでつなぎ,日米の学生達が協働で学習するCOILという新しい教授法に基づいた実践型の日本文化の授業を実施している。本稿ではまずCOILという新しい教授法を紹介し,次に本稿の理論的枠組みであり,授業内容や活動の決定の際参考にしたBennett (2004) のDevelopmental Model of Intercultural Sensitivity, Vulpe et.al (2001) による異文化間で効果的に働ける人物像のプロファイル研究,及びWillingham (2007) の批判的思考を紹介する。そして,最後に学生の気づきや批判的思考の促進,相対的視点の育成及び世界観の変容を目的とした異文化間協働型のクラス活動やリサーチプロジェクトの実践報告を行う。

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