日本語教育
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一般論文
研究論文
  • ―プレースメントのための日本語スピーキングテストの検証―
    根本 愛子, ボイクマン 総子, 松下 達彦
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 177 巻 p. 1-16
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

     本研究では,ボイクマンほか (2020) で開発されたプレースメントテストのための日本語スピーキングテストSTAR (Speaking Test of Active Reaction) の検証のため,非日本語教師30名による状況対応タスクのレベル判定実験を行った。その判定結果の分析から,STARは中級レベルの弁別力が不足している可能性があるものの,プレースメントテストとしての有用性 (信頼性,構成概念妥当性,実用性) は高いといえることがわかった。また,判定時のコメントを分析したところ,日本語の自然さ・流暢さは上級の特徴となること,レベル判定の観点は内容・テキストの型・対人配慮では中級前期と中級中期,文法は中級中期と中級後期を境にそれぞれ異なることがわかった。さらに,中級前期は初級レベルと比較され肯定的なコメントが多い一方,中級中期は上級レベルと比較され否定的なコメントが多くなっていることも明らかになった。

  • ―評価に影響を与える観点と言語行動の分析―
    栁田 直美
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 177 巻 p. 17-30
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

     外国人住民の急増を背景に,非母語話者に情報をわかりやすく伝えるための言語的調整である「やさしい日本語」についてさまざまな提案が行われている。しかし,それらの調整は情報を受け取る側の非母語話者からどのように評価されているのだろうか。本稿では,母語話者の〈説明〉に対する非母語話者の評価結果を検証し,評価に影響を与える観点と言語行動について分析した。分析の結果,「積極的な参加態度」「落ち着いた態度」「相手に合わせた適切な説明」が評価に影響を与えることが明らかになった。さらに,非母語話者からの評価が高い母語話者と低い母語話者を比較したところ,会話への積極的なかかわりや相手の理解への配慮を示す言語行動,そして対等な関係性を前提としたふるまいが評価に影響を与えていることが示唆された。このことから〈説明〉場面においては母語話者の非母語話者の理解度に配慮した対応が高く評価されるといえよう。

  • ガルマーエヴァ オリガ
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 177 巻 p. 31-46
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー
     本研究では,日本語の動詞の過去形を取り上げ,その理解と産出に関して理解中心の処理指導と産出中心の指導がそれぞれどのような効果をもたらすのか検証した。過去形の丁寧体の語尾「~ました」を単純な形式,普通体の語尾「~た・~だ」を複雑な形式とし,両形式の処理指導および産出指導の効果を比較するために,ロシア語を母語とする初級日本語学習者を対象として11名に処理指導を,8名に産出指導を行った。理解と産出に関して事前・直後・2週間後にテストを実施し,その得点を分析した結果,丁寧体の語尾の理解と産出においては処理指導の効果が高かった。一方,普通体の語尾の産出においては産出指導の方がより効果的であった。つまり,処理指導は単純な形式の習得を促すことができるが,複雑な形式の場合は産出を促す指導が必要になると考えられる。
  • ―記述式テストで見られたモノリンガルとの違い―
    西川 朋美, 青木 由香
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 177 巻 p. 47-61
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

     本稿では,日本生まれ・育ちで日本語を第二言語とする (JSL) 小学4~6年生 (n=122),及び同学年の日本語モノリンガル (Mono)(n=427) を対象に,格助詞「が」「を」「に」「で」の産出をイラスト付の記述式テストを用いて調べた。テストは,各格助詞の複数の用法や語順交替アイテムなどが含まれ,計73アイテムである。分散分析の結果,合計点において,JSLとMonoの間に差が見られた。また,合計点が最下層に位置づけられる子どもの割合は,JSLはMonoの2~5倍であった。詳細に目を向けると,JSLとMonoの得点差が顕著に見られるのは,名詞がいずれも有情物の場合の主格「が」と対格「を」・与格「に」の語順交替のアイテム群であった。これらのアイテムは,JSL・Mono両方にとって難易度が上がるが,特にJSLのつまずきが大きいことが分かった。

調査報告
  • 松下 達彦, 陳 夢夏, 王 雪竹, 陳 林柯
    原稿種別: 調査報告
    2020 年 177 巻 p. 62-76
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

     本研究では日中対照漢字語データベースを開発した。日本語の語彙における,漢語 (字音語) の日中両語の意味対応パタンを文化庁 (1978),三浦 (1984) を参考に6種類に分類した結果,頻度上位2万語のうち,50%が漢語で,漢語の70% (全体の35%) が同形語で,30% (全体の15%) が非同形語であること,同形語7,074語のうち,82% (全体の29%,漢語の58%) が同形同義で,18% (同形語の6語~5語に1語) が同形類義や同形異義といった要注意の語であること等が明らかになった。本データベースは語の検索などで直接利用できるほか,J-LEX (菅長・松下,2014) のような語彙頻度プロファイラーへの搭載によって,文章の語彙的負荷の母語別表示機能や,対象者母語別のリーダビリティ計算,中国語母語学習者にとっての要注意点を表示する機能への応用が期待される。

実践報告
  • 庵 功雄
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 177 巻 p. 77-91
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

     本稿は上級レベルの留学生を対象とする近代文語文講読の授業の実践報告である。この授業では,福沢諭吉と中江兆民の文章を原文で読んでいる。対象者は上級レベルの留学生だが,受講者に文語文法の知識は要求しない。授業の目的は,近代日本の思想家の思想を原文で読めるようになることと,近代語と現代語の違いを知ることを通して日本語の理解を深めることである。前者については,福沢の文章では基本的人権 (福沢の「権利通義」) について,中江の文章では為政者 (政治家,官僚) に求められる資質について考え,それを現在の日本社会と比較している。後者については,対照言語学的視点から近代語と現代語を比較し,近代文語文は形態素レベルで1対1に対応させることで現代語に訳せることを確認し,それを通して受講者の現代語の知識を深めている。

研究ノート
  • 世良 時子
    原稿種別: 研究ノート
    2020 年 177 巻 p. 92-100
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

     本研究は,タ形の連体節に注目し,母語話者の持つ文レベルの文法的予測を明らかにしようとするものである。日本語母語話者64名を対象に,主名詞が連体節・後続する主節ともにガ格であるタ形の連体節を「連体節+主名詞+ハ/ガ」の形で提示し,その後続部分を完成させるという調査を行った。その結果,タ形の連体節から予測される後続部分には,述語の種類に共通性があり,連体節が状態性の場合,後続部分にはその「変化」を表す内容,連体節が動作性の場合,後続部分には「次の動作」を表す内容が予測されることが明らかになった。これらについて,BCCWJの用例で検討したところ,状態性述語について同様の傾向が見られた。

     連体節は,中級以降では扱いが少ないとされるが,本稿の調査結果から,連体節の形式や意味に注目し学習することは,学習者の文理解・産出能力の向上に資する可能性があると考える。

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