日本語教育
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175 巻
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【特集】日本語が拓く多様なキャリア形成
寄稿論文
  • ―キャリアデザインの視点から―
    山田 泉
    原稿種別: 寄稿論文
    2020 年 175 巻 p. 4-18
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2022/04/26
    ジャーナル フリー

     人は一生を通じて自己実現の過程を歩むと言えよう。自己実現とは完全に自分らしく生きていると自らが実感できる状態のことである。そのために「自分とは何か」を追求し,今,現在の自己認識から,目指すべき生き方形成 (キャリア形成) の方向性を得,それに向かって人生の設計 (キャリアデザイン) を行う必要がある。自己認識とは,過去から現在の自分,未来へと続く身近な人々の人生とのかかわり及び同時代に生きる身近な人々とのかかわり,関係性から「他者の他者としての自分」 (鷲田 1996:105-25) として反転的に得られるものである。タイトルを「多言語・多文化背景の年少者のキャリア形成」としているが,外国につながる子どもたちの多くが十全に「多言語・多文化背景」があるかどうかは疑わしい。彼・彼女らのキャリア形成において,「多言語・多文化」であることは,社会参加のためのスキルとしてのエンプロイアビリティ (労働市場においてプラスに評価されうる就業能力) だけでなく,自己実現の過程を歩む上で必要な自己認識にとっても重要なものである。外国につながる子どもたちに母語・母文化 (継承語・継承文化) を保障することは日本社会の責務である。

  • ―リテラシーの補償と保障に向けて―
    新矢 麻紀子
    原稿種別: 寄稿論文
    2020 年 175 巻 p. 19-33
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2022/04/26
    ジャーナル フリー

     国際結婚移住女性3人を取り巻く環境を観察しその語りを分析することによって,職業選択や地位達成にかかわるワークキャリアと,学歴,家族,交友関係等にかかわるライフキャリアを描出した。そのプロセスで,3人の日本語習得や日本語能力が何とどう関わり,どのような意味を有し,いかに人生を支えているのかを見た。

     資源化とアイデンティティ・ワークという概念を用いて分析した結果,3人が,エスニシティ,ホワイトネス,日本語をそれぞれ資源化し,自身の存在を確認するアイデンティティ・ワークを行いつつ,ワークキャリアやライフキャリアを形成していることがわかった。

     彼女ら「生活者としての外国人」が質の高い生活と社会参加を実現するには,コミュニティが彼女らの多様な日本語に寄り添い日本語リテラシーの欠如を補う「リテラシーの補償」と国や自治体などの「公」が日本語学習を保障する「リテラシーの保障」の両者が必要であることを提案した。

  • 布尾 勝一郎, 平井 辰也
    原稿種別: 寄稿論文
    2020 年 175 巻 p. 34-49
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2022/04/26
    ジャーナル フリー

     近年,外国人介護・看護労働者の受け入れが急速に進んでいる。とりわけ,介護の分野では,経済連携協定 (EPA) に基づく介護福祉士候補者に加え,在留資格「介護」の創設,外国人技能実習制度への介護職種の追加,在留資格「特定技能」での就労など,ルートも多様化・複雑化している。また,それに伴い,労働者のキャリア形成や,その過程で生じる問題も多様化していると思われる。

     本稿では,それらの各制度や,制度に基づき就労する労働者のキャリアパスの概要を示す。そのうえで,元EPA介護福祉士・看護師候補者に対して行ったインタビューの結果を紹介し,候補者ら自身のキャリア形成実態や,キャリアについての考え方の一端を明らかにする。さらに,インタビューを通じて明らかになった,制度や社会の問題点を指摘し,改善のための提言を行う。

  • ―インターンシップ参加の実態調査と事例から―
    横須賀 柳子
    原稿種別: 寄稿論文
    2020 年 175 巻 p. 50-64
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2022/04/26
    ジャーナル フリー

     日本社会では少子高齢化により労働者人口が減少する中,若年者の職業的・社会的自立を促すインターンシップへの参加者数が著しく拡大してきている。大学在籍中の就職活動前に行う企業でのビジネス実践は,日本人学生のみならず,グローバル人材としての活躍が期待される外国人留学生のキャリア形成に大きな影響を与えるはずだ。質的転換を志向する大学教育にとっても,インターンシップはアクティブ・ラーニングの重要な一方法となる。

     本稿では,「キャリア」を生涯発達の視座から捉え,まず,政府・民間企業などによる調査結果を基にインターンシップ全般について概説する。また,留学生の事例を取り上げて,ビジネスの現場と多様な他者との関わりの中でことばや文化を学び,将来の自分の生き方を探求する実態を明らかにする。

  • ―世界市民の育成のために―
    福島 青史
    原稿種別: 寄稿論文
    2020 年 175 巻 p. 65-79
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2022/04/26
    ジャーナル フリー

     「海外の日本語学習者」は,「日本語教育機関において,外国語としての日本語を学ぶ外国人成人」だけではない。移動の時代において,移住や国際結婚などにより,「日本 / 海外」「日本人 / 外国人」という枠を超えた,世界で生きる人を対象としている。そのような世界市民の育成のためには,日本語教育は人の生を日本と海外で分断することなく,一つの連続した生としてみなし,それぞれの生の意味を見出す支援をしていくことになる。このためには,日本と海外の日本語教育,外国語教育,国語教育,教科教育の関係者が連携を取り,社会を形成する人の複言語教育とその体制を開発しなければならない。

研究ノート
  • 山元 一晃, 稲田 朋晃, 品川 なぎさ
    原稿種別: 研究ノート
    2020 年 175 巻 p. 80-87
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2022/04/26
    ジャーナル フリー

     日本語教育で扱うべき語を選定することを目的として,医学用語と一般語のはざまにあたる語彙を医師国家試験を対象として分析した。まず,『現代書き言葉均衡コーパス』と対照し,対数尤度比に基づく特徴度により,特徴的な語を抽出した。その後,『日本医学会医学用語辞典Web版』に,見出し語またはその一部として含まれている語以外の語 (ただし,『日本語教育語彙表 Ver. 1.0』に含まれている語を除く) を,医学用語と一般語のはざまの語彙とした。はざまの語彙は,異なりで全体の12.5% (272語) あり一定数あることが確認された。これらの語のうち頻度が5以上ある語について用例にあたった。その結果,「体の部位や位置を表す語」,「患者の状態を表す語」「医療・福祉分野以外では使わないような語」などに分類できた。また,このような語の中には医療分野以外では用いられず,かつ,推測の難しいと考えられる語があった。

一般論文
研究論文
  • 渡辺 誠治
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 175 巻 p. 88-99
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2022/04/26
    ジャーナル フリー

     非情物の存在を表す日本語の最も基本的な文の形式に「~ニ ~ガ アル」がある。しかし,現実の言語使用では「アル」の使用に制限が見られ,むしろ「V テイル」が用いられるケースが少なくない。日本語教育の観点から言えば,存在 (表現) は極めて重要な表現の一つであり,「アル」「V テイル」はともに基本的な学習項目であるが,その使い分けの条件は十分に明らかにされていない。

     本稿の目的は,非情物の存在を表す「(存在場所) ニ (存在物) ガ{アル/V テイル}」という形の文における「アル」と「V テイル」の使い分けの条件を明らかにすることである。本稿では用例の分析に基づき「移動過程」「意志性」「一体性」という3つの条件が「アル」と「V テイル」の使い分けに強く関与していることを主張する。

調査報告
  • ―中等日本語教育の理論構築に向けて―
    大舩 ちさと
    原稿種別: 調査報告
    2020 年 175 巻 p. 100-114
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2022/04/26
    ジャーナル フリー

     海外における日本語教育の最大の層は,中等教育段階における日本語教育 (以下,海外の中等日本語教育) であるが,日本国内では研究の蓄積の乏しい領域である。本稿では学会誌及び国際交流基金発行の学術雑誌3誌に掲載された海外の中等日本語教育に関する論考 (報告を含む) 155本を対象とし,研究動向を分析した。その結果,先行する政策を実現するために実践が試行錯誤される政策誘導型の特徴が見られ,制度構築を主眼に置いた研究が多く,実践の行われる国・地域の範囲内で考察が詳細に行われるという特徴が浮かび上がった。一方,海外の中等日本語教育の独自性を追求し,国・地域や政策の枠組みを超えて多様な実践を理論的・包括的に捉える研究は極めて少なく,1970年代から理論構築の必要性は論じられてきたが,実際には進んでいないことが明らかになった。海外の中等日本語教育のよりよい実践を生み出していくために理論構築が必要なことを示した。

実践報告
  • ―周辺環境の学習リソース化をめざして―
    山路 奈保子, 因 京子, アプドゥハン 恭子
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 175 巻 p. 115-129
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2022/04/26
    ジャーナル フリー

     日本語未習で来日し,授業への安定的出席が困難な大学院留学生・外国人研究員に対する効率的な日本語教育方法の開発を目標に,学習者が自らの周辺環境を学習リソース化していく技能の獲得を促進することで継続的な日本語学習につなげることをめざす短期日本語入門コースを実施した。研究室において日本語の話し言葉に日常的に接しているという環境を生かし,それらが断片的にでも理解できることを意識させる仕組みを教材および教室活動に取り入れ,周囲で話される日本語への観察力を高め,滞日期間全体に亘る継続的学習への動機とすることを試みた。授業およびコース終了後の評価アンケートでは,研究室における日本語コミュニティに加わりたいという明確な意志を持つ学習者は,学習した表現を使用してみた経験とともに,周囲で話される日本語を観察した結果をさかんに報告しており,こうした学習者にはコースの基本方針が強く支持されたことがわかった。

  • 土屋 理恵
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 175 巻 p. 130-145
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2022/04/26
    ジャーナル フリー

     本稿は,法務省告示校である日本語教育機関において聴解授業の改善を目的として実施した研修に関する報告である。研修は事前・事後課題を設定した対面研修の後,各教師に実践での研修内容の活用を奨励し,3か月後に授業見学を行うというものであった。その結果,授業見学時には全対象教師に授業設計で改善が見られ,研修内容が一定以上行動に転移したことが確認された。同時に,授業設計以外の面で機器操作,デリバリースキル,教室経営における課題が判明した。そこで,機器操作を含めた聴解授業実践のノウハウを教師全体で共有し,授業見学で互いに気づきを得る機会を追加した。最初の対面研修から9か月後の追跡調査では,全対象教師が聴解授業に研修内容を1つ以上活用していること,その一方で自身の聴解授業においてプラスの変化を感じているのは半数以下であることがわかった。授業の総合的な改善には継続した取り組みが求められる。

研究ノート
  • ―タスクと判定ツールの検証―
    ボイクマン 総子, 根本 愛子, 松下 達彦
    原稿種別: 研究ノート
    2020 年 175 巻 p. 146-154
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2022/04/26
    ジャーナル フリー

     プレースメント用のスピーキングテストは,大勢が短時間で受験でき,判定が簡便で,信頼性や妥当性の高いテストが理想である。そこで,筆者らはテストタスクと,ルーブリックと音声サンプルによる判定ツールの開発に着手した。テストの信頼性や妥当性を検証するため,開発した判定ツールを用いて初級から上級の受験者32名の「断り」のタスク結果を日本語教師4名に判定してもらう実験を行った。判定結果は,プレースメント時の読解などの受容能力より産出能力を示す作文と,リスニング要素を含むSPOTとの相関が高かったことから基準関連妥当性を一定程度満たしていると言える。判定者間の一貫性や相関も高く,受験者1名あたりの判定時間が1~2分であったことからも,本タスクと判定ツールは,簡便で一定の信頼性も確保できていると言える。ただし,中級の判定は初級や上級より難しいことがうかがわれた。

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